今が資金調達のアプローチを再考する絶好の機会かもしれない

多くの創業者は新しい資金調達ラウンドで新年をスタートする。昨年のデータをみると、VC(ベンチャーキャピタル)が最も多くピッチ資料をレビューしたのは3月、10月、11月だった。

だが現在、新型コロナウイルスのパンデミックが多くの産業の動きを止めている。資金調達に関しては次の2四半期に影響が及ぶという警告も出ている。

当社(DocSend)は2020 DocSend Startup Indexのデータをレビューし、Pitch Deck Interest Metric(ピッチ資料への関心度合いの指標)を継続的に記録している。サンフランシスコでは外出禁止令が出ていて、多くのVCが社内プロセスを「オールリモート」の世界にあわせて変えるよう急ぐ中、ピッチ資料への関心度合いは2019年の同じ週と比べて11.6%低下した。これまで関心は低下しているものの、依然多くの動きが観察されるため、VCは引き続きピッチ資料を読んでいる模様だ。当社は今後数週間Pitch Deck Interest Metricをモニターしていく。

もしあなたの会社がアーリーステージのスタートアップで、資金調達活動中か今後予定している場合、投資家と会う前に資金調達に向け準備できることがある。

The Pitch Deck Interest Metricは、2019年の同じ週と比べて11.6%下落した

投資家の期待は変化しつつあり、その傾向は続く

あなたが資金調達ラウンドを始めようとしているなら、50人以上の投資家に連絡し、20〜30回のミーティングを行い、タームシートに署名する前に約20週間費やす準備が必要だ。多くの時間とエネルギーを投入しなければならないわけだが、特に経済が低迷する情勢にあり、あなたがほぼ確実に新しい事業領域に参入するとなれば当然だ。

すでにラウンドを開始しているものの、さらに進めるべきか迷っているなら、筆者が書いた中止して体勢を整えるべきか、なお進めるべきか、そのタイミングを知ることについての記事を読んでほしい(Extra Crunch会員限定記事)。

資金調達ラウンドの成功には多くの要因が絡む。投資家の期待も常に変化する。特にプレシードラウンドに関してはそうだ。

投資家は市場に対応したプロダクトを探しており、期待するコンテンツが目玉になっているピッチ資料が見たい。今後数カ月でこの点が強調されると予想する。VCには今、ピッチ資料を確認するだけでなく、投資を計画している企業のデューデリジェンスに費やす時間があるからだ。当社の新しいレポートで、資金調達戦略を軌道修正するプレシードのスタートアップへのアドバイスについて概説している。

優れたパワーポイントだけでなく、MVPに注力しよう

当社の分析で明らかになったのは、ファンド側でプレシードマネーを投入する前に必要とされる準備の水準に変化が生じているということだ。以前は、プレシードのスタートアップはMVPP(Minimum Viable PowerPoint、実用最小限のパワーポイント)だけで乗り切れた。だが今、投資家が掛け金を積んでいる投資先は、アルファ版、ベータ版、または出荷実績のあるプロダクトを開発し、既に市場に参入しているプレシードのスタートアップだ。

実際、成功したピッチ資料を提示した会社の92%がアルファ版、ベータ版、または出荷実績のあるプロダクトのいずれかを持っていた。一方、失敗したピッチ資料を提示した会社で、何らかのプロダクトが準備できていたのは68%だけだった。

経済が景気後退に近づくにつれ、VCは投資に慎重になることが予想される。足下のデータは、使えるプロダクト(live product)をすでに持つ会社が選好されることを示している。MVP(Minimum Viable Product、実用最小限のプロダクト)がある方がいい。来たるべきプレシードラウンドに備え、または新鮮な視点とともにラウンドに再挑戦するために、時間や労力を費やしてプロダクトを準備する価値はある。

ピッチ資料を見直す

とはいえMVPがあっても、ピッチ資料の再検討は一考に値する。良いテストを紹介したい。ピッチ資料の説明に3〜4分(VCから与えられる時間はこれだけだ)を使って、何も知らない友人や家族にあなたのビジネスを売り込む。その後、彼らにあなたの会社を一文で説明してもらおう。あなたの会社が何をしているか、そして会社が解決を目指す問題を彼らが明確に説明できない場合、おそらくピッチ資料を見直す必要がある。

最近の当社のレポートによると、ミーティングで使う説得力のあるピッチ資料を作成する際に「少ないほど良い」という態度がプレシードマネー獲得での成功を呼びやすいようだ。

