ユーザーのオンボーディングを改善する分析とノーコードが特徴のツール「Appcues」が約36.8億円を調達

アプリの世界では、ユーザーのオンボーディングは長い間ずっと続いている課題だ。開発者はデザインや技術上の制約に取り組む。配信元とユーザーとではサービスに関わる際の優先事項が異なるだろう。サービスのコンテンツは常に変化する。そしておそらくなんといっても、人は1人ひとり違うので、アプリのエクスペリエンスも1人ひとり違う。

ボストンに拠点を置くAppcuesは、オンボーディングの問題を特定し、それをすばやく解決するための非テクニカルなローコードのソリューションを提供するスタートアップだ。同社は米国時間1月18日、3210万ドル(約36億8200万円)のシリーズBラウンドを発表した。この資金調達は、オンボーディングの問題を解決するツールが市場で求められていることに加え、Appcuesにそのトラクションがあることの表れだ。

Appcuesの共同創業者でCEOのJackson Noel(ジャクソン・ノエル)氏は発表の中で「プロダクトのエクスペリエンスはこれまで以上に重要になっています。しかしプロダクトで何かをするのに何週間もかかることもいまだにあります」と述べた。Appcuesは、同社のツールでインサイトと利用者のオンボーディングの修正を数時間で顧客に提供できるとしている。

シリーズBを主導したのはNewSpringで、新たに投資するColumbia Partnersと、これまでに投資していたSierra VenturesおよびAccompliceも参加した。Appcuesは今回の資金でプロダクト開発を進め、海外に進出する計画だ。同社はこれまでに4800万ドル(約55億560万円)近くを調達した。判明している限りでは、同社の評価額は2億〜3億ドル(約229億4000万〜344億1000万円)あたりだ。

堅調に成長している中での今回の資金調達となった。Appcuesによれば、Freshworks、FullStory、Lyft、Zapier、Kaplan、Hopin、Pluralsight、Vidyardなどおよそ1500社の顧客を獲得しているという。同社のクラウドベースのプラットフォームはこれまでに2億人以上のユーザーに対して約20億回のエクスペリエンスを提供した。

Appcuesは2014年にマーケッターが開発者の手を借りることなくサイト上で利用しやすいプロンプトを作成できるSaaSのツールセットから事業を始め、その時点でユーザーのオンボーディングのフローに力を入れていた。現在の同社のプロダクトは、わかりやすく機能を使えるようにし、フィードバックのアンケートに誘導し、訪問者に発表を読んでもらうフローもカバーしているが、設計の前提は変わらない。技術系でない人がデジタルインターフェースの動作を向上させるダイアログを作れるようにするということだ。

そのプロセスはSDKから始まる。SDKはアプリのコードベースにインストールすることも、セグメントで統合することもできる。このSDKがサイト上のイベントをトラックし、動作のベースとなる。

ノエル氏はインタビューで、SDKがAppcuesの動作のポイントだと述べた。同氏は「外部アプリではなくネイティブの拡張機能のように感じられます。我々のゴールはこの領域にさらに力を入れてユーザーが最高のプロダクトエクスペリエンスを作れるようにすることです」と説明した。そして、アプリのフローや社員トレーニングなどに主眼を置いた同様のジャンルにおける他プロダクトとの違いはこの点であるとも述べた。

Appcuesの利用者としてはUX担当者、プロダクトマネージャー、インタラクティブマーケティング担当者、そしてもちろん開発者が考えられる。利用者はChromeの拡張機能からデータにアクセスしてアプリやサイトが意図した通りに動作している部分、していない部分を確認し、それに応じてイベントやフローを新しく作成する。ユーザーがどこからアプリに入ってきたか、すでにどのように使っているかに応じてセグメントを分け、それぞれに別のフローやイベントを作成できる。そして新しいフローが効果的に動作しているかどうかを追跡して調整したり、必要があれば新しいフローを追加したりする。

現在は以前に比べて間違いなくユーザーエクスペリエンスが重視されている。動作が良くないものはユーザーに短時間で見切られてしまう(デジタルサービスなら選択肢はいくらでもある)。企業はどんどん複雑さを増してデジタルの入れ物に何もかも詰め込み、しかもその入れ物が顧客にエンゲージする唯一のプラットフォームだったりする。ここでうまくいかなければ、これまでには存在しなかったような経緯で企業を左右しかねない。

だからこうした問題を解決するテクノロジーを構築しようとする企業がたくさんあるのも当然であり、それは大きなビジネスになり得る。この分野には株式公開を果たしたWalkMe、こちらもIPOの準備中であるPendo、組織内ユーザーのオンボーディングに重点を置くWhatfixなど、多くの企業がある。

Appcuesのツールセットについて特筆すべき点は技術系でないユーザーを対象としていることだが、分析にも力を入れている。両者は、誰にとってどんな問題があるかを把握するのにも、修正の試みがうまくいっているかどうかを判断するのにも役に立つ。

ユーザーのオンボーディングを調整するための高度な、あるいはたくさんのツールがあるとしても、最初の段階でのシンプルなニーズはなくならず、むしろ重要性を増す一方だ。

NewSpringの共同創業者でゼネラルパートナーのMarc Lederman(マーク・レダーマン)氏は発表の中で次のように述べた。「この5年間、我々はソフトウェア企業のプロダクトエクスペリエンスがビジネスの成功における最も大きな力になるという変化を目撃してきました。我々はAppcuesが顧客に与える影響に大きな期待を寄せ、Appcuesのこれからの成長段階でジャクソンとチームを支援できることを楽しみにしています」。

画像クレジット:Appcues

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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