ロシア政府がスノーデンの滞在許可期間を再び延長

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ロシア外務省の担当者が、元NSA(アメリカ国家安全保障局)契約職員で内部告発者のエドワード・スノーデン(Edward Snowden)に対する一時滞在許可の期間が延長されたと明かした。

The Guardianは、ロシアの外務報道官を務めるMaria ZakharovaがFacebook上でこの事実を明らかにしたと報じている。Zakharovaは自身のFacebookページに、スノーデンが居住許可を手に入れるまでの期限が「数年間」延長されたと記していたのだ。

TechCrunchでは、ロシアの外務省および現地のスノーデンの弁護士Anatoly Kucherenaと確認をとっているので、新しい情報を入手次第この記事をアップデートしたい。

昨年のアメリカ大統領選で、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と親しいドナルド・トランプ次期大統領が勝利すると、コメンテーターの中にはスノーデンを取り巻く状況が今後どう変わってくるのかについて疑問を抱く人もいた。

プーチンとの親しい関係を利用して、トランプがスノーデンの引き渡し交渉をする可能性は十分ありえる。

しかしプーチンは、すぐにスノーデンをトランプへ引き渡すつもりはないようだ。

RTが引用していたKucherenaのコメントによれば、まもなくスノーデンは(彼が望めば)合法的にロシアの永住権を申請できるようになる。というのも、既にスノーデンは4年近くロシアに滞在しており、滞在期間中に法を犯したこともなければ、ロシア国内で訴えられたこともないからだ。

スノーデンの最初の滞在許可が期限を迎えた2014年7月にも、ロシア政府は3年間の延長を許可していた。

アメリカ政府や関係当局による監視プログラムについて書かれた機密文書と共に2013年5月にアメリカを去った後、スノーデンは香港でジャーナリストに当該文書を手渡した。その後、アメリカ政府にパスポートを失効させられた彼は、モスクワ空港に取り残されてしまったが(本当は南米へ向かうつもりだったと報じられていた)、結果的にロシア政府から一時滞在許可証が発給され、それ以降ロシアに滞在している。

日曜日にThe Cipher Brief上で公開された、元CIA副長官のMichael Morellが書いた記事に対するFacebook上のコメントで、Zakharovaはスノーデンの「ロシアに滞在する許可」が延長されたと述べた。なお同記事の中でMorrelは、プーチンに「完璧な大統領就任祝い」としてスノーデンをトランプに引き渡すよう求めていた。

「スノーデンがアメリカの地に降り立ち、手錠を掛けられる光景を目にすれば、トランプ次期大統領とインテリジェンス・コミュニティー(IC)の間にある溝も埋まることでしょう。ICは誰よりもスノーデンが裁きを受けることを望んでいます」とMorellは記している。

「はっきり言って私自身はスノーデンのことを裏切り者だと考えていますが、陪審員の評決、そして有罪であれば裁判官の判決を尊重するつもりです。ひいては、スノーデンが市民の自由を脅かす恐れのある(しかし実際に事件は起きていない)プログラムの存在を大衆に知らせたヒーローなのか、それとも国の安全に関する機密事項を世界中に漏らした裏切り者なのかに関する司法当局の判断を尊重したいと考えています。憲法で定められた司法制度に答えをだしてもらいましょう」と彼は付け加える。

一方スノーデンは、アメリカ政府から公正な裁判を受ける権利が与られるならば帰国するつもりだと繰り返し発言していた。ここでの公正な裁判とは、スパイ活動法に基いたものではなく、彼が陪審員の前で自身の行動は公益のためだとする答弁の機会を与えられるようなものを指している(スパイ活動法で起訴された場合、被告にそのような答弁の機会は与えられない)。

さらにZakharovaはFacebook上のコメントで、「就任祝い」としてスノーデンをトランプに受け渡すようプーチンに求めているMorellの記事の内容を、スノーデンの行為が「裏切り」だと示唆する「ヘイトスピート」だと述べた。

スノーデンの弁護士を務めるKucherenaも、Morellの声明を「全く馬鹿げている」と非難した。

二人の反応からは、スノーデンのロシア滞在が持つ、プーチン政権にとっての宣伝効果を感じ取ることができる。彼らはスノーデンを使って、次期アメリカ政府に道徳的な圧力をかけようとしているのだ。

さらにロシア政府は、スノーデンが告発した情報を使って、自分たちのオンライン活動に対する批判をかわそうとしているようだ。例えば先月末に行われた会見の中でZakharovaは、アメリカの監視プログラムに関するスノーデンの告発内容を引用し、アメリカ大統領選をロシアが妨害したとする欧米からの批判に反論した。

「紛れもない事実に基いたスノーデンの告発によって、サイバースパイ・サイバーアタックのためのシステムを世界中に広げようとするアメリカ政府の活動が明らかになりました」と彼女は述べ、さらに「彼らがサイバーアタックを行ったと主張している国はひとつしかないにも関わらず、その証拠さえ提示されていません。アメリカ政府や外国の関係当局は、自分たちの行いを正して世界中の国々に許しを乞う代わりに、ロシアへ責任をなすりつけようと躍起になっています」と付け加えた。

昨年の9月には、American Civil Liberties UnionやAmnesty International、Human Rights Watchに所属する人権活動家のグループが、オバマ大統領に対して彼が大統領の座を退く前にスノーデンの赦免を求めるキャンペーンを開始した。彼らはスノーデンの行いが、アメリカ国民の安全を損なうばかりか、むしろ政府による監視活動の見直しのきっかけになったと評価しているのだ(Morellも彼の行動が「合理的な変化につながる議論を巻き起こした」と認める一方、「スノーデンの告発内容の網羅性の高さから、アメリカ国家の安全が一様に損なわれた」と主張している)。

昨日オバマ大統領は最後の仕事のひとつとして、WikiLeaksに外交・軍事関連文書を漏えいした罪で禁錮35年の判決が下された、元陸軍情報アナリストで内部告発者のChelsea Manningに対する大幅な減刑を発表した。

しかし政権交代直前にスノーデンが減刑される可能性は低いようだ。

大統領報道官のJosh Earnestは、両者の間には「著しい違いがある」と述べ、Manningが軍の刑事司法プロセスを踏んで「不正行為を認めた」一方、スノーデンは彼自身が「敵国」と呼ぶ国へ逃げ込み、「直近にアメリカの民主主義を脅かすような組織的行動をとった国で身を隠している」ことを強調した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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