不規則な周期の女性の妊娠適期を検出する家庭用キット開発のOovaが1.3億円調達

Oovaは、BBG Venturesが主導し、Company Venturesが参加したシードラウンドで120万ドル(約1億3000万円)を得て、7月下旬にOova Kitを正式にローンチした。このキットは、2種類のホルモンを定量的に測定する家庭用検査を含んでおり、女性やその主治医に妊娠可能な日を提示したり、排卵の有無を判定する機能を持つ。

ニューヨークに拠点を置く同社は、2017年にCEOのAmy Divaraniya(エイミー・ディヴァラニア)氏によって設立された。ディヴァラニア氏は遺伝学を専門とする生物医学の博士号を取得している。同氏は個人的に月経不順による不妊に苦しんでおり、医師から35歳になってから再度受診するように告げられた。それでも、Divaraniyaは待つことを望まず、その時に何か行動したいと思った。

その後も、基礎体温や排卵検査薬を使って自然な妊娠の道を追求し続け、18カ月後に息子を授かった。しかしディヴァラニア氏は、利用可能なツールのすべてが「完璧な周期を持つ」女性のために作られたものであり、彼女に当てはまるものではないことを認識した。不規則な周期の女性に向けた事業に利用できる資金がない中で、同氏は、個人に合わせた非侵襲的なツールを提供し、家庭で個人的なホルモンプロファイルに対処できるようにしたいと、Oovaを立ち上げた。

エイミー・ディヴァラニア氏、Oovaの創業者でCEO(画像クレジット:Oova)

ディヴァラニア氏によると、博士課程を修了して2017年に同社を設立した後、過去4年間にわたってこの技術を可能な限り正確に機能させることに注力してきたという。Oovaの家庭用キットには、ハンドルホルダー、15個の使い捨てカートリッジ、モバイルアプリが含まれている。ユーザーは尿検査を行い、結果をスマートフォンのカメラでスキャンして、排卵確認や受胎に最適な日などの実行可能な措置を受け取る。主治医にデータを見てもらい、相談することも有効だ。

Oovaは、黄体形成ホルモンとプロゲステロンを測定し、時間をかけてホルモンを追跡する検査として、市場に出ている唯一のものであるとディヴァラニア氏は強調する。代替手段は、採血のために毎日病院に行くことであるが、それは体外受精を受ける場合に限られる、と同氏は説明する。

BBG Venturesの共同創業者でマネージングパートナーのSusan Lyne(スーザン・ライン)氏は、長い間女性の健康にフォーカスしており、他の創業者からディヴァラニア氏に会うべきだという提案を受けた。

「自分の周期を可視化することは、多くの女性にとって変革の瞬間です」とライン氏はインタビューで語った。「Oovaの科学は強力で、消費者は専門家に相談することなく自分の検査結果を理解できます。過去においてのみ個人的なホルモンプロファイルが得られるという事実は、自分が受精可能かどうかを判断するレベルに達するということでしかありません。同社のキットは定量的なものなので、昨日、今日と、それを追跡し、排卵の時期を知ることができます」。

同社の当初の目標は消費者に直接届けることだったが、パンデミックの最中に不妊治療クリニックが閉鎖を余儀なくされた後、ディヴァラニア氏は医師から電話を受け、診療所に来ることができなくなった患者をサポートするためにキットを早期にローンチするよう求められた。現在、75以上の不妊治療クリニックが同社のプラットフォームを利用している。

コンサルティング会社のPrecedence Researchによると、体外受精、遺伝子検査、卵子凍結、生殖補助などのサービスを含む世界の不妊治療テクノロジー市場は、2020年に331億ドル(約3兆6300億円)と評価され、2027年までに479億ドル(約5兆2600億円)になると予想されている。家庭用診断デジタルヘルス市場は、2027年までにそれぞれ70億ドル(約7700億円)と5510億ドル(約60兆5000億円)になると見込まれている。

他のスタートアップは、類似の不妊治療ケアをよりアクセス可能なものにすることに注力している。例えば2021年、Future Familyは900万ドル(約9億9000万円)を調達して不妊治療のコストとプロセスの透明化を実現し、デジタルヘルス企業のRoは5月にModern Fertilityを買収して、不妊検査とリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を自社のサービスに追加した。また、Mate Fertilityは、家族計画サービスのネットワーク構築に280万ドル(約3億700万円)の資金を投入している。

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Oovaはプレシード資金で合計440万ドル(約4億8000万円)を調達した。将来の需要を満たすために、ディヴァラニア氏は新しい資金を使ってより多くの機能を追加し、ホルモン検査を市場に出す準備を進めている。同氏はまた、再ブランド化に取り組み「Oovaを単なる科学的実験にとどまらない、企業として育て上げたい」とも考えている。価格はスターターキットが159.99ドル(約1万8000円)、リフィル可能なキットがサブスクリプションで月額99.99ドル(約1万1000円)となっている。

「私たちは不妊治療からスタートしましたが、慢性疾患などの他の健康分野にも事業を拡大したいと考えています。データ利用者と臨床医が需要を牽引できるようにしたいのです」とディヴァラニア氏は付け加えた。「また、黄体形成ホルモンとプロゲステロンとともに妊孕性にとって完璧な3要素となる、エストロゲンの追加にも取り組んでいます」。

画像クレジット:Oova

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

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