レンタルビジネスのOmniがCoinbaseとエンジニアリングチームの売却交渉中

ストレージビジネスからレンタルビジネスに転じたスタートアップのOmni(オムニ)が米国時間10月4日に一時解雇を実施していると、状況に詳しい2つの情報筋がTechCrunchに語った。Omniは、オペレーションチームのメンバー7人をすでに解雇した。同社はエンジニアリングチームをCoinbase(コインベース)に売却する交渉を行っている。以前、Thumbtack(サンタック)も関心を示した。

Omniのレンタルビジネスはユーザーを十分集められずお粗末な状況だった。ユーザーは数ドルでテント、自転車、電動ドリルなどをレンタルする。Omniが立ち上げたのは、実店舗を構える小売店がOmniの看板でレンタル事業を始められるプラットフォームだった。

昨年初めに仮想通貨会社Rippleから2500万ドル(約27億円)を調達し、手元現金は潤沢だった。だが以前のビジネスに続いて新しいプラットフォームも低迷し、会社の将来の見込みが悪化することを恐れていた。

同社はエンジニアリングスタッフの何人かをCoinbaseに雇用してもらうよう交渉中だ。Coinbaseは彼らをCoinbase Earnに迎えるとみられる。Coinbase Earnでは、ユーザーがオンライン教育プログラムを完了すると仮想通貨が付与される。今日、Omniの従業員数名がCoinbaseで面接に臨んでいる。Coinbaseの広報担当者は、現在公式に発表するような案件はないとTechCrunchに話した後で、報道が前提なら何も明かせないと加えた。OmniはTechCrunchに声明を出すことを約束したが、口頭で話せることはないと断った。

Omniはオンデマンドストレージビジネスからスタートした。スタッフがユーザーの自宅に荷物を取りに来て、倉庫に持ち帰った荷物にタグを付けて保管する。持ち主はいつでも荷物を自宅に持ち帰ることができる。サンフランシスコで人気を博し、ほかの都市にも展開し始めた。4月には、ユーザーが倉庫に預けた荷物をOmniの別のユーザーに貸し出してお金を稼げる仕組みも導入した。

5月にOmniはストレージビジネスをSoftBankが資金提供するライバルのClutterに売却した。移行手続きは簡単にはいかなかった。ユーザーの中には価格の変更や荷物の配置間違いについて不満を述べたり、突然別のスタートアップが自分の物を管理し始めて驚いた者もいた。

筆者は以前、Omniのストレージサービスを使って満足していたが、Clutterへの移行が失敗して、預け荷物の取り扱い体制への信頼が揺らいだ。筆者が預けていた物が数点どこかへ行ってしまったのだ。経営上層部が乗り出してきて解決はした。

今後はOmni自身で物を保管するのではなく、地域の小売店の店頭でレンタルの貸し出しと返却を行う。ただAmazonで非常に簡単に買い物できるなら、わざわざレンタルしないユーザーも多いだろう。

ある情報筋によると、Omniは内部で協議し、2週間以内にレンタルパートナーにレンタルサービスの停止を通達すると決めたようだが、TechCrunchは確認できなかった。別の情報筋によると、Omniは従業員が今日報道機関と話をするのを必死で止めようとしているという。

物を保管するクラウドストレージの構築や所有権の垣根を超えた物の使用(ユーザー間の物の貸借)に関するOmniのビジョンに魅力を感じ、Flybridge、Highland、Allen & Company、Founders Fund、Precursor、そしてさまざまなエンジェル投資家たちが出資した。しかし、ユーザーの行動を変え複雑な物の動きを管理する取り組みは、むらがある実行力も災いしてうまく進まず、今はソフトランディングを模索中だ。

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(翻訳:Mizoguchi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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