ピッチ資料は今、名刺に代わる重要な役割を持つ。新型コロナパンデミックによって、コミュニティイベントはオンラインになりつつある。そのため1対1でのやり取りが少なくなると予想される。VCに対面で提案する機会がすぐにやってくることはないだろう。飛び込みでメールを送る場合であっても、ポートフォリオカンパニー(VCの投資先)から温かい紹介を受ける場合であっても、ピッチ資料から始める必要がある。

資金調達ラウンドではプロダクトがより重要な役割を果たすものの、投資家がプロダクトの評価に費やす時間が減少する傾向は続いている。ピッチ資料が軸となることに変わりはなく、最も効果的な方法でストーリーを伝えられるよう練っておく必要がある。投資家がピッチ資料に目を落とす時間は平均3分21秒しかない。平均的なピッチ資料のスライドの数は20にすぎない。

ピッチ資料を見直すなら、スライドに適切なコンテンツが適切な順序で掲載されていることを確認すると良い。成功したピッチ資料では失敗に終わったものに比べ、投資家はプロダクトのスライドに約50%以上、ビジネスモデルのスライドには18%以上時間をかけて読んだ。また、成功したピッチ資料ではソリューションのスライドもじっくり読まれた。

数は大事だが、程度問題だ

再検討する価値がある次のポイントは、連絡をとった投資家の数、開いたミーティングの数、資金調達ラウンドに費やした週数だ。一般的に、成功した資金調達ラウンドで連絡をとった投資家は平均で56人、開いたミーティングは26回だ。成功したプレシードのスタートアップが資金調達にかけた週数は平均して20.5週間だ。

資金調達の点では、投資家へコンタクトするメリットは減っている。60〜70人を超える投資家にピッチ資料をを送ったり、20〜30回を超える会議を行ったりする必要はない。今それ以上の回数をかけているなら、もはや時間あたりのROIには影響しない。進行中の危機によりVCの投資意欲に影響を与えているため、今も積極的に活動するVCに絞って短いリストを作り、ピッチした方がうまくいく。70人を超える投資家に連絡したが「No」の壁にぶち当たっているなら資金調達はいったん中止し、これまでに受けたフィードバックに対処することをお勧めする。どのタイミングで中止して再考すべきか、あるいは引き続き進めるべきかについての詳細はこちらの記事を読んでほしい(Extra Crunch会員限定記事)。

また、プレシードのスタートアップが検討すべき点に、会社の創業者の数がある。当社のデータによると、投資家は2〜3人の創業者のチームを好むが、多すぎるよりは1人の方が好ましいことを示している。5人の創業者のチームは平均19万5085ドル(約2100万円)、3人の創設チームは平均51万1522ドル(約5500万円)を獲得している。

今が共同創業者を見つける良い時期かもしれない。多くの人が自宅で仕事をしていたり失業していたりするため、あなたのアイデアを提示して、必要なテクノロジー担当創業者を連れてくる機会になり得る。ソーシャルディスタンス(社会的距離)の要請があるため、随所でオンラインのグループやイベントが生まれている。創業者が自分だけのため前進できないと心配している場合は、新しいコミュニティに時間を投資しても良いかもしれない。

新しい視点を得る

多くのスタートアップにとって、特に多数の資金調達が行われるシリコンバレーにいない場合、資金調達のプロセスは非常にわかりにくい。DocSendによるデータ分析の目的はプロセスにいくらかの透明性をもたらすことだ。そして見通しを提供する。

だが創業者がすべきことは、もしまだなら、新しい視点を得ることだ。自分の内輪の知り合い以外の専門家に相談してほしい。メンターやアドバイザーがいないなら見つけてほしい。プロダクトのアイデアや市場の状況について異なる見方をしてほしい。特にコミュニティイベントが仮想化している今、物理的な場所は、スタートアップコミュニティに参加したり、プロダクトや会社に関するフィードバックを提供してくれる人を見つける際の制約にはならない。

資金調達はアートでもありサイエンスでもある。当社のデータから得た洞察をあなた自身のコミュニティから得た知見と組み合わせれば、体勢を立て直し、会社を売り込み、うまく運べば良い結果を得るのに役立つはずだ。

【編集部注】筆者のRuss Heddleston(ラス・ヘドルストン)氏はDocSendの共同創業者兼CEO。以前はFacebookの製品マネージャーだった。Facebookが同氏のスタートアップであったPursuit.comを買収した。Dropbox、Greystripe、Truliaにも在籍した経験がある。フォローはこちら:@rheddleston@docsend

画像クレジット: Tara Moore (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。