人の動きや所在を体温で検知するButlrが介護など新市場の開拓を目指す

790万ドル(約8億7000万円)のシードラウンドで、Butlr Technologiesのリアルタイムで人を感知する技術の応用範囲が一層広がり、商用の不動産や小売業での利用以外に、現在元気に活動している高齢者の、転倒などの動きをモニターできるようになる。

Hyperplaneがこのラウンドをリードし、Founder CollectiveとUnion Labs、500 Startups、SOSV、E14 Fund、Tectonic Ventures、Scott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Chad Laurans(チャド・ローランズ)氏そしてSunny Vu(サニー・ヴ)氏らが参加した。

新たな財源確保の1年前には、このカリフォルニア州バーリンゲームの不動産テック企業は転換社債で120万ドル(約1億3000万円)を調達し、それも790万ドルに含まれている。同社は現在、別のプラットフォームを開発中であり、そのHeaticセンサーは人の体温を匿名で検知して、店舗や建物などの混雑度や入館人数、活動などを計測する(当初、不動産業界向けに販売してきたため不動産テック[proptech]と仮に呼んでいる)。

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共同創業者のHonghao Deng(ホンハオ・デン)氏とJiani Zeng(ジヤニ・ゼン)氏は、2019年にMITメディアラボからButlrをスピンアウトし、自分たちの技術を「空間のためのAlexa」と呼んだ。そのワイヤレスセンサーは毎秒5回体温由来の温度を測り、人の姿勢や睡眠の質そして体温を判定する。またそれらのデータがもたらす情報から、顧客はビル建築に関する意思決定や現在、建築中の建物に対して何かしらの判断をしたり、物理空間に何人収容できるかなどを計画したりする。

デン氏はTechCrunchに対し、同社は「ワイヤレスの測定と精度を両立させた」唯一の企業だ、と主張した。センサーがワイヤレスだとそれは手のひらに収まるし、設置場所を選ばず、バッテリーを入れてセットアップすると2年間は使える。Butlrはプライバシーの保護も完璧で、リプレイに際して顔は要らない。代わりに、その人の動き回る体温を追う。

「センサーはどんな環境でも使えます。それは見えてはいけないし、人が気にするようなものではいけません。そのため私たちの技術は、人間の尊厳を取り戻し、しかもユーザーのニーズを理解しています。これはこれまで誰にもできなかったことであり、スペースの使い方をリアルタイムで判断し、しかも展開も簡単です」とデン氏はいう。

最小限のキットは880ドル(約9万7000円)からで、同社ウェブサイトで購入できる。空間設計のソフトウェアが含まれているため、センサーの有効範囲を最大にするにはそれらをどこに置けばよいかも簡単に決めることができる。

Butlr Technologiesの動作とその検知のシミュレーション(画像クレジット:Butlr Technologies)

今回の資金は、APIの高度化や、空間インテリジェンスへの爆発的な需要への対応がといった同社の市場拡大と技術開発に充てられる。2020年の同社は数十万台のセンサーを販売し、売上高は10倍に伸びた。デン氏によると、新型コロナウイルスの終息にともない職場への回帰が増えれば、この成長はさらに続くだろうという。

Butlrは最初は不動産と小売業向けに販売してきたが、デン氏は、交通渋滞の検出や介護施設などのユースケースも予見している。どちらの場合も、問題の早期検出が事故の予防に役立つ。たとえば後者では、高齢者の転倒危険カ所の発見だ。

「介護方面の需要はとても大きい。今どこに誰がいるかを常時モニターして、知っていなければならないからです。また、体調が悪い人を早めに見つけることができます」とデン氏はいう。

Butlrは個体の熱信号を送信するので、動きがおかしい人などを見つけることができる。これまでの患者モニタリングシステムでは、映像がリアルタイムとは限らないので数分の遅れが生じていたとデン氏は主張する。

また既存の方法ではウェアラブルや健康バンドを利用するので、充電が必要であり、施設でも家庭でも高齢者には装着が難しい。またButlrは追跡にカメラを使わないため、個人の尊厳が保たれるとゼン氏は主張する。

Founder CollectiveのパートナーであるEric Paley(エリック・ペイリー)氏によると、彼がButlrを気に入っているのは「屋内検知技術の最終結論」であり、それが極めて単純だからだ。

彼は他の製品も見てきたが、設置に専門の電気技術者が必要など、一般人には使いづらいものが多かった。それに対してButlrは、センサーを1カ所に取り付けたら数年間何もしなくてよい「それが大きい」とペイリー氏はいう。

「彼らのアーリーステージの実績はすばらしいものです。またButlrの技術は、応用範囲が広い。だから、いろいろな業界から引き合いがあります。どこから売っていくべきか、いつも同社と議論しています。APIの公開で、市場はさらに広がるだろう」とペイリー氏は語る。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Butlr Technologies資金調達センサー

画像クレジット:Butlr

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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