世界への進出、どうやるの? Facebook、C Channel、メルカリそれぞれの戦略

3月16日から17日にかけて福岡県・博多で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Spring in Fukuoka」。初日のセッション「インターネットビジネス、グローバルでの戦い方」にはフェイスブックジャパン代表取締役の長谷川晋氏、C Channel代表取締役社長の森川亮氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏が登壇。グリーの田中良和氏がモデレートする中、それぞれの世界戦略を買った。

メルカリの世界進出の理由、「ロマンの部分が大きい」

田中氏はまず、「スタートアップが海外進出をする理由」について登壇者に尋ねる。

今日まさにイギリスでサービスをローンチしたばかりのメルカリだが、最初に米国への進出をしている。山田氏は当時を振り返り、「ECのGMV(総流通総額)は10倍。米国で成功できれば世界でも成功できると思っている。だがロマンの部分のほうが大きい。せっかくインターネットのビジネスで世界中繋がっているのだから、大きな市場でいいサービスを作って全世界でやりたいな、と」と振り返る。当時、直接的な競合も居ない状況であり、海外進出のチャンスとも考えたという。「(競合がない方が)可能性があるんじゃないか。でもホームラン狙いのようにビジネスをやっているところがある。当然日本でうまくいったからといって米国やヨーロッパでうまくいく保証はない。でもとれたらでかいよねと」

テレビ局でのビジネス経験もある森川氏。C Channelについて「日本発のメディアブランドを作りたいな、と思った。僕たちのターゲットは若い女性なので、日本だとそれほど多くなかった」と振り返る。現在はタイや台湾、インドネシアに進出するC Channel。月間再生は現在6億6000万回で、そのうち5億回以上は海外なのだという。アジア進出の理由は、競合不在(まだYouTubeが強く、一方では分散型が出なくライブ配信のようなコンテンツが流行している)であり、前職のLINEでの経験も生かせると考えたからだそうだ。

積極的にグローバル展開を進めるFacebook。中でもユーザー数の伸び、ビジネスのスケールを考慮してもアジア圏、特にモバイル、動画の領域は注目だと説明する。

とはいえFacebookは一度モバイルで大失敗しているのだそう。2012年頃、当時はデスクトップからのアクセスが圧倒的だったため、モバイルシフトが大きく遅れてしまったのだと語る。現在ではMAUの90%、売上の80%がモバイルからのものになっているとした。

世界展開するプロダクト、どう作る?

世界進出を進める3社。では本国と海外ではどういったチーム作りをしているのか。メルカリは協働創業者の石塚氏が元RockYouの創業者であり、シリコンバレーのカルチャーにも精通していると言うことで、オペレーションまわりは100%現地のアメリカ人が担当しているそう。

一方で開発はほとんど日本人が担当しているそうだ。もともとは国別に作っていたプロダクトを「グローバル版」として米国の品質に寄せた経験があるそうだ。「ただ去年くらいから米国でプロダクトマネージャーやデザイナーを取り始めている。また日本からも赴任する人も増やし、そこで融合することを試している。そうしないとグローバルなプロダクト作りはできない」(山田氏)。

山田氏はまた、トヨタやソニー、ホンダ、任天堂といった日本企業が過去にどうやって海外で成功してきたかを、「日本は圧倒的に強い技術力があってプロダクト出てくるから、ローカルもマーケティングや販売戦略を立てられた」と説明。日本の強みを持ってしてプロダクトを作り、現地とコミュニケーションを取っているとした。

これに対して、田中氏は「日本の強さ」を作るのが難しくなってきたのではないかと語る。山田氏もそれに同意した上で、「シリコンバレーから新しいテクノロジーがやってくる中で、技術というより、『こういうモノがいいんじゃない?』という強い信念がないといけない」とした。

一方で森川氏が話したところによると、C Channelは、女性向けコンテンツということで現地のカルチャーを理解していることも重要だそうで、コンテンツに関しては現地での制作をおこなっているという。

長谷川氏はFacebookというグローバル企業、またグローバルのマーケティングのために使われるプラットフォームという視点で世界進出について語る。まずグローバル企業としての視点だが、Facebookは本社というよりは、世界に複数ある拠点でサービスを開発しており、一方でビジネス面に関しては、各国に権限委譲する文化なのだそうだ。

一方でプラットフォーマーとして、「米国も1つの国として進出を考えるのは必ずしも正解ではない」と説明する。米国と言っても地域や人種、年齢、性別もさまざま。いくつもあるクラスタのどこに徹底するのかを考えるのが大事だという。またその進出方法にしても、現地チームを作るかどうかだけが大事な訳ではないと語る。「ユーザーインサイトはPC1台で分かる。プロダクトの作り込み、動画の作り込みは現地でやって、マーケティングやブランディングは本社でやる、ということもできるようになってきた」(長谷川氏)

では具体的にどうやって世界に進出すべきなのか。田中氏はFacebookやTwitterといったグローバルサービスを例に、世界進出の鍵になるのは、日本発のプラットフォームを作ることではないかと登壇者に問う。

山田氏もこれに同意した上で、「2年半米国でサービスをやって、やはり経験によって得られるモノもかなりある」と語った。「海外で五里霧中という中で進んでいると、『こういうことなんだ』とか『こうことはやっちゃいけないんだ』と考え、いつの間にか高いレベルで戦えるようになっている」(山田氏)。

森川氏は「原則から言うと、現地の人がモノを作る」ということが大事だと語る。今はコンテンツでもさまざまなパターンが存在しているが、それはやがて成熟してくる。その中で何が大事なのか、差別化要素がどこにあるかを考えていかなければいけないと。自動車や家電メーカーが世界進出した時代は日本の技術が武器であったが、これからは技術だけで勝てる世界ではない。インターネットのビジネスも、よっぽどのものでないかぎり、コンテンツやサービスのデザインが重要だという。数字と感性、両方を見て、現地に根付いたコンテンツを徹底的に作れるチームが大事だとした。

世界進出、いくらかかる?

このあとは会場との質疑が行われたが、興味深かったのは「グローバル展開のためのお金のかけ方」というもの。

山田氏はメルカリについて「日本で収益も立ちはじめて、調達もグローバル進出に理解あるところからなので、お金をかけやすい状況」だとした上で、「市場がデカいということは、市場を取るためにもお金がかかるということ。戦略的にやらないとお金が尽きちゃう。普通にやるなら数十億円は必要。最低でも月1億円は欲しいと思うので」と説明。

森川氏も「あればあるだけいい」とコメント。たとえ話として、中国では1つサービスがローンチすると、80社くらい競合が出てくると説明。そこで勝つ方法というのは、「最後までやること」つまりお金を調達してやりきることだと聞いたと語った。「だから(C Channelは)真っ向からぶつかるのでなく、小さい点を取っていく。アジアで言うと、国ごとに押さえていくというやり方もある」(森川氏)

長谷川氏はまた別の視点で回答した。「2人がスケールも大きい話をしているが、そういう話ばかりではない。例えばドイツで家族経営の家具の会社があった。息子さんが家具の良さを伝えて(筆者注:Facebook Adの事例と思われる)、結果ビジネスが順調になって海外含めて5店舗くらいになった。必ずしもスケールを大きくしないとグローバルにいけないわけではない。そこは会社のスタンスとやりたいことで違うと思う」(長谷川氏)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。