ロケットエンジン分野における「インテル」的企業を目指すUrsa Major

ロケット打ち上げの分野には、ますます多くの参入が続いている。大手企業の多くは自社でロケットエンジンを製造しているが、宇宙関連スタートアップ企業のUrsa Major(ウルサ・メジャー)は、多くの新規打ち上げ事業者が自社でエンジンを製造するよりも外注したいと考えていることに賭けている。

SpaceX(スペースX)やBlue Origin(ブルー・オリジン)で推進機関エンジニアを務めてきたJoe Laurienti(ジョー・ラウリエンティ)氏が設立してから6年が経過したUrsa Majorは、事業規模を拡大する準備が整っている。そのために過去最大の資金調達をクローズしたばかりだ。8500万ドル(約96億5000万円)を集めたこのシリーズCラウンドは、主導したBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドやアカウントに加え、XN、Alsop Louie(アルソップ・ルーイ)、Alpha Edison(アルファ・エジソン)、Dolby Family Ventures(ドルビー・ファミリー・ベンチャーズ)、KCK、Space Capital(スペース・キャピタル)、Explorer 1(エクスプローラー・ワン)、Harpoon Ventures(ハープーン・ベンチャーズ)などが参加した。

「私たちが市場に投入しようとしているものの多くは、その次のステップです」とラウリエンティ氏は説明する。「私たちは、この産業をより速いライフサイクルへと進化させたいと考えています」。

そのためにUrsa Majorは、迅速にエンジンを製造したいと考えており、2022年には週に1基、さらにその後は週に2基のペースでエンジンを製造することを目指している(現在は1人の従業員が1基のエンジンを組み立てるのに約5日、顧客への出荷準備には最大で数週間を要する)。同社はPhantom Space(ファントム・スペース)やStratolaunch(ストラトローンチ)など、いくつか民間企業の顧客を獲得し、政府と研究開発契約を結んでいるが、まだそのエンジンは宇宙に出ていない。

「宇宙には非常に多くのアクセスビリティが必要になるため、打ち上げにはかなり複雑なエコシステムが必要になるだろうということは、6年前からわかってました」と、ラウリエンティ氏はいう。

打ち上げコストが下がっていく一方で、宇宙への打ち上げサービスに対する需要は、この10年の間に増える一方であることが予想される。Fortune Business Insights(フォーチュン・ビジネス・インサイト)では、打ち上げ事業の世界市場規模が、2019年の126億7000万ドル(約1兆4400億円)から、2027年には最大261億6000万ドル(約2兆9700億円)に拡大すると予測している。

しかし、ロケットエンジンは最も開発が困難な装置の1つだ。Blue OriginがUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のためにBE-4エンジンを開発した際の労苦や、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が従業員に宛てた「ラプター生産の危機」に関する手紙を見るだけでも、エンジン開発が簡単な仕事ではないことがわかる。

Ursa Majorは2つの製品を持っている。現在生産に入っている推力5000ポンドの液体酸素/ケロシンエンジン「Hadley(ハドレー)」と、その10倍の推力5万ポンドを発生する次世代エンジン「Ripley(リプリー)」だ。2022年には50基以上のHadleyエンジンを納入する予約を受けており、Ripleyエンジンは今後2、3年のうちに生産を開始すると、ラウリエンティ氏は語っている。

同氏はUrsa Majorを、常によりパワフルなプロセッサーを開発し、その専門知識をDell(デル)やLenovo(レノボ)などのブランドに供給しているIntel(インテル)のような企業に例えている。「私たちは、自分たちが技術開発の会社であるという考え方を好んでいます。現在ロケットを飛ばしている企業は、自分たちが10年前に設計したロケットと同じエンジンを飛ばすべきではなかったはずです。それが垂直統合のパラダイムなのです」。

同社はコロラド州にエンジンを製造する施設を持っているが、そのエンジンの大部分は3Dプリントで作られている。施設には3つのテストスタンドが併設されており、各々のエンジンは顧客に納品する前にそこでテストされる。

Ursa Majorは新たに調達した資金を使って、製造規模の拡大とさらなるエンジン開発に取りかかることを計画している。

画像クレジット:Ursa Major

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

投稿者:

TechCrunch Japan

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