レーザーを使用する3D顕微鏡で小さなウィルスの体内航跡を観察する

もしもあなたがぼくみたいな人間なら、ウィルスが自分の体内を航行するときの経路が気になって気になって、まる一日がつぶれてしまうことがあるだろう。そんなぼくたちにとって幸運にも、デューク大学の研究者たちが開発した新しい顕微鏡は、おちびさんたちがたどる道を、ミクロン単位で見せてくれる。

Kevin Welsher助教授の研究チームが設計したシステムは、従来の顕微鏡の形をしていない。光学的に像を拡大するのではなく、少量の対象物をさまざまな角度からレーザーで何度も走査し、特殊な蛍光粒子を光らせる。そしてそれらの位置の変化を追う。

粒子の一つを何かにくっつけ、その後どうなるかを見る。いわばそれは、微生物学のためのモーションキャプチャー・スタジオだ。でもこれまで、そういう蛍光粒子は、ウィルスにくっつけるには大きすぎた。人間なら、体中(からだじゅう)にたくさんのバスケットボールをテープで貼り付けられて、ゴラムの物真似をやれ、と言われているようなものだ。Welsherのチームは最近、システムをより強力にして、もっと小さなドットを検出できるようにした。そして蛍光タンパク質分子をウィルスの体内で作れるようになった。その結果、上図に見るように、小さな動きを詳細に追えるようになった。

単純?だよね?

昔の漫画、Family Circusを思い出す。Billyかだれかが近所中を上図のウィルスのように動きまわり、犬を可愛がり、ご近所の家のポーチにある泥を調べたりする。ただしそのBillyは、ここではレンチウイルスで、そのご近所は細胞膜の外の液状質だ。

もちろんそれは、見て楽しむためのものではない。目標は、ウィルスが細胞に接触して侵入し感染するまでの過程を、観察することだ。ウィルスの行動を理解するためにとても重要なその瞬間は、直(じか)に見ることがほとんど不可能なので、よく理解されていない。

“われわれが調べる努力をしているのは、ウィルスが細胞の表面に初めて接触したときに起きることだ。それはどうやってレセプターを呼び出すのか、どうやって自分の包膜を脱ぐのか”、Welsherはデューク大学のニューズリリースでそう述べている。“その過程をリアルタイムで見たいし、そのためにはウィルスを最初の瞬間からロックオンできなければならない”。

そんなシステムができたら、私たちは、これまで作られたものの中でもっとも高度な生物学的マシンの理解に一歩近づくだろう。チームの研究は、Optical Societyの今週のジャーナルに発表される。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

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TechCrunch Japan

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