中国Realmeはいかにしてわずか2年で5000万台ものスマホを販売したか

2018年に新しいスマートフォンブランドを立ち上げるというのは、すでに激しい競争が展開されている部門においてあまりに遅いように思える。しかしSky Li(スカイ・リ)氏は、18〜25才の消費者の多くが十分なサービスを提供されていないと確信していた。彼らは安価でクールなものを求めていた。

2018年5月にリ氏がRealme(リアルミー)を創業して数カ月後、同社は世界第2位のスマホ市場であるインドの大学のキャンパスでプロダクトの立ち上げイベントを実施した。自社の生産クルーを連れ込んで間に合わせのステージを作り、イベントを盛り上げるために地元のラッパーを招いた。

「私は驚きました。誰も座っておらず、お祭り、あるいは大規模なディスコパーティーのようでした」とRealmeの31才のマーケティング責任者Chase Xu(チェース・スー)氏は深センにある同社の本社で筆者に語った。

「それまで外国企業がキャンパス内に足を踏み入れたことはありませんでした。それが可能とは思っていなかったのです。なぜ大学がキャンパス内で立ち上げイベントを開催させるのでしょうか」。中国ブランドのシックな黒いジャケットを着込んだミニマリストのスー氏は熱意とプライドを漂わせながら詳しく述べた。

「Realmeはこのイベントのお陰で広く知られるようになりました。人々は、学生を巻き込んでいたことをかなりおもしろいと捉えました。プロダクトを立ち上げただけではなく、若々しく、華やかな姿勢を示しました」。

それから9四半期でRealmeは世界中でスマホ5000万台を出荷した。インドは最大のマーケットで、中国よりも大きい。2020年の出荷台数目標は2019年の目標の倍である5000万台だ。スー氏によると、この目標は「達成に近い」とのことだ。Realmeはいまや、世界で7番目に大きなスマホブランドで、調査会社CanalysによるとRealmeよりもずいぶん長くプロダクトを展開しているSamsung(サムスン)、Huawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)、Apple(アップル)、OPPO(オッポ)、Vivo(ビボ)に続く位置につけている。

Realmeはゼロから取り組んで成し遂げたわけではない。世界でも大手のスマホメーカー(VivoOPPO、OnePlusそしてRealme)を所有・展開している謎めいたBBKグループが後ろ盾となっているスマホブランドだ。

OPPOファミリー

OPPOの前副社長で海外事業の責任者だったSky Li氏は2018年、独立ブランドとしてRealmeを立ち上げるためにOPPOを辞めると発表した。これは2013年のOnePlus創業と似ている。今日ではRealme、OnePlus、そしてOppoすべて同じホールディング・グループに属している。BBK傘下にはVivoもいる。BBKは1998年に中国南部で電子辞書を販売する事業を開始し、それ以来ポートフォリオを拡充させてきた。

RealmeとOnePlusは独立して事業を展開している一方で、OPPOのサプライチェーンにアクセスできる。これはRealmeとOnePlusがさほど資産を持たなくても良いことになり、ひいてはコスト抑制につながる。

インドにあるRealmeのポップアップストア

「Realmeはアドバンテージを持っています。というのもOPPOとサプライチェーンを共有しているからです。我々はサプライエンドからいいリソースを得ることができ、世界の先を行き、手に入れるべきものを手にしています」とスー氏は話した。

例えば、RealmeはQualcomm(クアルコム)の新しいSnapdragon 865チップを入手し、端末に4つのカメラを搭載した最初の企業の1つだ。ただし、優先はいつも保証されているわけではない。なぜなら「1番になろうという競争が当社と他の企業の間で常に展開されているからです」とスー氏は認めた。「もちろんそれぞれのチームの研究・開発の進捗度合いにもよります」。

資産の軽量化戦略はまた、Realmeが比較的低価格で競争力のあるテクノロジーを提供できることを意味する。インドではRAM8GB、ストレージ128GBのスマホが1000人民元(約1万6000円)以下、ノッチスクリーンモデルは1500人民元(約2万4000円)以下だった。

Realmeは「グロースステージ」でマージンを増やすことについて心配していない、とスー氏は述べた。同社は「最初から黒字だった」。一方、同社は高価格のスマートテレビやイヤフォンなど数多くのIoTガジェットを発売している。

