ロサンゼルスのWoman’s Marchは女性運動の連帯と鼓舞に最新テクノロジーを活用

今年で第3回となるWomen’s March(ウイメンズ・マーチ)におよそ30万人の参加者がロサンゼルスのダウンタウンを行進したが、彼女たちは米国を代表する有力政治家の話を聞く機会に恵まれただけではない。主催者が、この運動のために導入したテクノロジーによる新しい体験ができた。

偶然にもWomen’s Marchと同じタイミングでローンチされたSameSide(セイムサイド)と呼ばれる組織運営ツールを活用することで、選挙の投票を促す非営利団体RockTheVote(ロックザボート)とも力を合わせるWomen’s Marchの主催者は、今年の大統領選挙に向けて、この行進のエネルギーを、地方や国レベルの女性問題に対処するための、もっと大きな政治的運動に発展させたいと考えている。

同時に彼らは、公共の空間を汚すことなく、このイベントにアートやアーティストを巻き込も方法を模索していた。そこで目を付けたのが、まだローンチ前の新しいアプリケーションMark(マーク)だ。

Markは、デンマークのゲーム開発企業Sybo(シボ)と中国のモバイルゲームのパブリッシャーiDreamSky(アイドリームスカイ)とのジョイントベンチャー。拡張現実によってデジタルな形でストリートアートを恒久的に残せるというもの。設立から2年目の企業でアプリはまだベータ版だが、Women’s Marchで初めての製品テストを行うことを決めた。

同社は、最大で総額30万ドル(約3300万円)と、アプリを新規ダウンロードしたユーザー1人につき最大で100ドルを寄付することに合意している。ユーザーがアプリをダウンロードして、このイベント期間中にアカウントを開設し最初のシェアを行うと、Markから1ドルが寄付される。残りの寄付は、その後も、アプリを続けて使用し、Markから投稿を複数シェアしたときに実施されると同社は話している。60日間連続してログインしてMarkで拡張現実作品を20本投稿すると、Women’s Marchに100ドルが寄付される仕組みだ。

画像提供:Mark

「どの運動もアートを取り入れています」とWomen’s March財団ロサンゼルス事務局長Emiliana Guereca(エミリアナ・グレカ)氏は話す。「社会正義芸術とテクノロジーと社会運動が、ここでうまく融合しています。テクノロジーではありますが有機的です」。

ARCoreには、Googleの耐久性の高いクラウド・アンカーを使っているため、どこかに絵を描けば恒久的に保存され、Markを使っていつでも見たり変更したりができる。ロサンゼルスでは、同社は国際的な米国人アーティストのAmy Sol(エイミー・ソル)、Sam Kirk(サム・カーク)、 Faith XLVII(フェイス47)、Ledania(レダニア)、Fatma Al-Remaihi(ファトマ・アル・ルマイヒ)と協力して作品を制作し、行進のルート上のさまざまな場所で見られるようにした。

Women’s MarchはMarkのデビュー会場となったわけだが、同社は、政治に関連する場所は避けた。「私たちは、できるだけ政治的中立を保ちたいと思っています」とMarkの最高責任者Jeff Lyndon Ko(ジェフ・リンドン・コー)氏は言う。コー氏は中国・深圳の上場ゲームパブリッシャーiDreamSkyの創業者であり、その新しい会社は中国当局の統制が厳しいソーシャルメディア市場では活動できなかったものと広く考えられている。

「このプロジェクトには、大中華圏の外に多くの脚を伸ばせる可能性があります」とコー氏は言う。中国の株主たちにとって(iDreamSkyはMarkに投資している)、米国の女性運動は未知の領域だ。「中国のチームは、何それ?って感じです」とコー氏。

Markとの協力が人々を鼓舞することを目的としているならば、Women’s March財団ロサンゼルスがSameSideと行っている活動の目的は、行動を促すことにある。

政治に焦点を当てたアクセラレーターHigher Ground Labsを卒業したSameSideは、Nicole a’Beckett(ニコール・エイベケット)と、海軍特殊部隊出身の兄とで創設された。2人は協力して政治的関与と社会活動を結びつけ、共通のイデオロギーと目的を持つコミュニティーを育てるソーシャルネットワークを構築した。

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SameSideは、重要な日の通知やリマインダー、それに社会的イベントに参加してくれそうな政治活動家のデータベースも提供する。言うなれば、政治に特化し、メンバーに重要な日を伝えたり将来の活動のための行動を呼びかける機能を追加したMeetupのようなものだ。

「Women’s Marchで、SameSideが非公式ローンチされます。プラットフォームを提供することで、ロサンゼルスのWomen’s Marchを活動の媒体にして、いたるところで人々が関連イベント、例えばプラカードを作るパーティー、行進の前の朝のミートアップお茶会、行進に参加できない人のためのハウスパーティーなどを設定できるようになります。また、SameSideでは、さまざまな関連イベントやロサンゼルスのWomen’s Marchに出欠の返事をすたすべての人に、RockTheVoteが制作した選挙人登録活動キットを配布します」とエイベケット氏はメールに書いてくれた。

Woman’s March財団ロサンゼルスの主催者は、行進の参加者にとって、政治への関与が次なる重要なステップだと考えている。「行進の後の、やることリストがあります」とグレカ氏。「SameSideを仲間にしたことで、人々がつながれるようになりました。スマートフォンを使ってどのように運動を継続させるかが、とても重要なのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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