中国のSNSで盛んな「自媒体」セルフメディアの独立系ニュースを当局が新ルールで抑制

中国では厳しいメディア規制が行われてきた歴史があるにもかかわらず、Tencent(テンセント)のWeChat(ウィーチャット、微信)やByteDance(バイトダンス)のToutiao(トウティァオ、今日頭条)のようなソーシャルメディアプラットフォームでは、組織化されていない個人メディアの産業が栄えている。これらのセルフパブリッシャーは、中国のネット用語では「We Media」(中国語では「自媒体」)と呼ばれ、市民ジャーナリストやコンテンツクリエイターの独立した力を表している。

一方で、セルフメディアの発信者は常に投稿内容に注意を払わなければならず、内容を違法または不適切と判断する検閲者のターゲットになる危険性がある。

彼らが扱うトピックは、ファッションや食べ物から、政治や時事問題まで多岐にわたる。自媒体の主要な行き先であるWeChatは、昨年7月に2000万人の「公開アカウント」を保有していることを示唆したが、これは個人がコンテンツを発信し、企業の場合は顧客にリーチするためのプラットフォームだ。2020年には3億6000万人のユーザーがWeChatの公開アカウントで発信された記事を読んだと、WeChat創業者のAllen Zhang(アレン・チャン)氏は最近明らかにした

中国のTwitterに相当するSina Weibo(新浪微博)は、長い間、市民ジャーナリストを引き付けてきた。新型コロナウィルス(COVID-19)の初期には何百万人もの中国のユーザーが、武漢での経験を記録した作家のFang Fang(方方)のようなアカウントから発信される事実を求めてWeiboに殺到した。

そして今、中国のインターネット規制の新たな展開が、中国の数千万人の自媒体、セルフパブリッシャーをさらに制限しようとしている。

中国のインターネット監視機関である中国サイバースペース管理局(Cyberspace Administration of China、CAC)が現地時間1月22日に発表した新規則(英文翻訳はこちら)によると、「国民にオンラインニュースサービスを提供する公開アカウントは、インターネットニュース情報許可証およびその他の関連メディアの認定を取得しなければならない」とのこと。

その後、WeChat、Baidu、Sohuなどのオンライン情報サービスは、新ルールの告知を開始した。「あなたのアカウントが関連する認定を欠いている場合は、政治、経済、軍事、外交情勢、その他の主要な時事問題に関するニュースの編集、報道、公表、コメントをしないように推奨いたします」とWeChatから送られた通知にはある

「WeChat公開アカウントプラットフォームは、ユーザーのみなさんに地球に優しく健全なオンライン環境を提供することを常に約束します」 とそのメッセージは付け加えている。

ニュース機関認定の要件は、ジャーナリストとしての役割を担ってきた独立系のソーシャルメディアパブリッシャー、特に政治を取材しているパブリッシャーにとっては弔いの鐘となるだろう。「公式の報道機関や、他に類を見ないリソースと背景を持つ組織でない限り、簡単に取得できるものではない」と、あるWeChatアカウントの自媒体パブリッシャーはTechCrunchに語った。

米中関係などのセンシティブな話題を避けるのは常に当たり前だが、プラットフォームごとに越えてはならない一線は微妙に異なると、金融に特化した自媒体パブリッシャーは語った。「時には自分で試してみる必要があるでしょうね」と、その人物はいう。

中国のニュース規制はインターネットの隅々にまで及んでおり、マイクロブログやライブストリーミングなどの新しいメディアの発展のスピードに、規制当局は常に追いつこうとしている。

2017年から2018年にかけて、サイバースペース管理局は合計761件の「インターネットニュースサービス」に報道許可を与えており、これらは合わせて、743のウェブサイト、563のアプリ、119のフォーラム、23のブログ、3つのマイクロブログ、2285の公開アカウント、1つのインスタントメッセンジャー、13のライブストリーミングサービスを運営していた。言い換えれば、これらのカテゴリーのインターネットサービスでは、ニュースライセンスを持たずに運営されている場合、ハードニュースは禁止ということになる。WeChatやWeiboのようなプラットフォーム運営者がどのようにこのルールを実施していくのか、注目されるところだ。

オンライン情報の監視を強化することは、誤報との戦いという面ではメリットがあるかもしれない。新規則はまた、フェイクニュースを根絶するために、クリエイターのブラックリストのようなメカニズムを設定することを事業者に求めている。しかし、この規制は全体的に中国の表現の自由に悪影響を及ぼす可能性があると、国際ジャーナリスト連盟(International Federation of Journalists、IFJ)は警告している

「曖昧に定義された新規則は、中国で『セルフメディア』が大流行し、ジャーナリストがそうしたプラットフォームを利用して、所属組織によって出版を止められた著作物を発表し始めていた中で施行されました」と、IFJは中央ヨーロッパ時間1月28日に発表した声明で述べている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:中国 SNS

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(文:Rita Liao、翻訳:Nakazato)

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TechCrunch Japan

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