モバイル決済サービス「LINE Pay」が始動–手数料0円で個人間送金や割り勘可能に

LINEの決済サービス「LINE Pay」が12月16日、スタートした。キャリアやOSを問わず、iPhone、Android版のLINEアプリを通じて友だちへの個人間送金や割り勘ができるほか、提携サイトでの決済が可能。ECサイトの決済はまず、LINEの有料コンテンツが買える「LINE ウェブストア」に対応する。決済の手数料は月額100万円未満まで無料(100万円以上は3.45%)、トランザクションフィーも無料。「業界最安値」の手数料を打ち出し、近く外部のECサイト(加盟店)を開拓していく。

相手の口座情報不要で送金できる

利用するにはまず、LINE上でLINE Pay専用のアカウントを登録する。その後、銀行口座振替やコンビニ店頭、Pay-easy(ペイジー)経由で最大10万円まで事前チャージ(手数料無料)したり、クレジットカード登録することで、送金や決済が利用できる。銀行口座振替は、みずほ銀行と三井住友銀行のネット口座振替と連携。送金・決済やチャージ、口座振替の際には、子会社のLINE Payと各機関の間で処理が行う。

主な機能は「送金」と「決済」の2つだ。

送金はLINEでつながっていれば、相手の銀行口座を知らなくても、メッセージやスタンプを添えてお金を送金できる。LINE Pay上から、送金する相手を選択し、支払金額やメッセージを入力すれば、相手のLINE Pay口座に支払金額が入金される。

特定の相手に対してLINEのトークを通じて支払い要請をする「送金依頼」機能、合計の支払額とLINEの友達の中から参加メンバーを選ぶだけで、均等な金額を各メンバーに請求できる「割り勘」機能も搭載する。

送金、送金依頼、割り勘の各機能は、LINE Pay未登録の友だちにも送信できるが、7日以内に登録・送金処理が行われない場合、送金は発信者への返金、送金依頼と割り勘はメッセージが再送信される。送金手数料は無料となっている。

出金手数料は216円

LINE Payでチャージ・送金されたお金は、日本全国の金融機関の口座から引き出せる。LINE Payでは送金自体の手数料は無料だが、出金するには200円(税別)の手数料がかかる。出金機能は、運転免許証や健康保険証を撮影してアップロードして本人確認を済ませたユーザーだけが利用できる。

LINE執行役員の舛田淳氏によれば、LINE Payはソフトローンチという位置付け。まずは、気軽に個人間送金を実現するツールとして提示したと語る。

「グローバルではモバイル送金サービスが進んでいるが、日本で個人間送金というと現金書留か振込みくらい。現金書留は使い方がわからない人もいるし、現金振込みは煩雑な手続きが必要で手数料も発生する。LINE PayはLINEのトークを通じて、24時間いつでも使える個人間送金を提案したかった。友だちの割り勘もLINEらしい機能。」

国内最安値の手数料で「LINE経済圏」拡大か

決済は、提携するECサイトやWebサービス、アプリの支払いを、LINEアプリ上から行える機能。まずはLINE ウェブストアでの決済に対応し、近く公開を予定しているデリバリーサービス「LINE WOW」やタクシー配車サービス「LINE TAXI」といったLINE周辺サービスにも導入する。今後は、LINEのIDとパスワードで商品の支払いができる加盟店を開拓する。

加盟店は、購入者に対して個人情報やクレジットカード情報の登録を求める必要がなくなり、買い物途中の離脱防止や成約率の向上が見込めるのがメリットだ。「顧客の決済情報」をLINEに押さえられることになるが、セキュリティなどのシステム投資に予算をかけずに、LINEの国内5400万ユーザーを潜在顧客にできるのは魅力かもしれない。

加盟店開拓の武器となるのは、「業界最安値」の手数料。決済手数料は月額100万円未満であれば無料、100万円を超えた分は物販であれば3.45%、デジタルコンテンツであれば5.5%、トランザクションフィーは無料となっている。手数料は2年間無料とし、その後も国内主要決済サービスより割安の3.45%に設定する予定だ。

加盟店の獲得は「LINE経済圏」を拡大することにもつながりそうだが、舛田氏は否定する。「LINE経済圏というより、もっと緩いイメージ。決済システムを提供することで、加盟店はLINEの周辺で簡単にビジネスできるようになる」。とはいえ、外部のECサイトからの手数料収入が、LINEの大きな収益源の一つとなることは間違いなさそうだ。

LINE執行役員の舛田淳氏

ところでセキュリティは大丈夫?

LINEはIDが乗っ取られ、プリペイドカードの購入を促す詐欺が相次いでいたことから、10月のLINE Pay発表時にはセキュリティを懸念する声が多かったのは事実。「LINE乗っ取り詐欺の効率が向上するのでは」と不安視する向きもあるが、実際のところはどうなのか?

LINEの乗っ取りについて舛田氏は、「9月22日にPINコードの設定を義務化したことで、10月12日以降は警察庁やLINEへの被害報告はない」と説明する。LINE Pay自体のセキュリティ確保や不正利用防止については、以下の対策をしているという。

・LINEと異なる、7桁のLINE Pay専用パスワードを登録する
・PCサイトでの決済時に、LINEアカウントを登録している手元のスマートフォンと連携して認証する
・金銭が移動する機能の利用時や、別端末でのLINE Pay初回ログイン時に、登録した専用パスワードを入力する
・Apple Touch IDによる指紋認証でパスワード照会(iPhoneのみ)する
・送金依頼の回数や金額などの諸条件で、不正な動きをするアカウントをモニタリングする
・ユーザーの本人認証の有無で利用できる機能を制限する(下図参照)

上記にあるように、金銭が移動する機能の利用時や、別端末でのLINE Pay初回ログイン時には、登録済みの専用パスワード入力が必須となるため、万が一、LINEのアカウントが乗っ取られた場合でも、LINE Payのほとんどの機能は利用できないと、舛田氏は語る。「不正利用で考えられるケースとしては、スマホを盗まれて、LINEとLINE Payのパスワードも知っている場合くらい」。

圧倒的な勝者不在のID連携決済

自社IDを使って外部のECサイトで支払いができるサービスとしては、国内では楽天の「楽天ID決済」やヤフーの「Yahoo!ウォレット」、リクルートの「かんたん支払い」、PayPal、携帯キャリアなどがある。米国ではAmazonが「Login and Pay with Amazon」を提供しているが、日本ではまだサービスインしていない。国内では圧倒的な勝者が不在のID連携決済だが、LINEはOSや携帯キャリアを問わずに使える利便性、国内屈指のユーザー基盤、手数料の安さによって、一気に加盟店を獲得する可能性もありそうだ。

米国では9月、実店舗での支払いに使える「Apple Pay」がスタートして注目が集まっている。詳細は明かされなかったが、LINE Payでも同様に、将来的にはオンラインとオフラインの垣根を超えて利用できるようにしたいという。


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。