ラズベリーパイ財団が約49.3億円調達、低価格PCとIoTの需要に応える

結果的に、新型コロナウイルス感染症による都市封鎖は、ハードウェアハッキングの室内ホビーにとってありがたい状況となっている。低価格マイクロプロセッサーであるRaspberry Pi(ラズベリーパイ)の母体である英国拠点の財団は、4500万ドル(約49億3000万円)の調達ラウンドを完了したことを現地時間9月20日に発表した。

(非営利の)ラズベリーパイ財団の取引部門に対するこの資金注入は、評価額5億ドル(約547億6000万円、調達前)で実施されたことを共同創設者のEben Upton(エベン・アプトン)氏が確認した。

調達ラウンドは、ロンドン拠点のLansdowne Partners(ランズダウン・パートナーズ)と米国拠点の民間慈善団体The Ezrah Charitable Trust(エズラー・チャリタブル・トラスト)がリードした。

「Lansdowne PartnersとThe Ezrah Charitable Trustを初の外部株主として迎え、当財団の次の段階の成長を支援していただけいることを喜んでいます」とアプトン氏は声明で語った。「仕事やエンターテインメントのために私たちのPCを使ってインターネットをアクセスする消費者の需要が高まっていることに加え、Raspberry Piを革新的IoTに応用する世界中の産業企業からの需要はいっそう早く成長しています。この資金調達によって、将来の需要に答えるための規模拡大が可能になります」。

「新たに迎えた出資者は、財団の戦略に価値を加えて成長を推進するだけでなく、私たちのビジネスモデルの原理と精神を理解しています。誰もがハードウェアとソフトウェアのツールを利用できるようにして、消費者向けPC体験をわずか35ドル(約3830円)から提供し、世界中のさまざまなOEMと提携することが財団の目標です」。

調達した資金は、すでに充実しているPiマイクロプロセッサーの製品ラインをさらに拡大するために使う、とPi財団はいう。

マーケティングでの資金利用も計画されており、消費者(「自分で作る」PC)と産業(IoT)両分野が対象だ。

現在財団の取引部門は年間700万台以上のデバイスを出荷している。

これまでに100カ国以上に4200万台以上の(Piベースの)PCを出荷したと財団は語った。

「都市封鎖の中でRaspberry Piに対する関心が明らかに高まっています」とアプトン氏はTechCrunchに語る。「自宅で勉強するためのマシンを必要としている若者たちに機材を提供できることをうれしく思っています。また私たちは、すばらしい慈善的支援(特にBloomfield Trustによる)を受け、英国の恵まれない若者たちにキットを配布しています」。

「現在の持続する需要の増加は、主としてコロナ禍からの景気回復による企業顧客によるものです」。

「短期的には、需要に応じるための生産とサプライチェーンへの投資が中心です」と資金利用の計画を詳しく語った。「長期的には、この資金によってプロダクト開発への投資を拡大することができます。プロダクトが高度になるにつれ、開発には費用も時間もかかるようになるので、エンジニアを増員することが今後の成長の鍵です」。

Lansdowne ParternsのPeter Davies(ピーター・デイビーズ)氏が次のように付け加えた。「長年見守り評価してきたRaspberry Pi財団に投資できることを大変喜んでいます。同財団が最初の10年間に成し遂げた商業的、人間的影響は卓越しており、新たな資金を得た財団のさらなる成長を支援をすることを楽しみにしています」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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