三井不動産が50億円のCVCをグローバル・ブレインと共同で設立

日本国内で事業会社がスタートアップへ資金を提供するためのファンドであるCVCファンドを設立する流れが続いているが、三井不動産も今日、総額50億円となるファンドの立ち上げを発表した。本業強化や事業領域拡大を狙う。東京・六本木で会見した三井不動産取締役専務執行役員の北原義一氏はファンド設立の意味合いとして「短期的な利益を追求するわけではない。リスクを取ってアントレプレナーと一緒に未来を作っていきたい」と述べた。

photo01「31VENTURES Global Innovation Fund 1号」と名付けられた新CVCはグローバル・ブレインと共同で設立したもの。運営期間は10年で、アーリーステージのスタートアップを中心にシード期からミドル期を投資対象とする。日本を中心に、北米、欧州、イスラエル、アジア諸国などで投資していくという。投資領域はバイオや創薬以外としていて、不動産、IoT、セキュリティー、エネルギーなどを例に挙げている。今回CVC設立に関わったグローバル・ブレインは300億円を運用する独立系VCであるほか、これまでにもKDDIやニフティと共同でCVCを設立してきた経緯がある。グローバル・ブレイン代表の百合本康彦氏によれば同ファンドの投資先では9件のIPOと21社のM&Aの実績がある。

これまで三井不動産はベンチャー向けオフィスを幕張、日本橋、霞が関、柏の葉などで運営してきた実績があり、これまで330の企業・個人が会員となっている。また三井不動産は、既存VCへのLP出資としては内外ファンドへも出資実績がある。国内ではジャフコ、ユーグレナやSMBC日興証券が立ち上げた次世代日本先端技術育成ファンド、そして海外VCだと500 StartupsやDraper Nexus Venturesにも出資してきている。

今回は三井不動産は社内でバラバラに動いていた関連メンバーを集約した形だ。今後は資金、コミュニティー、三井不動産が持つアセットやリソース、社外専門組織による支援の3つの柱で、新産業創出をサポートしていくという。三井不動産が持つアセットというのは具体的には、住まい、ショッピングセンターやリゾートホテル、オフィスビル、物流施設など顧客接点などが含まれる。これが起業家にとって有効なプラットフォームとなるのではないかと話す。たとえば、「三井のリパーク」の駐車場において、三井不動産が直接出資しているクリューシステムズの高機能セキュリティ機能を導入決定したことや、コワーキングスペース「Clipニホンバシ」でフォトシンスのAkerunの実証実験を行ったこと、Asia Research Instituteというスタートアップの位置情報アプリを実用化に向けて豊洲で実証実験するといった取り組みを行っているそうだ。

大手不動産デベロッパーはどこも、成長性の高いスタートアップ企業群の誘致に向けて動いてるし、これまでの三井不動産の取り組みを見ていると、今回の三井不動産のCVC立ち上げは、ほとんど既定路線だったようにも見えるくらいだ。ただ50億円というのはCVCとしても比較的大きいし、踏み込んできた印象もある。

2015年以降に組成されたCVCファンドには、2015年1月設立のYJキャピタルの200億円の2号ファンドや楽天が2016年1月に設立した100億円のCVCが規模の大きい。このほかLINE Venturesや富士通、電通ベンチャーズ、テンプホールディングス、朝日放送などが10〜50億円のファンドを設立・組成している例がある。

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TechCrunch Japan

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