ロシア侵攻でウクライナ市民は暗号化メッセンジャー、オフライン地図、ツイッターを積極利用

ウクライナの人々はロシアによる侵攻を受けて、オフラインで使える地図アプリや暗号化されている通信アプリに目を向けている。侵攻により、数百万の人々が家を離れ、抗戦するか近隣諸国に逃れている。アプリストア分析企業Apptopiaのデータによると、ここ数日、ウクライナの人々はTwitterやストリーミングラジオアプリなど、最新のニュースや情報を入手できるさまざまなコミュニケーションアプリやオフライン地図などをダウンロードしている。

現在、同国のiOS App Storeでは、プライベートメッセンジャーのSignal、メッセージングアプリのTelegram、Twitter、オフラインメッセンジャーのZelloやBridgefyがトップ5にランクインしている。その他トップ10にはWhatsApp、そしてオフライン地図アプリのMaps.Meが入っている。Maps.MeはGoogle Mapsよりも6つ上にランクインしていて、Google Mapsは現在、リアルタイムの交通状況(セキュリティリスクとされる情報)の提供を停止している。そしてSpaceXのStarlinkアプリが入っていて、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が衛星インターネットサービスが現在ウクライナで利用できるようになっていると発表してから39ランクアップした(もちろん、このサービスが必要とされる場所で実際にどの程度利用可能であるかは、今後のアプリの順位に反映されるかもしれない)。

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メッセージングアプリの上位に入っているものの中で、より多く採用されたアプリがいくつかある。

2022年2月24日のロシアの侵攻開始から2月27日までの間、Telegramの新規インストール数はApp StoreとGoogle Play合計で5万4200回とトップで、1月の同時期から25%増加した。一方、オフラインメッセージングアプリのBridgefyは、新規インストール数の増加率が最も高く、1月同時期にわずか591回だったダウンロードが、ここ数日で2万8550回と、前月比で4730.8%増という大幅な伸びを記録した。

同じくトランシーバーアプリのZelloは、1月24~27日のダウンロード1万2540回から、2月24~27日は2万4990回へと99.3%増加した。Signalの増加率は20.6%と控えめだが、1月の同期間のインストールは3万9780回、ここ数日では4万7990回とかなり強力な採用を誇っている。

もちろん、セキュリティに関しては、すべてのメッセージングアプリが同じように作られているわけではない。

Signalは最も安全なアプリで、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供し、アカウント作成日以降のデータは収集されない。一方、Telegramはデフォルトではエンド・ツー・エンドの暗号化を提供していないが、ユーザーが暗号化された「秘密のチャット」機能を手動で有効にすることができる。ただし、TelegramはSignalの創業者Moxie Marlinspike(モクシー・マーリンスパイク)氏から、主張するほど安全ではないとの批判を受けており、その主張は長年にわたり他のセキュリティ研究者や暗号技術者などによっても支持されている

マーリンスパイク氏は最近Twitterで、Telegramが安全でないことをウクライナの人々に再び注意喚起し、Telegramはデフォルトで、誰もがこれまでに送受信したすべてのメッセージのプレーンテキストのコピーを持つクラウドデータベースになっているとツイートしている。

トランシーバーアプリのZelloは、1対1およびグループでの会話をエンド・ツー・エンドで暗号化しているとされているが、同社が2020年にセキュリティ侵害に直面していたことは注目に値する。Bluetoothとメッシュネットワークのルーティングに依存する人気の抗議アプリBridgefyも、過去数年にわたり数々のセキュリティ問題に直面してきた。このアプリは香港、インド、イラン、レバノン、ジンバブエ、米国での抗議活動の際に利用者が急増したが、2020年には深刻な脆弱性が見つかり、「プライバシー災害」と呼ばれることになった。

その後、エンド・ツー・エンドの暗号化のサポートを展開したものの、2021年にアプリを分析した暗号技術者は、それらの修正が不十分であることを発見した

メッセンジャー以外のアプリで、ここ数日ウクライナで急増しているのは、ストリーミングラジオとTwitterのアプリだ。

通常、TwitterはiOSのNewsカテゴリで1位だが、総合順位は90位から130位程度に落ち着いている。しかし、2月27日時点で、ウクライナのiOS App Store総合チャートでは前日から2ランクアップして4位、Google Playでは15ランクアップして28位となった。2月27日にTwitterはiOSとAndroidで約7000回ダウンロードされ、これは1日のダウンロード数としては過去最多だ。

画像クレジット:Apptopia ウクライナのアプリストア 2022年2月27日

ストリーミングラジオアプリのRadios UkraineとSimple RadioはApp Storeでも順位を上げ、現在それぞれ19位と21位につけている(Facebookが20位で、その間に入っている)。

Google Playのウクライナのトップチャートは、少し様子が違う。

Signal、Bridgefy、Telegram、Zelloもトップ5に入っているが、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供するAndroid専用のピア・ツー・ピアメッセンジャーBriarもランクインしている。オフライン地図アプリのMaps.Meは11位、Two Wayとシンプルな名前の別の双方向トランシーバーアプリは15位で、WhatsAppがそれに続く。

ウクライナのGoogle Playストア、2022年2月27日(画像クレジット:Apptopia)

両アプリストアとも、多くのゲームがトップチャートにランクインしている。家族が急場しのぎの防空壕に隠れたり、安全な場所まで長距離移動する間に、子どもたちを楽しませるためにダウンロードされたようだ。

世界の他の場所では、ロシア・ウクライナ戦争が他のアプリをチャート上位に押し上げている、とApptopiaは指摘する。

米国では、ニュースアプリのCNNとFox Newsがここ数日で急上昇し、ワシントンポストでは、国家間の緊張が高まる中、2月19日の侵攻に先立って1日のインストール数が過去最高(1万5000回)を記録した。

画像クレジット:Apptopia 米国ユーザーのニュースアプリダウンロード数

そして今、ロシアがニュースやソーシャルメディアへのアクセスを遮断したことで、VPNアプリの需要が高まっている。Apptopiaの調べによると、ロシアが国内でFacebookやTwitterなどのソーシャルメディアアプリへのアクセスを制限し始めた後、VPNアプリのトップ5は1日のダウンロード数が大幅に増加し、ユーザーは通常よりも1日に数万回多くVPNアプリをダウンロードした。しかし、ロシアの人々は、VPNが必ずしもセキュリティに優れているわけではないことに注意する必要がある。VPNプロバイダーは、インターネットトラフィックをISP(インターネットサービスプロバイダー)以外の誰かにルーティングするだけなので、セキュリティは、VPNプロバイダーをどれだけ信頼できるかに左右される。

急増するVPNアプリのダウンロード(画像クレジット:Apptopia)

画像クレジット:Anna Fedorenko / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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