ロータスの新型EV「Eletre」に搭載された技術に同社の自動運転への野望が見える

Lotus(ロータス)は米国時間3月29日、バッテリー駆動の「ハイパー」SUV「Eletre」(エレトレ)を発表した。これは、ロータスが今後4年間に発売を予定している3種類のEV(電気自動車)のうちの最初の1台だ。

どのようなものなのか?Eletreは(ハンガリー語で)「活気づく」という意味で、Lotus初の実用車であり、今後予想されるバッテリー駆動の高級SUVの需要増に対応するための重要なモデルだ。車両のデザインや豪華な内装は特筆すべきものだ。しかし、ロータスの未来を最もよく垣間見ることができるのは、必要に応じて飛び出す4つのLiDAR(ライダー)センサーを含む、いくつかの技術だ。

まずは基本的なことを。Geely Automotive(ギーリー・オートモーティブ、吉利汽車)とマレーシアのコングロマリットEtika Automotive(エチカ・オートモーティブ)が所有するLotusは、このEVに、パワーとトルク、そこそこのバッテリー走行距離を詰め込んでいる。

Eletreは、800ボルトの電気アーキテクチャを採用し、バッテリーを劣化させることなく急速充電を可能にした。各車軸に1つずつ搭載された2つの電気モーターは、最低でも600馬力を発生し、SUVを3秒以内に0〜60mph(時速0〜97キロ)まで加速することができるLotusによると、100キロワット時以上の蓄電能力を持つバッテリーパックは、フル充電でEletreが373マイル(約600キロメートル)走行する(欧州のWLTP燃費基準)ことを可能にするという。また350キロワットの充電器を使えば、20分で248マイル(約399キロメートル)分を充電することができる。

Eletreには4種のドライブモードが提供される。そのうちの1つであるオフロードモードでは、ステアリング、ダンパー設定、パワートレイン、アクセルペダルの反応が調整される。その他、オプションの23インチホイール、アクティブライドハイト、アクティブ後軸ステアリング、アクティブアンチロールバー、ブレーキによるトルクベクタリングなどのハードウェアや機能を追加することが可能だ。

この車両は、2022年後半に中国の武漢にあるロータスの新工場で生産が開始される予定だ。

画像クレジット:Lotus

Lotus Cars(ロータスカーズ)のマネージングディレクターのMatt Windle(マット・ウィンドル)氏は、Lotus初のSUVかつEVであるこの新型車について「私たちの歴史の中に重要な位置を占め、ビジネスを変革したい私たちの変わらない願望を明確に示すもの」だという。

もちろん、この歴史の中の重要な位置を、将来の大きな利益につなげることが目的だ。

LotusはEletreの価格情報を公開しなかったので、競合相手を特定することは難しい。価格次第では、Tesla(テスラ)Model Xや、Lamborghini(ランボルギーニ)からAston Martin(アストン・マーティン)に至る、高級ブランドのトップセラーとして認識される高級SUVと競合する可能性がある。

潜在的な競争相手は増え続けている。Maserati(マセラティ)は先週、中型SUV Levante(レヴァンテ)のバッテリー版と、新型コンパクトクロスオーバーGrecale(グレカーレ)の2種の完全電気SUVを発売する計画を発表した。Ferrari(フェラーリ)初のSUV、30万ドル(約3654万円)のPurosangue(プロサングエ)は2022年後半に登場予定だ。

Lotusの場合、先進運転支援システムの改善や機能追加を行うために、無線を使ったソフトウェアアップデートを行うことのできるセンサーやその他のハードウェアを搭載し、Eletreの「将来の拡張性」を保証している点が特徴だ。

一般に、自動運転車を安全に運用するための鍵として考えられている光検出・測距センサーLiDARは、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Volvo(ボルボ)、そして今回のLotusといった自動車メーカーで採用され始めている。こうした自動車メーカーは、LiDARを完全な自動運転機能ではなく、特定条件下の限定的な自動運転機能のための余裕を提供するために必要なセンサーとみなしている。少なくとも、今はまだそうだ。

画像クレジット:Lotus

LotusがEletreに搭載するLiDARは、このような使い方を想定しているようだ。Lotusは4つのLiDARセンサーを使用する予定で、必要なときに「展開」または「飛び出し」が行われるようになっている。Lotusによれば、LiDARセンサーは必要ないときは隠れていて「必要に応じてフロントガラスの上部、リアガラスの上部、フロントホイールアーチから現れるだけ」とされている。

このLiDARセンサーシステムによって、最終的にはスマートフォンのアプリで駐車場への入出庫ができるようになる予定だ。しかし、Lotus Technology (ロータステクノロジー)の副社長で、ドイツのLotus Tech Innovation Center(ロータステックイノベーションセンター)のマネージングディレクターであるMaximilian Szwaj(マクシミリアン・シュワイ)氏のコメントは、同社が駐車場以外のことも考えていることを示している。

彼は声明の中で「LiDARセンサーやカメラなどのADAS(先進的運転手支援システム)技術は、より自動的な時代に向けて新車に搭載されることが多くなるでしょう」と、現在のための技術はもちろん、未来のための技術も搭載していると述べている。

また、現在の米国の規制では禁止されているカメラを使ったミラーシステムも搭載される予定だ。3種類のカメラは、1つ目はバックミラー用、2つ目は駐車を助けるために上方から360度の視界を作り出すためのもの、そして3つ目は先進運転支援システムに使用される。Lotusは、カメラがLiDARシステムと連動して「自動運転機能」を実現すると述べている。

Lotusは、この「自動運転機能」が駐車以上の野望を意味するのか否かについて、これ以上の詳しい説明をしていない。Lotusが説明するハードウェアは最先端技術ではあるが、効率的で安全な自動運転機能をクルマに搭載するには、計算能力とソフトウェア、そして直感的なユーザーエクスペリエンスを備えたシステムを含め、克服すべき多くの課題がある。

しかし、4つのLiDARセンサーと3つのカメラは、同社の目標が限定的または条件付きの自動運転機能にも及んでいることを示唆している。

画像クレジット:Lotus

その他のイノベーションとしては、同社が多孔性 (ポロシティ、porosity)と呼ぶものがある。これは空力特性、航続距離、効率を改善するために、上下、周囲だけでなく、車体の中に気流を通過させるものだ。Lotusは、ハイパーカーEvija(エヴァイヤ)やEmira(エミーラ)をデザインする際、多孔性に注力した。

今回Eletreに搭載されたことで、このデザインイノベーションは今後も続くと思われる。ロアーグリル、フロントフェンダー、テールランプ付近などに、このエアーチャンネルがわかりやすく配置されている。

特にグリルは興味深いもので、三角形の花びらが連結したネットワークを形成し、クルマが動いていないときや走行中の抵抗を減らす必要があるときは閉じられる。Lotusによれば、電気モーター、バッテリーパック、フロントブレーキの冷却が必要なときに、ラジエーターに空気を送り込むためにグリルが開き、Eletreが「呼吸」できるようにするのだという。

編集部注:Eletreは日本の公式輸入代理店のウェブページなどでは「エレトレ」と表記されているが、Lotus公式を含む現地/海外メディアのビデオなどでは「エレクトラ」と発音されている。

画像クレジット:Lotus

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(文:Jaclyn Trop、Kirsten Korosec、翻訳:sako)

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TechCrunch Japan

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