人間の腸内細菌の個体数は100兆, そのDNA配列を調べて個人的な食生活アドバイスをくれるWellBiome

人間の腸の中で100兆のバクテリアが生きているらしい。そして指紋と同じように、人の“マイクロバイオーム(microbiome, 体内微生物相)”は一人一人異なる。またそれは、体重やエネルギーレベルや全体的な健康に影響を与えているので、健康的なライフスタイルの鍵を握っているかもしれない、と言われている。

エストニアの保健医療スタートアップWellBiomeは、このような理論に立脚して、遺伝子診断の23andmeと、一般的な定量的健康サービスの中間を行こうとしている。そのサービスは腸のバクテリアのDNA配列を調べ、個人々々に合った食生活アドバイスを行う。

つまりWellBiomeが取り組もうとしているのは、人の体質等は個人によってまちまちなのに、栄養相談などでは万人向けと称する一般的なアドバイスしか与えられない、という問題の解決だ。

WellBiomeの協同ファウンダHenri Raskaは、次のように説明する: “人間は一人一人完全にユニークなのに、これまでの栄養相談は非常に一般的だったり、“平均的な人間”という存在しない人間を対象にしている。だから、自分に合った食生活を見つける方法は、試行錯誤しかない。それに対しうちの価値提案は、きわめて個人化された科学的なアプローチだ”。

その“科学的なアプローチ”とは、129ユーロでWellBiomeの検査キットを購入し、自分の便のサンプルを採取して同社に送り、分析してもらうことだ。

すると、同社に腸のバクテリアのDNA配列を調べてもらえる。そしてそれにより、あなたのマイクロバイオームの組成が分かる。通常この種の検査の料金は、目の玉が飛び出るほど高い。

それからWellBiomeは、これまでの世界中の大量の研究データや臨床データなどを基に組み立てた独自のアルゴリズムにより、個人化されたレポートと食事アドバイスを作り出す。

その一例としてWellBiomeはあなたに、もっと豆類と全粒穀類を多く食べて腸内のビフィズス菌を増やし、消化をより効率的にしなさい、とアドバイスするかもしれない。

一般化して言うと、重要なのは腸内の有益菌が増えるような食生活をすることによって、食品からより多くのエネルギーが得られるようにし、また有害菌の増殖を抑止することだ。

“われわれが解決しようとしている問題は、健康と体重とエネルギーレベルと長寿にかかわる問題だ”、とRaskaは言う。

彼ともう一人の協同ファウンダLiis Looritsはともに分子微生物学を専攻し、とくにバイオガスやミルク、パン、チーズなどの応用分野を研究してきた。その後、国内のスタートアップ育成事業Startup Garageに参加する機会があり、それを機にこれまでの2年間、自分たちが培ってきた方法を人間の腸内の研究に応用してきた。

“われわれのように、腸内のバクテリアのDNA配列を調べて、きわめて個人化された食生活指導を行うというサービスは、全世界的にもこれまでなかったと思う”、とRaskaは述べる。

たしかに彼の言うとおり、同社の競合他社を見つけようとすると難しいが、uBiomeはクラウドソーシングとクラウドファンディングを併用してマイクロバイオーム関連のデータを集め、またユーザに腸内細菌のDNAを調べるためのキットを提供している。

この記事のヒント*をくれた本誌TechCrunchの同僚ライターNatasha Lomasにありがとう。〔*: 日本語訳の不可能なダジャレ。関心のある方は、原文第二パラグラフの’stools’にご注目を。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。