世界の誰かがモーニングコールをかけてくれるWakie、iOS版もついに登場

「おはよう。お目覚めの時間だよ」と、少々ぎこちない感じで話しかける。
「ありがとう。どこからかけてくれているの?」と応答がある。声にはアイルランドのアクセントだ。
「こちらはイギリスだよ。そっちはアイルランドだね」。
「なぜわかったのかしら」と不信感をあらわす声。
「だって登録国を示す国旗アイコンが表示されているよ」。

ここで紹介するのは、そんなやりとりをするアプリケーションだ。少々「ひっかかり」を感じる人も多いだろう。それがためだろうか、登録承認までに9ヶ月を要することとなった。しかしようやく、「ソーシャル目覚まし時計」のWakieがAppleのAppStoreに登録されることとなった。もともとは2011年にロシアでウェブサービスとしてリリースされたものだ。今年になってWindows PhoneおよびAndroid向けのアプリケーションがリリースされていた。目覚まし時計を、リアルな「モーニングコール」に置き換えるためのサービスだ。他のWakie利用者が、目覚まし代わりとして実際に電話をかけてきてくれるのだ。

「ほとんどの人は目覚まし時計の音を嫌悪しています。従来の電子音やベルの音を嫌う人がとても多いのです」とWakieの共同ファウンダー兼CEOであるHrachik Adjamianは言う。「起きなければいけない人を、少しでも楽しい気分で起こしてあげようとする人を世界中から集めて、ハッピーな目覚めを提供しようとして、このサービスを立ち上げたのです。使っている人の多くは、おかげさまで気分よく目覚めることができたと言ってくれます。一日の始まりが良い感じであれば、その日一日もきっとハッピーに過ごすことができるはずです」。

Wakieを使っている人の中で、起こしてもらいたい側の人を「Sleepyheads」と呼ぶ。このSleepyheadsの人がWakieを使う方法は、従来の目覚まし時計とさほど変わらない。起きたい時間をセットしておくだけだ。ただし、起きる時間になれば、世界中の利用者のうちの誰かから、匿名でウェイクアップコールがかかってくるというわけだ。かかってきた電話に応じれば、1分間の会話を楽しみつつ、その間にすっきり眼を覚ますことが可能となる。ちょうどその時間に起こしてくれる人がいなければ、アプリケーションが予め用意しておいたメッセージを流してくれる。

「目覚ましがなればスヌーズして、結局起きられなかったという人が多いようです」とAdjamianは言う。「私たちの調査によれば、知らない人と1分の間にわたって話をすれば、脳もすっかり目覚めるようなのです。目覚め成功率は99%になるようです。誰かの問いかけに応じることで、起きなければという意識が強く働くのでしょう。知らない人に丁寧に、あるいは社会的に接しようとすることで、社会生活に入っていく準備もできるわけです。そのようにして心が目覚めてしまえば、多少時間に余裕があるにしても、再度眠ってしまうようなことはほとんどなくなります」。

このサービスを通じて最初に起こしてもらったとき、電話してきたのはアメリカ人女性だった。彼女の対応はかなり事務的な感じで、本当に単に起こすためだけにかけてきたという感じだった。どうやら彼女の方も眠い中で電話をしてきてくれたようなのだ。ともかく私たちは1分間の会話をして、そしてシステムが自動的に回線を切断した。

起こしてもらうのは受け身な立場だが、起こす側に回るのはなかなか勇気がいる。しかしともかくやってみることとした。そして繋がったのはアメリカ人男性だった。相手はともかく陽気な人だった。「起きる時間ですよ」と、丁寧に伝えてみた。返事は「どうもありがとう!」だったが、どうやら彼は既に目覚めてからしばらく経っているような様子だった。ともかくも、やり方だけはわかった。

そうした経験を踏まえて、3度目に繋がったのがアイルランド人女性であったという次第だ。相手は22歳で、WakieおよびSleepheadの双方の役割でWakieを何度か使ってみているとのことだった。今回は、自らがジャーナリストであることを明かしていろいろと尋ねてみた。相手の女性曰く、このサービスを使うのは愉快で、目覚ましチャット以外にもボイスメールなども楽しいのだと話していた(Wakieのコールに応答しない場合、電話は留守番電話モードとなるようになっている)。また、匿名での繋がりをうたっていながらも、何か盲点をついて困らせられることはないかとも尋ねてみたが、どうやらそれもないとのことだった。Wakieのコミュニティは非常にフレンドリーであると話していた。

そうした会話をした後、利用者同士で会話することのできるフォーラムに「Natalie」から投稿があった。曰く「イギリスのジャーナリストの人へ」とのこと。まさにそのように名乗った私(あるいはたまたま同様な名乗りをした人がいるのかもしれない)からの返信を求めるものであるのだろう。こうしたフォーラム機能は、このサービスの発展可能性を示すものだろうと思う。

ちなみに有料の「プレミアム」オプションも用意されていて、これに登録すると会話時間を5分間に延長することができる。また、繋がる相手のジェンダーを指定したり、また会話の後に、相手が公開しているプロフィールをチェックすることができるようになっている。

「インテリジェントな自動メッセージ機能の実装も考えています。たとえば必要な地域の天気予報や、業界ニュース、あるいは他に気になる情報を目覚ましメッセージとして利用することができるようになるのです」とAdjamianは話してくれた。「また、セレブ音声によるモーニングコールというのにも商業的可能性があるでしょう。好きなアイドルのメッセージをアラーム音声にセットすることができるわけです。事前に何通りかのメッセージを用意しておけば、毎日違ったメッセージで目覚めることもできるようになります。セレブの人が、SNSでWakieのサービスを紹介してくれるかもしれません。そこで生じる利益を折半していくというビジネスモデルも考えられると思うのです」とのことだった。

Featured Image: Wakie

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(翻訳:Maeda, H


投稿者:

TechCrunch Japan

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