スマートフォンとIoTという戦略は確かに珍しいものではない。BBK傘下のブランドや、Xiaomi、ファーウェイも同様のビジョンを持っている。同じブランドからのスマホとスマートデバイスはうまく相互接続するエコシステムを構築する。これにより売上が増加し、お互いのためにデータを収集する。

スー氏によると、コストを抑える別の方法としては、費用がかかる屋外広告を避けることだという。同社はインフルエンサーと協業したり、キャンパスミュージックフェスティバルを開催したり、オンラインファンコミュニティをサポートしたりと、地味な口コミ販促を好む。この戦略は、自分が好むブランドとやりとりするのが好きでクリエイティブなプロセスの一部である若い世代にぴったりくるもののようだ。

かなり熱狂的なユーザーは時々、Realmeの次のプロダクトの外観はこのようにあるべきだと想像し、その鉛筆スケッチを添えてスー氏にメッセージを送る。「彼らは本当におもしろく素晴らしいアイデアを持っています。素晴らしい世代です」と同氏は述べた。

中国ブランドが世界に打って出る

ディワリ期間中のRealmeのイベント(画像クレジット:Realme)

RealmeインドのCEO、 Madhav Sheth(マドハブ・シェス)氏も同様にインドの若い消費者に崇拝されている。 Realmeの前の販売パートナーである同氏はRealme創業者のリー氏の目に留まった。スー氏によると、シェス氏は「英語を流暢に話さないにもかかわらずインドのマーケットをよく理解している」とのことだ。

「シェス氏はかなりカリスマ性があり、人前で話すのが大変上手です。彼は人々を興奮させる術を知っています」とスー氏は高く評価した。シェス氏は熱心なTwitter(ツイッター)ユーザーで、2018年春に利用を始めてから28万人のフォロワーを集めた。

インドが中国の影響力を懸念するのにともない、インド事業のトップとしての仕事は困難度が増している。インド政府は6月にTikTokや数十の中国アプリを国家安全保障上の懸念から禁止した。ほどなくしてインドはまた、中国からの投資を従来より厳しく審査するようにした。このほど両国の国境で緊張が走ったのに伴い、反中国の感情は高まった。

大きな困難にもかかわらず、Realmeのインドにおける成長は順調だ。調査会社Counterpointによると、第3四半期にRealmeは前四半期から4%成長し、インドでのマーケットシェアは10%で第4位につけている。

「第3四半期の初めは、反中国感情が中国ブランドの売上に影響を及ぼしました。しかし、そうした反中国感情は、消費者が購入時に異なるパラメーターを考慮するにつれて鎮ってきました」とCounterpointはレポートに書いた。

「もちろんインドと中国の紛争は望んでいるものではありません。国際関係の問題です。Realmeは政治に介入しません」とスー氏は保証した。「常に極端論者のユーザーがいます。我々ができることは、ファンベースを増やし、ユーザーが望むものを提供し、極端論者を放っておくことです」。

2021年にRealmeは欧州、ロシア、そして母国マーケットの中国でも拡大を加速させる。これらのマーケットはすでに大手スマホメーカーによって席巻されていることから至難の業となる。

タマネギにインスパイアされたRealmのモデル。有名な日本人デザイナー深澤直人氏によってデザインされた

世界中のZ世代が「クール」と捉えることに自社を関連づけようとするRealmeの取り組みの一部は、有名なデザイナーと協業することにある。スー氏の目は輝き、ボールを持っているかのように手を宙に浮かした。同氏は、Realme Xモデルのタマネギにインスパイアされた色とパターンを思いついた有名な日本人工業デザイナー深澤直人氏を真似ていた。

「午後の光が大きな窓を通って斜めに入ってきました。(深澤氏は)遊び心のある表情を私に向け、テーブル下からタマネギを取り出し、それが彼のインスピレーションだと私に語りました」とスー氏は回顧した。「深澤氏はタマネギをゆっくりと陽にかざしました。私はものが言えないほどびっくりしていました。静脈、ピンク色、黄金色、テクスチャ。とても美しいものでした。あなたはタマネギだとは思わないでしょう。工芸品だと思ったはずです」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Realme

画像クレジット:Campus concerts are a key strategy for Realme to attract young consumers in India / Photo:Realme

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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