ロケットを3Dプリントで製造するRelativity Spaceの巨大な新自律型工場

ロケットの製造は、Relativity Space (レラティビティー・スペース)のように一から3Dプリントするにしても、大仕事だ。このロケット打ち上げスタートアップは、ロケットの組み立てには手狭になった最初のオフィスから卒業して、カリフォルニア州ロングビーチの広大なスペースに移転する。同社はそこで、プロトタイピングから最初の打ち上げまでを行う予定だ。

私たちが先日Relativityを訪れたときは、まだ以前の本社ビルだった。大きなものを製造する工場のイメージに違わず、雑然とした感じだった(金属の破片がそこらじゅうに転がっている)。しかし駐車場の他に、それを組み立てられそうな広い場所は見あたらない。それとはつまりロケットだ。

なので、共同創設者でCEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏から、ロングビーチのがらんとした倉庫のような巨大な建物への移転準備を始めたところだと聞かされたときも、驚きはしなかった。

Relativity RocketのCEO、Tim Ellis(ティム・エリス)氏。新本社ビルに喜びを隠せない様子。

「大きな一歩です」とエリス氏はTechCrunchに話した。「実際、完全に3Dプリンターで製造する世界初の工場です。新しい工場は、第1段と第2段、そしてフェアリングを同時にプリントできるだけの十分なスペースがあります。天井までの高さは12メートル。今の工場の2倍の高さがあります。2020年の後半に予定しているテストのために、ジョン・C・ステニス宇宙センターへパーツを送る準備を始めました」

高さ約4.5メートルのものまでプリントできるStargate(スターゲート)プリンター3台に加えて、高さ6メートルのものまで作れるプリンターが3台と、高さ9メートルまで可能なもの2台を揃える予定だ。Relativityがすでに製造したものを見ない限りは、一度のプリントで作られる高さ9メートルのロケット部品なんて想像がつきにくい。

ロケット建造に広いスペースが必要になったということだけが移転の理由だけでない。会社自身も成長している。

「2年前から現在までの間に、私たちの会社の広さは20倍以上に拡大しています」とエリス氏は教えてくれた。つまり、ロサンゼルス空港近くの古い社屋では過密状態になってきたということだ。

実際の新工場の今の状態。トップの写真は可動したときの想像図。

ローンチ・ビークルTerran 1(テラン・ワン)とそれに搭載するAeon(イオン)エンジンの組み立て、そして研究開発は新本社で行われる。1万平米ほどの広さがあり、非常にハイテクな製造工場になる。製造機械は一切固定されないため即座にレイアウト変更ができ、さらに高度に自動化される。同社の3Dプリンターは、大まかなプロトタイピングによく使われる単純なものとは異なり、慎重な監視のもとで巨大なロボットアームが、積層される金属の分析をリアルタイムで行うというものだ。

「ロケット製造に留まらない、本当の世界初の自律型工場です」とエリス氏。「最初の打ち上げロケットを製造してこの工場の実用性が証明できたなら、この設備を火星に運んで、現地で必要となるものを幅広く製造するという長期目標に向かう確信が持てます。今はその長期的なビジョンへの道を歩んでいるわけですが、それは、私たちが航空宇宙業界のこの新たなバリューチェーンの先駆者となる道でもあります」

「おもしろいことになりますよ」と彼は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

投稿者:

TechCrunch Japan

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