ユーザーのホログラムを世界中にテレポート、新たなつながり方で働き方や遊び方を変えるPORTLが13.7億円調達

Zoom(ズーム)がすばらしいことは認めよう。しかしコンピューターの画面に並んだたくさんの二次元の人と話すことは、我々が夢見ていた未来ではない。これに同意するのが「If you can’t be there, beam there(そこにいないならテレポートしよう)」というキャッチーなスローガンとともに、ユーザーのホログラムを世界中にテレポートするという新しい市場を切り開くPORTL(ポータル)だ。同社は先日、True Capital Management(トゥルーキャピタルマネジメント)が主導した資金調達ラウンドで、高さ67m分の20ドル紙幣の束を、投資家たちの銀行口座から自社の銀行口座にテレポートしたと発表した。そう、1200万ドル(約13億7000万円)分の20ドル紙幣で、高さ67m。もっとも、ラウンドの参加者はトランク一杯の現金を持ってくるのではなく、ワイヤー送金したはずだが。

PORTLの操業者でCEO、そして発明家であるDavid Nussbaum(デビッド・ヌスバウム)氏は次のように話す。「CEO、ブランド、大学、そしてNFTアートクリエイターたちが、PORTLを使ってまったく新しい方法でつながり、コミュニケーションをとっています。これからはPORTLが、私たちの働き方、学び方、遊び方を変えていきます」「ビジョンを共有できる投資家がいることは非常に幸運です」。

PORTLは現在、約40名のチームで構成され、そのうち半数はエンジニアリングのスタッフである。同社はこれまでに約100台のフルサイズのPORTL(Epic)を販売し、一部は非常設の設置やキャンペーンのために貸し出している。近々デスクトップ向けに設計されたより小型のPORTL Miniもリリースされる。PORTLは、等身大の人と同じ体積を持つ4Kのホログラムプロジェクションとして、すでに20カ国以上で、さまざまなユースケースで利用されている。

ヌスバウム氏は次のように説明する。「教育現場のユースケースとしては、セントラルフロリダ大学に設置されたPORTLでは、医療従事者の卵たちが遠隔で患者の治療法・診断法の訓練を受けています。スポーツスタジアムでは、PORTLを通じてスポーツ選手がファンに語りかけています。さらに、多くの企業にコミュニケーションツールとして利用してもらっています」「世界最大規模の小売業者の数社が、パイロットプログラムでPORTLを購入しました。お店に入って、PORTLに近づいていく自分を想像してみてください。お店にマネキンはありませんが、自分の体と同じサイズや形のバーチャルマネキンが表示されたPORTLで、店内のあらゆる服を試着することができます。PORTLはバーチャルアシスタントや企業のコミュニケーションなど、さまざまな場面で活用されています。エンターテインメント分野ではレンタルが上手くいきました。Netflix(ネットフリックス)やHBO(エイチビーオー)などがPORTLを採用し、展示会のブースにPORTLを設置して集客に利用しています」。

PORTL Epicに表示されるラッパーのクエヴォとアメリカンフットボール選手のマーショーン・リンチ。手前はPORTLの創業者でCEOのデビッド・ヌスバウム氏(画像クレジット:PORTL)

シードラウンドから1年、PORTLは多くの称賛を集め、収益を上げることに成功した。Mobile World Congress 2021 Barcelona(MWCバルセロナ2021)ではReuters(ロイター)がNo.1イノベーションとしてPORTLを選出。最近では、CES 2022イノベーションアワードの3つの賞にノミネートされた。今回新たに調達した1200万ドルで、同社はより積極的な成長を推し進めようとしている。

「Tim Draper(ティム・ドレイパー)をシードラウンドに迎え入れたことは、非常に大きな収穫でした。彼は  『物事を正しく進める』という意味では伝説的な存在です。彼の勝率は非常に高く、彼が「次は君たちの番だ」と言ってくれたことで、私たちは多くのことを実現できました。ドレイパー氏がいることで他のメンバーを簡単に獲得することもできたのです。彼は達人です」とヌスバウム氏。「シリーズAラウンドにドレイパー氏が戻ってきてくれたことで、ラウンドが活気づきました。前回のラウンドで最後の参加者だったTrue CapitalがシリーズAに再度参加し、ラウンドを主導してくれました」。

今回調達した資金で次の成長に向けてスタートを切ったPORTLだが、ヌスバウム氏は今後の展開について壮大な計画を持っている。筆者が10年後の世界について質問したところ、すべてが計画通りに進んだ場合、として話をしてくれた。

ヌスバウム氏は彼のビジョンを次のように語る。「すべての家庭にPORTL Miniがあり、すべての会議室に大型のPORTL Epicが置かれます。私はPORTLは単なるコミュニケーションプラットフォームではなく、ブロードキャストチャネルだと信じています。10年後には、ブロードキャストやコミュニケーション、さらには旅行手段までもが変わる未来が来るはずです。すべての駅、空港、小売店、喫茶店のテーブル、医療センター、学校、会議室などにPORTLが1台ずつ設置されることになると思います」「私たちはハードウェアを設計していますが、本来は受信の手段としてハードウェアを使用するソフトウェアとテクノロジーを扱う企業です。今回のシリーズAラウンドと今後のラウンドで獲得する資金をテクノロジーに投入すれば、可能性の限界を押し広げることができます。スタートレックでおなじみのテクノロジーは私たちが考えているよりもずっと早く実現するはずです」。

PORTLのCEOデビッド・ヌスバウム氏と投資家のティム・ドレイパー氏(画像クレジット:PORTL)

資金調達をしている他の多くの企業と同様に、同社はエンジニアリングと営業・運営の両面で採用活動を行っている。

True Capital Managementの共同創業者兼CEOであるDoug Raetz(ダグ・レッツ )氏は次のように話す。「1年ほど前、ビジネスパートナーに「今すぐLAに飛んでPORTLのテクノロジーを見てこい」と言われました。私はそこで未来に遭遇しました。その後はPORTLのデモのたびに新しい人を連れてLAに通っています。最初はDante Exum(ダンテ・エクザム、オーストラリアのプロバスケットボール選手)、次はRGIII(ロバート・グリフィン3世、アメリカンフットボール選手)。その後、QuavoにPORTLを紹介したところ、翌日には彼から電話があり「次のアルバムは、いくつかの都市で同時にライブを行ってリリースしたい」と言われました。それを実現したのがPORTLです。私たちのコミュニケーションとコンテンツの楽しみ方は今後必ず変化すると確信しました」「私たちのクライアントはテクノロジー、特に自分自身が信じ、個人的に利用したいと考えるテクノロジーの大ファンです。私は彼らがPORTLを見て興奮するだろうと思っていましたが、実際に全員が大喜びしました。私はPORTLを支えるすばらしいチームと、ビジネス拡大に向けた彼らのビジョンを知り、全面的にバックアップすることを決断したのです」。

画像クレジット:PORTL

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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