人助けプラットフォームGive InKindがプレシード投資で1.6億円調達

困っている友だちをネットを通じて助けるのは、意外なほど難しい。お金を渡すのは簡単だが、本当に必要なものはお金じゃなかったりもする。そこで、Give InKind(ギブ・インカインド)は、お金を渡すよりも、もっといろいろなことができるプラットフォームを目指している。とても自然な発想のため、同社はシアトルの投資家たちから目標の3倍にあたる150万ドル(約1億6000万円)を調達できた。

同社は、Female Founders Alliance(女性創業者連盟)が主催するReady, Set, Raise(レディー・セット・レイズ)アクセラレーターに参加が認められ、そのデモデーに、私は創設者Laura Malcolm(ローラ・マルコム)氏に会えた。

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マルコム氏が解決を目指しているのは、本当に困っているときは資金調達サイトを立ち上げる気力もなく、しかもその苦境を乗り越えるのに必要なものはお金ではない、という単純な問題だ。マルコム氏自身も、そんな体験をしている。個人的な悲劇に見舞われたとき、周囲の人から助けてもらうための手段が整っていないことを痛感したのだ。

「全国の友だちや家族が私を助けてくれようとしましたが、そこで使えるツールは時代遅れで、私たちの問題を解決できませんでした」と彼女は説明してくれた。「必要な助けをすべてひとつにまとめてくれる場所がないのです。食べ物の差し入れ、子どもの学校の送迎、Instacart(買い物と配達のサービス)の無料券、Lyftのクレジットなどです。ひとつとして同じ状況はありえません。すべてを一箇所にまとめておいて、誰かが『お手伝いできませんか?』と申し出てくれたときに役立つような場所を作ろうとした人もいませんでした」。

Give InKindの目的は、人助けのための豊富な選択肢を提供することにある。もちろん、現金を寄付することもできるが、その欲しいものリストにあるアイテムを購入したり、配達を手配したり、紙おむつやギフトボックスなどの援助物資の定期配達を設定したり、専用のカレンダーに人的支援が可能な日時を書き入れたりもできる。

すべては中心的なプロフィール・ページに示される。このページは、サービスを受ける本人が自分で作ることは滅多にないと、マルコム氏は話していた。

「ページの9割が、他の人が作ったものです。すべての人が苦境に陥っているということではなく、誰かが困っていることを知って、何か力になれることはないかと気にしている人が大半です」と彼女は言う。「なのでこれは、困っている人を集めるものではなく、人助けの方法を知りたい人たちの問題を解決するためのものなのです」。

まさにその部分に私は共感した。本当に苦しんでいる人にお金を寄付するのは、なんとも事務的で心がこもっていないと感じていたからだ。個人的に力を貸せるのが理想だが、他の街に住んでいて体の自由が利かなくなった友人が、犬の散歩を手伝ってくれる人を探していたとしたらどうだろう。ギブ・インカイドは、まさにそうした悩みを表に出して、リンク(たとえば犬の世話を代行してくれるサービスRoverなど)や関連する情報を提供する。

「サイトで行われているのは、食事や手伝いの手配など、自分で自分のことをする活動が大半です。日時の調整用にカレンダー・ビューがありますが、サイトでもっとも多く利用されている場所でもあります。およそ70%がカレンダーで、残りは(インスタカートやウーバーなどの)全国的なサービスに関するものです」とマルコム氏。

地域限定のサービス(全国展開していない掃除サービスなど)も計画には含まれているが、ご想像のとおり、それらをひとつにまとめるには相当なフットワークが必要になるため、実現には時間がかかる。

現在このサイトは、完全な会員制になっている。援助をしたい人は、カレンダーに自分のスケジュールを記入したり、プロフィールの編集を手伝うといった作業をしたいときは、アカウントを作らなければならない。すると、商品サイトに移動して取り引きを行うことができる。同社では、支援物資などのサイト上での購入を実験しているが、本当に価値のあるもの以外は、中心的な取り引きになることはない。

