中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に

人々が1週間の旧正月休暇を迎える準備をしていた中国では、現地時間2月8日夜、数千人におよぶユーザーがに突然Clubhouse(クラブハウス)にアクセスできなくなったことに気づいた。WeChatグループ内では、Clubhouseのユーザーが慌てて状況を報告し、最新のライブオーディオアプリにまたアクセスする方法を求めて助け合おうとした。

ドロップイン音声チャットのスタートアップClubhouseは、このところ中国で急速に勢いを増しており、早い段階から多くのユーザーがさまざまなトピックについての会話をしていた。しかしこのアプリは、他の米国ベースのアプリやサービスと同じ運命をたどる可能性が高いと思われる。それは、当局による禁止だ。2月8日の時点で、Clubhouseが直面しているのは確かにその状況だとTechCrunchは確認した。アプリのウェブサイトはブロックされていないままだが、中国のユーザーは、Clubhouseアプリにアクセスできなくなった。中国のインターネット規制に準拠するためにアプリのモデルをどれだけ変更しなければならないか考えると、アプリが同国に戻ってくる可能性は低い。

現地時間2月8日夜、中国のユーザーがClubhouseにアクセスしようとすると通知が出て、アクセスできなくなった

Clubhouseは本拠地の米国でも、効果的なモデレーションと虐待防止が実践されていないという批判に直面してきた。それを考えると、政府が不適切と判断した情報の拡散を抑止するための措置をより厳格に実施している中国の法に触れたことは、さほど驚くことではない。同アプリはまた、正式にApple(アップル)の中国のApp Storeを介して利用可能ではなかった。しかし、ユーザーが自分のデバイスにアプリをインストールしていた場合、アプリとそのオーディオルームへのアクセスは、これまではVPNを使用することなく自由に利用可能だった。

以前、TechCrunchが報じたように、同アプリは9月のグローバルローンチ後、中国のApp Storeでも短期間利用可能だったが、10月に削除された。その際Clubhouseがアプリを削除したのか、Appleが削除したのかは不明だ。

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中国で検閲を監視する団体であるGreatFire.orgのキャンペーンとアドボカシーディレクターであるBenjamin Ismail(ベンジャミン・イスマイル)氏はこう語っている。「これはAppleのやっていることではありませんが、彼らはおそらく板挟みの窮地を脱して喜んでいるんじゃないでしょうか。Appleの関与によるApp Storeからの削除から、当局によるサーバーのブロッキングへと議論が移りますから」。

Clubhouseは中国のApp Storeに掲載されていなかったため、中国本土からどれだけの人数がプラットフォームを利用していたのかは不明だ。中国ではタブー視されている1989年の親民主化運動「天安門 事件」を議論するルームでは、禁止前の2月8日の午後、参加者数が最大5000人に達した。同じトピックに焦点を当てた別のルームには、2000人以上のユーザーが集まった。

北京時間の2月8日午後7時頃には、ClubhouseのAPIがブロックされたとGreatfire.orgがTechCrunchに伝えた。一部のユーザーはWeChatグループ内で、中国の電話番号で検証コードを取得できなくなったと報告しており、障害のレベルに手がかりを加えている。中国の多くのユーザーは中国の電話番号を使ってサインアップしており、これは国から発行される実在のIDとリンクしているため、警察が彼らを特定するのが容易になる可能性がある。

過去2週間で、Clubhouseは中国本土のいくつかのコミュニティ内で人気が急上昇し、スタートアップ、投資、アカデミック、または海外体験のバックグラウンドを持つ人々などがそれに含まれていた。彼らの多くは、無料で政治的な議論がプラットフォーム上で頻繁に行われていることを考えると、同アプリは中国で長く続かないだろうと認識していた。「Clubhouseは中国でどのくらい続くのか」、または「Clubhouseを利用しているために、お茶を飲みましょうと誘われたことがあるか」というタイトルのClubhouseルームは、多くのユーザーを引きつけていた。「お茶を飲む」というのは、取り調べを受けるために警察に連行されることを意味する隠語だ。

禁止される数時間前、中国の国営新聞であるGlobal Timesは「Clubhouseは『言論の自由がある天国』ではないと中国本土のユーザーは語る」という記事を掲載し、このアプリを「反中国」コメントが盛り上がっているプラットフォームだと説明するユーザーの言葉を引用した。

TechCrunchが米国時間2月6日に報じたように、今回の禁止に先立つClubhouseの初期の成功は、すでにドロップイン音声SNSを中心に設計された多くの国産の代替アプリの誕生を促している。しかし、オリジナルのアプリ自体が国内でアクセスできなくなったのと同じ理由で、これらの似たような取り組みが、中国でのClubhouseの人気を再現するのは難しいかもしれない。

TechCrunchの得た情報によると、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)のようなグレート・ファイアウォール(GFW)の迂回ツールを使って、中国本土の一部のユーザーはClubhouseへのアクセスを取り戻すことに成功したという。一部の機能では、VPN経由でルームに入っている限り、VPNをオフにした状態でも音声を聞いたり話したりできるようになっている。TechCrunchは以前、米国と中国を拠点とするAgoraが、Clubhouseのライブオーディオインタラクションが利用するSDKを提供していると報じている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ClubhouseSNS中国

画像クレジット:Thomas Trutschel / Contributor

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(文:Darrell Etherington、Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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