不動産仲介会社の業務効率化SaaSを手がけるオープンルームがKVPから2500万円調達

不動産業向けの業務効率化SaaS「Forest(フォレスト)」を開発するオープンルームは2月27日、KVPを引受先とする第三者割当増資により2500万円を調達したことを明らかにした。

同社はドイツ証券の不動産投資銀行部で働いていた経験を持つ田沼豊寿氏が2017年9月に立ち上げたスタートアップだ。過去にエンジェル投資家より資金調達をしているものの、VCからの調達は初めて。今回も含めたシードラウンドでの累計調達額は約4000万円になるという。

Forestは不動産仲介会社が顧客に物件情報を紹介する際に行なっている「オビ替え」を簡単にする機能を軸に、物件情報管理や顧客への物件提案を効率化するサービスだ。

オビ替えとは物件を紹介する際に使う“物件チラシ”に記載された会社情報を他社のものから自社のものへと変更する作業のこと。多くの不動産会社は自分たちだけで何百もの物件を扱っているわけではないので、他社が扱う物件情報を顧客に紹介することも多い。ただしそのまま渡しては他社の情報が載った状態で顧客の手に渡ってしまうので、会社の情報を自社にものに変える必要があるわけだ。

田沼氏の話ではこのオビ替えが担当者の負担になっているそう。「一度紙で印刷した後に会社情報が記載された部分を折り返し、その部分に自社の情報を記入した紙を重ねて再度印刷する」というやり方を何年も前から続けている会社が多いほか、無料で使える画像編集ツールなども存在はするもののオビ替えに特化しているわけではないため使い勝手に課題があったという。

そこでForestではWeb上で簡単にオビ替えをできる画像編集機能を開発。図面上の文字を認識するOCR機能を用いて物件情報をデータベース化できる仕組みや、クラウド上で顧客に物件提案ができるCRM機能などと合わせて提供している。

サービスの正式ローンチは昨年末ながら、画像編集機能を切り出した無料版を公開したことで300社以上が導入。有料版のForest PROの場合は顧客ごとに専用ページが発行され、わざわざメールなどに物件情報を添付して送付する手間もなく、クラウド上で物件提案を始めとしたコミュニケーションができるようになる。

「顧客にメールなどで複数の物件を紹介する際、オビ替えからメール送付するまでの一連の工程で30分ほどの時間がかかることもあったが、Forestを使うことで4〜5分ほどに短縮される。オビ替えだけでなく物件提案のやり方などもまだまだ改善の余地が大きい。それらの業務をクラウド上で、システマティックに実施できる基盤を整えていきたい」(田沼氏)

オープンルームでは今回調達した資金を活用して組織体制を強化し、OCRやCRMを始めとしたプロダクトの機能拡充を進める計画。ゆくゆくはオビ替えを入り口として膨大な数の物件図面をデータ化し、不動産会社が物件情報の収集や活用に役立てられる物件データベースの構築を目指すという。

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TechCrunch Japan

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