人間が行うアプリのテスト手順を自動スクリプト化するtestRigor

人間のQAテスターが開発中のアプリをテストする際に行う一連のアクションを平易な言葉で入力すると、自動テストスクリプトができ上がる。Y Combinator(Yコンビネーター)の2021年夏のコホートメンバーであるtestRigor(テストリガー)という会社が実現したのは、まさにそういうことだ。このアーリーステージのスタートアップは米国時間8月24日、410万ドル(約4億5000万円)のシード資金調達ラウンドを実施したと発表した。

今回のラウンドに参加した投資家には、FlashPoint VC(フラッシュポイントVC)、Y Combinator、PTV、Phystech Ventures(フィズテック・ベンチャーズ)、および複数の個人が含まれる。同社はこれまでに、30万ドル(約3300万円)のエンジェル資金調達と70万ドル(約7700万円)のプレシード資金調達を行っているので、現時点までに調達した資金の総額は510万ドル(約5億6000万円)となっている。

testRigorの優れているところは「スタートボタンをクリック」「ストップボタンをクリック」といった一連の手順を入力すると、testRigorがそれをコード化し、自動的にスクリプトを実行して、アプリケーションの合否を報せてくれることだ。

「(testRigorは)指示した手順を実行し、簡潔に合否を判定します。もし不合格になった場合は、何が問題だったのかを教えてくれるので、JIRA(ジラ)のチケットを作成してその場で修正したり、問題を再現するための手順を示すことができます。(中略)そしてこれが実際に、私たちの最も価値を提供するところなのです」と、共同設立者でCEOのArtem Golubev(アルテム・ゴルベフ)氏は説明する。

このプロセスをさらにシンプルにするために、同社はテストの手順を記録するためのChromeの拡張機能を作成した。また、人々がどのようにアプリを使用しているかを判断する分析結果に基づいて、自動的にテストを作成し、最も人気のある機能をテストすることもできる。

後者の機能は「行動テスト」と呼ばれている。「私たちは言葉通り、分析スクリプトを導入しており、エンドユーザーが実際の環境でどのようにアプリケーションを使用しているかに基づいて、システムが自動的に(テストを)作成します」と、ゴルベフ氏は述べている。

testRigorは現在、Netflix(ネットフリックス)をはじめ、フォーチュン500社を含む約100社の顧客を抱えており、22人の従業員が働いている。そのうち12人は2021年採用された。ゴルベフ氏は年内に30人にまで増やしたいと考えている。同氏によれば、雇用には苦心しており、Y Combinatorに参加した理由の1つは、その分野で支援を得るためだったという。

「雇用という問題を解決するために私は走り回っているのですが、YCがこの分野で役立つということを知りました。当社の最大の問題は、すぐに採用できないことです」と、ゴルベフ氏はいう。その点では、YCに参加したことが確かに役に立つと、同氏は考えている。

採用難に直面しているにもかかわらず、ゴルベフ氏は「多様な人材を採用する必要がある」と考えており、22人の従業員のうち約40%が女性であるとのこと。多くの企業が偏見のために良い人材を逃していると、同氏は考えているという。「私が見てきたのは、人々が非常に大きな偏見を持っているために、自分の思い描くプロフィールに一致しない非常に優秀な人材を見逃しているということです」と、ゴルベフ氏は語る。

ゴルベフ氏は、新型コロナウイルス流行前にtestRigorをリモート会社として起ち上げ、今回のような資金調達ができたらオフィスを開設しようと考えていたが、今は100%リモート会社になることを決意しており、完全リモート企業であるGitLab(ギットラブ)を、会社を成長させる上でのモデルとして見ているという。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

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TechCrunch Japan

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