中国のハードウェアメーカーたちが世界進出のためにクラウドファンディングを活用

ハイテク企業が密集している深圳の南山区で開催されたIndiegogo Chinaのイベント(画像クレジット:TechCrunch)

ここ数年、中国のハイテク企業たちは欧米市場で苦戦を強いられてきた。Huawei(ファーウェイ)とDJIは貿易制限の影響を受け、TikTok(ティックトック)とWeChat(ウィーチャット)は米国内でアプリが禁止される恐れがある。全体として国外に拠点を持つ中国企業たちは、地政学的緊張の高まりにますます警戒を強めている。

だがそんな中で、カリフォルニア州に本社を置くクラウドファンディングプラットフォームのIndiegogo(インディーゴーゴー)が、中国の消費財メーカーを対象に深圳(シンセン)でイベントを開催した。そのイベントでは、ポータブル発電機を製造するスタートアップから、53年の歴史を持つ家電大企業のMidea(ミデア)まで、さまざまな規模の企業が、Indiegogoの中国担当者が話す欧米の消費者へのアプローチ方法の説明に、熱心に耳を傾けていた。

部屋を埋めた起業家たちに対して、Indiegogo ChinaのジェネラルマネージャーであるLi Yongqin(リー・ヨンチェン)氏は「第1段階は、自分たちの声を世の中に届けることです。私たちはそれを成し遂げて来ました」と強く訴えた。「次は、勇気を持って潮目に乗り、世界中のユーザーに愛されるブランドを目指して挑戦することです」。

Mideaグループの海外eコマース事業を統括するChen Zhenrui(チェン・シェンルイ)氏は「クラウドファンディングは、消費者を理解するための極めて直接的な手段となります」という。IndiegogoやKickstarter(キックスターター)などのプラットフォームは、個人や組織が多くの人々からプロジェクト資金を調達する手段を提供する。ほとんどの場合、プロジェクト支援者は、資金を提供したプロジェクトから特典や謝礼を得ることができる。

Mideaは2020年、Indiegogo上で発売した新しいエアコンユニットのために150万ドル(約1億6000万円)を調達したが、2019年に同社が生み出した420億ドル(約4兆6000億円)の年間収益に比べれば、ほぼ無視できる金額だ。しかし、Indiegogo上での3600人の支援者からのサポートは、単なる実験以上の結果を示した。

わずか数週間でMideaは、窓枠にぴったりと収まって、騒音を遮断し、エネルギーを節約できるコンパクトなエアコンが、多くの米国の消費者を魅了することを学ぶことができたのだ。中国の他の老舗家電メーカーと同様に、Mideaも数十年前から輸出を行ってきた。

だが「これまでの海外ビジネスの大部分は、伝統的なB2Bによる輸出でした。世界に通用するブランドになるには、まだまだ遠いと思っています」とチェン氏はいう。

Mideaが初めてIndiegogoに登場したとき、キャンペーンページに「このプロジェクトは詐欺だ」というコメントを残したユーザーがいた。フォーチュン・グローバル500に選ばれた企業が、なぜIndiegogoに参加しているのかというのが理由だ。

チェン氏は当時を振り返って「そのときは何度かのやり取りを通して、お互いを知ることができました。結局そのユーザーは私たちを大いに応援してくれました」という。そしてMideaはIndiegogoの支援者たちから寄せられた何十もの提案を製品の改良に活かしたのだと付け加えた。

Indiegogo Chinaのゼネラルマネージャーであるリー・ヨンチェン氏は、会場に集まった起業家たちに、世界中のユーザーに愛されるブランドを開発するよう、強く呼びかけた(画像クレジット:TechCrunch)

中国の老舗メーカーが、クラウドファンディングに挑戦するケースがますます増えている。サウンドシステムのホワイトレーベルメーカーとして創業し、南部の沿岸都市アモイに拠点を置くPadmate(パッドメイト)が、Pamu(パム)という新しいイヤフォンブランドを立ち上げた。

PadmateのディレクターであるEdison Shen(エディソン・シェン)氏によれば、eコマースのような新しい小売チャネルによって旧来の流通業者が圧迫されているために、従来のような輸出は難しくなっているという。自身のブランドを作り、消費者に直接アプローチすることで、工場の利益率も向上する。Padmateは2018年にIndiegogoに参入し、ワイヤレスヘッドフォンのキャンペーンの1つでは660万ドル(約7億2000万円)以上を集めた。

Indiegogoに参加したプロジェクトのほとんどが、900万人が利用するそのクラウドファンディングサイトから、主流のプラットフォームへと歩みを進める、Amazon(アマゾン)へ出品し、Google(グーグル)やFacebook(フェイスブック)へ広告を掲載するのだ。こうした米国の大規模テック企業たちは、中国内では中核的なサービスを提供していないものの、Amazonのように中国にスタッフを常駐させたり、Facebookのように現地の広告代理店と仕事をしたりと、何らかの形で中国での事業展開を行っている。

Indiegogo自身は、5年前に中国の深圳にオフィスを開設した。Indiegogoのグローバル戦略担当ゼネラルマネージャーであるLu Li(ルー・リー)氏によれば、それ以降中国を拠点とするプロジェクトが、同プラットフォームを通じて3億ドル(約328億9000万円)以上の資金を調達しているという。中国は現在、同社で最も成長している市場であり、2020年に100万ドル(約1億1000万円)以上を調達したキャンペーンの40%以上を占めている。

IndiegogoのライバルであるKickstarterも、中国からのプロジェクトが急増し、2020年の調達額は過去最高の6050万ドル(約66億3000万円)に達した。ブルックリンに拠点を置く同社は、最近中国市場の調査に協力してくれる、深圳または隣接都市である香港の請負業者を探し始めた。

「ここ数年、クラウドファンディングのコツをつかんで、自社ブランドをグローバルに展開する中国企業が増えています。そのため(中国発の)『大ヒット』キャンペーンも増えています」とリー氏は指摘する。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Indiegogo中国クラウドファンディング

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(文:Rita Liao、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

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