リーガルテックのHolmesとクラウドサインが提携、シームレスな契約締結が可能になる

契約マネジメントサービス「ホームズクラウド」を提供するHolmesと電子契約サービス「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコムは、2月3日に業務提携を発表。ホームズクラウドの電子契約機能としてクラウドサインをデフォルトで搭載し、2020年秋ごろから提供することを明らかにした。

写真左からHolmes代表取締役CEO 笹原健太氏、弁護士ドットコム取締役 クラウドサイン事業部長 橘大地氏

Holmesが提供するホームズクラウドは、契約書の作成・承認・締結・管理まで一連の業務を支援するSaaSだ。単体の契約プロセス管理のほか、プロジェクト単位で複数の契約を管理できる「プロジェクトクラウド」、法務部門・事業部門間など企業全体で契約業務に関するノウハウを共有できる「ナレッジクラウド」も展開している。

もう一方のクラウドサインは、電子契約の分野ではパイオニア的な存在で、2015年10月のリリース以来の導入社数は6万社を超える。電子署名・タイムスタンプによる電子契約の署名・締結機能に強みを持ちつつ、書類作成・送信や契約書の保管・検索、テンプレート作成・管理、チーム管理といった、電子契約業務に関わる一連のサービスをクラウドで提供。上位プランではアカウント管理や承認などの機能も搭載されている。

今回の提携により、ホームズクラウドで契約書を作成し、承認、締結まで工程が進むと、クラウドサインの電子契約機能がシームレスに使えるようになる。クラウドサインのAPIをホームズクラウドから呼び出すことで、ホームズクラウドから遷移することなく、契約締結を完了させることが可能になる。

既にホームズクラウドを利用しているユーザーは、これまでと同じ料金でクラウドサインの電子契約機能を利用できる。クラウドサインの実装後にホームズクラウドを使い始める場合は、ホームズクラウドの既存の電子契約機能の利用料金に代えて、契約送信費用として1件あたり200円がかかる。

UX向上で顧客の契約体験をより良くしたい

契約書の電子化という領域では一見、競合部分もありそうな両社。提携について、Holmes代表取締役CEOの笹原健太氏は「契約という行為は幅広く、その中でもサイニング(署名・押印)の領域で、クラウドサインは磨き込まれていて鋭い刀のようなプロダクト。電子契約書や電子契約におけるユーザーの便益やユーザー体験を考えたときに、サイニングについての体験、世界観については、磨き上げた刀を使っていただく方が、ユーザーのためにシンプルに良いと思った」と述べ、「こちらからクラウドサインへ(提携の)声をかけた」と明かす。

「既存の自社サービスの中にも電子契約締結の仕組みはあるが、セキュリティ強化やさらなるUIの磨き込みなど、ユーザーニーズに合わせてアップデートし続けなければならない。今後、電子契約・電子署名の部分の磨き込みについてはクラウドサインの力を借りることで、ほかの部分のユーザー体験向上に集中し、開発リソースを有効に使おうと考えている」(笹原氏)

弁護士ドットコム取締役でクラウドサイン事業部長の橘大地氏も「クラウドサインだけでも4年間、エンジニアがガリガリと開発・アップデートを続けているが、まだまだやるべきことが山ほどある」と述べている。

「電子契約という意味では一部競合する部分があるが、今回、クラウドサインに契約締結の部分を委ねていただくことで、契約全体のプロセスをデジタル化して、顧客の契約体験をもっと良くしていきたい。うまく棲み分けができ、ありがたい提携だと思っている」(橘氏)

「Holmesは契約マネジメント全体の工程に取り組んでいて、以前からすごいと思っていた」という橘氏は「契約の工程のうち、後半部分に当たる契約締結の部分についてはクラウドサインが磨き込んでいくことで、より利便性のある顧客体験をしていただけるのではないかという点で(Holmesと)考えが合致。一緒に伸ばしていきましょうということになった」とも話している。

クラウドサインでは、締結済みの契約書がクラウド上に蓄積していくことから「既存の紙の契約書を取り込むことも含め、締結の事後に契約したものをどのように管理し、検索するかといった、契約管理の部分については昨年あたりから重要視し、磨き込み続けている」と橘氏。「締結前の一連のプロセスについてはHolmes、事後的な管理はクラウドサインといったように、さまざまな使い方をユーザーが選択していくようになるのだと思う」と述べる。

笹原氏も「契約の世界は広く、業務も多種多様。さらに契約書の作成・承認・締結・管理といった契約行為の前業務として営業や交渉があり、契約行為の後にも、代金の請求やサービスの納品、登記などの手続きのほか、さまざまな庶務・雑務なども生まれる」として、「契約行為を中心にした前後の業務は、会社ごとに多様なフローやオペレーションがあって、1プロダクトで全て賄えるようなものではない」という。

「1企業の中だけでも、人事系やお金を払う方のフロー、お金をもらう方のフローなどさまざまなフローに対して、1プロダクトで解決するというよりは、さまざまなプロダクトを組み合わせて解決していくものだ。契約に関するサービスは、競合や分野重複と見られがちだが、案外、企業・部署・プロジェクトごとにニーズがあるので、競合というイメージは自分にはあまりない。実現したい課題に合うようなプロダクトが、それぞれの契約で選ばれていくことが多いのではないか」(笹原氏)

今回の提携はエクスクルーシブなものではなく、契約上は他社との提携もあり得るのだが、「この領域ではHolmesとクラウドサインで一緒に伸ばしていこう、というのが基本方針」と橘氏。あえて独占契約にはしていないが、実質一番よい組み合わせだと両者とも考えているということだった。

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TechCrunch Japan

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