一過性 vs 永続的メッセージング:問題は保存期間ではない

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昨今のショートメッセージング・サービスの戦いを観察している人は、これをチャット履歴をすべて保存するTwitterやFacebookのようなシステムと、いわゆる消滅型メッセンジャー ― 例えばSnaptchat ― のように読んだメッセージが消えてしまうシステムとの一元的戦いだと思うかもしれない。

新たに登場するアプリケーションは、それぞれ時間軸のゼロと無限大の間のどこかに位置付けられる。チャットシステムは挙って消滅機能を追加し、エンタープライズ向けメールシステムは、メールの賞味期限や「情報ライフサイクル管理」にまつわる機能を追加する。残る疑問は、果たして本当に問題なのは保存期間なのかである。

一過性コミュニケーションの想定される用途の殆どはよくてわいせつ目的だ。Snapchatの人気は、反道徳的写真を見つからずにシェアできることがティーンエージャーにアピールしたことに支えられている。Mark CubanがCyberDustに投資する前、SEC(証券取引委員会)が彼のソーシャルメディア記録にインサイダー取引の証拠がないか探したことはよく知られている。

これらの会社の中で、自社サービスが何らかの社会貢献をしていると主張するところはまだいない。一時期大きく飛躍しながら今は消えてしまったSecretのファウンダーたちが学んだこと、それは社会的貢献の欠如は、主流サービスとして受け入れられるためには致命的だということだった。

一方、揮発性メッセージングが自分たちの違法を疑われる行為を守ってくれると考えたり、こうしたシステムが違法行為を誘発することを心配する人々も本質を見失っている。他の何よりも一過性のメッセージングシステムを思い出してほしい:電話だ。

それは生成されるそばからリアルタイムで消費される。自分の端末がしゃべり、誰かの端末が聞くオンラインコミュニケーションは、どれも同じ制約を持つ。世界中のビンラデンたちはSnapchatではなく密偵を使う ― 英国議会がどう言おうとも。

他の何よりも一過性のメッセージング、それは電話だ。

一過性メッセージングに対する肯定的欲求の多くは、異なる文脈の会話が一ところに集まれる気楽さにある。ゲイの権利を支持する個人掲示板に書いたコメントが追跡され、カトリック学校の人気教師であるとわかって職を奪われることがあるかもしれない。解決策はメッセージが消えることではなく、そもそも個人情報を保存しすぎないことだ。

この手のアプリに対する欲求は、現在のオンラインソーシャルコミュニケーションの不自然な状態に起因している。実生活ではあらゆるコミュニケーションが何らかの文脈に沿って起きていて、人々はその文脈の中では限定的な自分しか見せない。

クラスを教えている時、私は教師の資格を使っている。レストランのレビューを書く時、私は自分がよく外食するという事実を公表したがっている。政治について語る時、私が自由主義か保守的かを知ることには意味がある。今の主要なソーシャルネットワークに欠けているのは、オンラインコミュニケーションで、必要十分な〈部分的アイデンティティー〉を活用する手段だ。

有名人やブランドを別にして、あらゆる会話の中で個人を全部さらけ出すことの利益は殆どない。私がITゴシップを流す時は、読者にとって私がハイテク企業のCEOであることを知る方が、私の本名や全対話履歴を知るよりもずっと役に立つ。

最近Amazonで買った商品のレビューを書いている時、私の専門的経歴は無関係だ。個人を特定できる情報を保存する理想的な方法は、そもそも集めないことだ。

では、個人情報の集約が役に立たないのなら、なぜソーシャルネットワークは挙ってそれを強調するのか、という疑問が残る。それは、彼らのビジネスが効果的コミュニケーションを可能にすることではないからだ。彼らの本当のビジネスは、ユーザーの個人情報を集め、最高値をつけた入札者に売ることだ。彼らの顧客は広告主であり、サービスを使う人々ではない。

幸いなことに、ソーシャルプラットフォームの新たな選択肢が出現しつつあり、そこでは個人情報を集約して友達やフォロワーのリストを作ることなく、意味のある情報を得ることができる。数ある事実の検証された部分だけを使うことによって、ユーザーは個人をすべて曝け出すよりも強くなれる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

投稿者:

TechCrunch Japan

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