人はなぜ止めどなく悲劇をリツイートするのか?

被害者と遺族に最大限の敬意を表して、なぜ人々は悪いニュースを広めたがるのかを考えてみたい。爆発や災害が起こるたび、われわれは先を争って起きたことを人に伝えようとする。リアルタイムにニュースを伝えるソーシャルメディアの力をわれわれは知っている。それはわれわれに同情心を表現させてくれると同時に、恐怖や誤った情報も広げる。こうした情報発信が、どんな時あるいはそもそも役立っているのかを考える時期が来ている。

必要としている人々に正確な情報を伝えることは重要だ。しかし、炎上する機体や破壊された都市を伝えるリツイートの中で、それを達成しているものがいくつあるだろうか。

もしその場に居合わせれば、何を見たかを言う。友達に自分の無事を知らせ、事実確認を行う報道機関が現場の話を繋ぎ合わせるのを助ける。

もし未だに危険があなら、危険にさらされている人々に伝える必要がある。工場火災が近隣に有毒ガスをまき散らしているのか、ハリケーンは突然方向を変えるのか、武装した容疑者が逃走中なのか。、危害の起きる地域に多くのフォロワーを持つ人なら、ツイートが人々を救うかもしれない。

そして、何がニュースでシェアする価値があると考えるかは、誰もが持つ権利だ。

しかし、気配りは必要だ。

われわれを脳は、今の時代やわれわれが作った驚くほど強力な情報伝達手段に慣れていない。数千年前は文字通りの口コミだけだった。何か悪いことが起きていると聞いたなら、たぶんそれは自分に影響することだろう。「剣歯虎がやってくるぞ! 走れ!」「その水を飲むな、毒だ」。

おそらくわれわれは、この情報をできるだけ遠く、広く、速く、大声で知らせる本能を養ってきた。それが部族に役立つからだ。しかし、ツールがないのでメッセージは必要以上に広まることがなかった。

今は全く違う。直面する脅威は、われわれのテクノロジーほど早く拡大しない。数十、数百、数千人にとっての危険が、瞬時にして数百万人に伝わる。ニュースを発信する障壁はワンクリックにまで下がった。われわれがこれほど悲劇をリツイートしたがるのは、人を気にかけ、同情を感じ、何か役に立ちたいと思うわれわれの本質によるのかもしれない。しかし、悲報を速く増幅しすぎると、それ自身がリスクを引き起こす。

十分客観的に見て、早すぎるリツイートは不正確な情報を流布しやすい。つい先ほど、アシアナ機がサンフランシスコ空港で衝突し、ある目撃者は飛行機が横転し、怪我はずっとひどくなるに違いないと思ったと話した。しかし、横転したことを確認した者はおらず両翼とも装着されていたが、その情報はすでに数百回数千回リツイートされていた。ニュータウンでは、誤って学校内射撃犯とされたライアン・ランザがデジタル集団リンチにあったが、真犯人は弟だった。そしてボストンでは、人々が殺されたという誤報からリツイートのたびに被害者に1ドルが贈られるというニセキャンペーンまで、誤情報が氾濫した

恐怖による負の効果もある。商用機による移動は実際には驚くほど安全だ。死亡事故は稀で、米国内で走行距離1億マイル当たりの死亡者が1.27人の自動車より、ほほ無限に安全だ。しかし、リツイートされた墜落機の写真は別のメッセージを伝える ― 飛行機は危険。暗黙の誤情報は、経済を損うだけでなく、もっと危険な道路へと人々を駆り立てる。

テロリストにとって主目的に一つは注目を集めることであり、ソーシャルメディアはそれを提供する。彼らの起こした破壊と悲痛を無限にリツイートすることが、実は彼らの攻撃をより効果的にしているかもしれない。

そしてより抽象的なレベルでは、われわれは互いに現実から気をそらせるリスクを負っている。それぞれの命、貢献、さらには話題にしている悲劇の被害者を救う能力まで損っている可能性がある。

ソーシャルメディアを善用できる時は、そうすべきだ。信頼できる救援団体への寄付の呼びかけや、ボランティアに関する情報。必要な時に人々に真の危険を知らせること。1対多のメディアだと情報が広がるすぎる時は、プライベート・メッセージングを使うべきだ。全員に恐怖を押しつける必要はない。

今、われわれは世界レベルのやじ馬になっている。ショックと悲しみの合唱を切望するあまり、良いニュースが無視される。世界が否応なく直面する問題を、単にオウム返しにするか、それとも自らの声でそれを解決しようとするかの選択がわれわれ一人一人にはある。ツイートの前に考えてみよう。

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(翻訳:Nob Takahashi)


投稿者:

TechCrunch Japan

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