上院の暗号バックドア法案は「米国人にとって危険」だと下院議員が警告

有力な下院民主党議員の一人が「ハイテク企業にバックドアの設置を義務付け、法執行機関が暗号化されたデバイスとデータにアクセスできるようにする上院の法案 は『非常に危険』だ」と発言した。

法執行機関は、ハッカーや盗難からユーザーデータを保護するための強力な暗号化の使用をめぐってハイテク企業と頻繁に論争しているが、暗号の使用によって深刻な犯罪で告発された犯罪者たちを捕まえることが難しくなっていると政府は主張している。 Apple(アップル)やGoogle(グーグル)のようなハイテク企業は近年、自分たちでさえロックを解除することができない暗号化によってデータを保護することで、セキュリティへの取り組みをさらに強化している。

6月に上院共和党は新たな「合法アクセス」法案(NBCニュース記事)を提出し、裁判所命令の下に、法執行機関がユーザーデータにアクセスできるようにすることをテック企業に強制しようとする、これまでの取り組みをさらに一歩進めた。

「この法案は米国人にとって危険なものです。なぜならそれはいずれハックされ、悪用され、安全を確保する方法がなくなるからです」とDisrupt 2020の場でTechCrunchに語ったのは、シリコンバレー地域選出のZoe Lofgren(ゾーイ・ロフグレン)議員だ。「もし暗号化を外せるようにするなら、私たちは大規模なハッキングと破壊に自分たち晒すことになるだけです」と同議員。

ロフグレン議員のコメントは、暗号化を弱体化させる取り組みをずっと批判してきた批評家やセキュリティ専門家のコメントと同じものであり、ハッカーに悪用されない法執行機関向けのバックドアを開発することはできないと主張するものだ。

暗号化の力を削ぎ弱体化させようとする、一部議員たちのこれまでの努力は失敗を重ねてきた(未訳記事)。現在、法執行機関は既存のツールと技法を利用(未訳記事)して、電話とコンピュータの弱点を見つける必要がある。FBIは何年にもわたって侵入できないデバイスが多数あると主張してきたが、2018年には、押収した暗号化デバイスの数と、その結果として悪影響を受けた捜査の数を繰り返し過大に表明(ワシントン・ポスト記事)していたことを認めた。

ロフグレン議員は1995年以来議員を務めてきた。それはセキュリティコミュニティが、強力な暗号化へのアクセスを制限しようとする連邦政府と初めて戦った、いわゆる「暗号戦争」の頃だ。2016年に、ロフグレン議員は下院司法委員会の暗号化ワーキンググループに参加した。このグループの最終報告は、超党派で作成され拘束力はないものの、暗号化を弱体化するいかなる措置も「国益に反する」と結論付けていた。

にもかかわらず、今年William Barr(ウィリアム・バー) 米国司法長官が、米国民は暗号バックドアがもたらすリスクを受け入れなければならない(未訳記事)と発言したように、政府がバックドアの推進を続けている点が議論になっているのだ。

「暗号化を安全に取り除くことはできません」とロフグレン議員は語った。「そして、もしそうすれば、我が国も、米国民も、そして言うまでもなく世界中の人びとも混乱に陥れることでしょう。とにかく危険なだけですので、認めることはできません」と締めくくった。

画像クレジット: Mandel Ngan (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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