モバイル管理サービス運営のアイキューブドシステムズが4億円調達——財務強化でIPO目指す

法人向けにモバイルデバイス管理(MDM)サービスを提供するアイキューブドシステムズは6月29日、総額4億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。引受先はNCB九州活性化ファンドジャフコと、経営陣、個人投資家など。ジャフコは2014年にも3億円を出資した既存株主。同年6月のTNPパートナーズからの1億円調達以降、アイキューブドシステムズにとっては4年ぶりの億単位の調達となる。

アイキューブドシステムズが提供する主力プロダクトは、企業でスマートフォンやタブレット、ノートPCなどのモバイルデバイスを安全に、かつ効率よく活用するために必要な環境を実現するためのプラットフォーム「CLOMO」。デバイス管理のMDMに加え、モバイルアプリケーション管理(MAM)や情報漏えい対策、セキュリティ強化などの機能を備えた、いわゆるエンタープライズモビリティ管理(EMM)のためのサービスだ。

働き方改革の推進もあって、モバイルデバイスやクラウドの活用により場所を選ばずに働ける環境が整う一方、ビジネス用途のデバイスの盗難・紛失対策や、ウイルス・マルウェア対策、企業内ネットワーク接続時の認証などセキュリティへの対応が企業には求められている。またOSやハードも多種多様で大量のデバイスを、ITポリシーに基づいて効率的に管理・運用できなければ、モバイル活用によるビジネスメリットを運用負荷が上回ってしまう。

こうした背景から、MDMおよびEMMプロダクトの市場は拡大している。中でもCLOMOは日本国内では数年にわたってトップシェアを誇るプラットフォームだという。

アイキューブドシステムズ代表取締役の佐々木勉氏は、シェア拡大の理由についてこう述べる。

「外資系ベンダーが提供するEMM製品と違って、CLOMOでは必要な機能に合わせてそれぞれのサービスを利用できる価格体系を取っている。また我々は福岡を拠点にした開発メンバーが、サービスを独自に開発。他社の提供するOEM製品ではプラットフォームが単一でない場合も多いが、当社では一貫したプラットフォーム上で提供している。このため、スケーラビリティが高く、デバイスの運用規模に合わせて利用しやすいのではないか」(佐々木氏)

このスケーラビリティの高さは、同社にとっても、顧客が利用するデバイス数に応じて収益を得やすいというメリットがあるようだ。

「企業が求める品質に応えるために改良を続け、かつiOS、AndroidなどモバイルOSのメジャーバージョンアップ対応にも投資しているほか、災害などによる障害発生時のリカバリー時間が1時間程度と短いこと、稼働状況を常時確認できる『StatusDashboard』を公開するなど、サービス・品質向上に力を入れてきたことで、顧客の継続率は高い」と佐々木氏は話している。

資金調達については「4年前の調達では製品開発に投資したが、今回は財務基盤の強化が主な目的だ」と佐々木氏は説明する。今回同社では、第三者割当増資と同時に資本金を減資、利益余剰金の累損解消に充てた。IPOを視野に、財務の健全性を確保したいとの思惑からだという。

アイキューブドシステムズでは4月1日より、取締役CFOに元スカイマーク代表取締役社長、前エアアジア・ジャパン副社長を務めた有森正和氏を、社外取締役にジャフコ九州支社長の山形修功氏を迎えている。

佐々木氏は「財務戦略についてさまざまな経験を持つベテランがCFOとして合流したことに、非常に期待している」と発言。今後さらに経営体制を強化し、上場を目指す構えだ。

またプロダクトについても、MDMサービスの付帯機能強化のための開発に投資するということだ。

「CLOMOのMDM製品では、モバイルでも働く時間が制限できる『ワーク・スマート』機能を取り入れるなど、アプリでも働き方改革の実現を支援してきた」と佐々木氏は語る。

「働き方改革実現に向けて、今後ユーザーの行動データを集める仕組みも作ることで、CLOMOを理想の形へアップデートしていきたい」(佐々木氏)

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TechCrunch Japan

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