拡張の計画は、このサイトの今ある有機的な成長パターンを確実にするためのものだ。作られたページは、どれも新しいユーザーや訪問者を惹きつけている。そのユーザーたちは、数年後が経過した後でも、新しいページを作り始める可能性がとても高い。そこに改良を加えながらマーケティングにも動き回るマルコム氏は、急速に成長できると確信し、GoFundMe(ゴーファンドミー)などの大手の寄付サービスとの大きな規模での提携できる日も近いと考えている。

位置について、よーい、そして期待以上の資金調達

私がGive InKindに注意を引かれたのは、シアトルの女性創業者連盟を通じてのことだった。少し前に、連盟はデモナイトを開催し、いくつもの企業と、当然のことながらその創設者にスポットを当てて紹介していた。いくつかの企業は、女性の体に合わせた作業着が入手困難であることなど、女性を強く意識した問題に特化していたが、デモナイトの目的は、本当に価値の高い企業を掘り出すことであり、その創業者がたまたま女性というだけの話だ。

「Ready, Set, Raiseは、高い可能性を持つ不当に評価が低い投資機会を発掘し、ベンチャー投資コミュニティーが理解できる形で紹介することを目的に設立されました」と連盟の創設者Leslie Feinzaig(レスリー・フェインゼイグ)氏は言う。「私たちの最新のメンバー調査の結果は、女性創業者が調達できた資金は低めだが改善しようと頑張っている、という所見と一致しています。Give InKindは、その完璧な実例です。彼らは3年間、自己資金で頑張った末、プロダクトマーケットフィットを見つけ、月20パーセントの成長率を示しているにも関わらず、いまだに投資家の共感を得るのに苦労していました」

しかし、プレゼンテーションの後、マルコム氏の会社は表彰され、Trilogy Ventures(トリロジー・ベンチャーズ)から10万ドル(約1080万円)の投資を受け取った。それ以前から50万ドル(約5400万円)を目標に資金調達をしていたのだが、たちまち総額に制限をかけなければならない事態になった。予想外の、しかしとても嬉しい150万ドル(約1億6000万円)が集まったのだ。このラウンドの最終参加者には、Madrona Venture Group(マドローナ・ベンチャー・グループ)、SeaChange Fund(シーチェンジ・ファンド)、Keeler Investments(キーラー・インベストメンツ)、FAM Fund(ファム・ファンド)、Grubstakes(グラブステークス)、X Factor Ventures(エックス・ファクター・ベンチャーズ)が名を連ねている。

これは、正当性が認められたことなのだと私は推測した。「最高の正当化です」と彼女も同意した。「創設者の旅は長く厳しいものです。しかも、女性創業者やインパクトのある企業にはどうしても分が悪い。シアトルでは、消費者の力も強くないのです。私たちは、このラウンドを早々に決められたことで、分の悪さを全面的にひっくり返しました。シアトルがいいところを見せてくれました」。

彼女はこのアクセラレーターを「驚くほどユニーク」だと説明している。「女性創業者を、投資家、メンター、専門家と結びつけることに専念しています」。「私たちは、私のモデルを上下逆さまにして何もかもを振り落とすことに、とても長い時間を費やしました。結果としてそれは、思っていたよりもずっと正当化できることでした。私たちは事業も変えず、製品も変えず、立ち位置とほんの少し変えただけです」と彼女は話す。「指導者やメンターとのつながりを持つことと、魅力的な方法で事業を紹介する方法を組み合わせると、こうした機会を持たない人たちにとって、それがいかに遠い存在であるかを思い知らされます。私はGive InKindを3年間、紙袋に入れて持ち歩いていました。そこに彼らが鈴を付けてくれたのです」。

フェインゼイグ氏は、その申請方法と指導の質(1対1の講座が多い)のために、このアクセラレーターから巣立つ企業の質が高いと説明している。第2期のその他の企業はここでわかる。そしてもちろん、助けを必要とするあなた自身、あるいはあなたの知り合いのために、Give InKindも頑張っている

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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