今のアプリビジネスは、その大多数が持続不可能だ

アプリストアの店頭に並ぶモバイルアプリケーションは、衰えを知らぬ勢いでますます増え続けている。しかし実際には、その多くが、持続可能なビジネスではない。今朝(米国時間7/21)発表された報告書によると、iOSデベロッパの半分(50%)とAndroidデベロッパの半分以上(64%)が、“アプリの貧困ライン”以下で操業している。アプリの貧困ラインとは、アプリの月間の売上が500ドルであることだ。

この、VisionMobileの2014Q3 Developer Economics(デベロッパ経済)報告書は、モバイルアプリのデベロッパに対する大量のオンラインアンケートと面接調査の結果をまとめたもので、全体としての調査対象数は世界137か国の10000名以上のデベロッパ、調査機関は4月と5月にまたがる5週間だった。

モバイルアプリのデベロッパにとって、自分のアプリを見つけてもらい、ダウンロードしてもらい、実際に使ってもらうことが、まず難関だ。そのことは前からよく知られているが、それを表す数字を実際に見ると、その厳しい状況がより一層分かる。“1%”という微量な数値は、経済全般を語るときだけでなく、アプリストアの経済を語るときにも重要な役を演ずるのだ。

まず、この報告書によると、1か月に50万ドル以上を売り上げるデベロッパは全デベロッパの1.6%にすぎない。この1.6%が、残る98.4%の合計稼ぎ高の数倍を稼いでいる(下図)。この報告書は、合衆国など先進国の貧困現象になぞらえて“アプリデベロッパにおける中間階級の消滅”を指摘している。そして全世界で約290万のモバイルアプリデベロッパは、

・持たざる者(have-nothings)
・貧困にあえぐ者(poverty-stricken)
・ぎりぎり苦労している者(strugglers)
・持てる者(haves)

の4階級に分類されるのだ。つまり、“持てる者”を除く、ほとんど全員が“何らかの貧困”だ。

持たざる者

上図の円グラフで、濃い赤の24%は、お金を儲けたいけど一銭も儲けていな人たちである。そして明るい赤の23%は、月の売上が100ドルに満たない人たち。この24+23=47%が、持たざる者(have-nothings)と分類されている。

しかしそれでも、iOSを優先するデベロッパが多い。上図円グラフの右にある棒グラフを見るとお分かりのように、持たざる者の比率は、Android 49%に対し、iOSは35%と低い。だから多くのデベロッパが、とりあえずiOSを目指すのだ。

なお、お金を儲けたいと思っていないデベロッパも一部にいて、報告書は彼らを“ホビイスト”とか“探究者”と呼んでいる。

貧困にあえぐ者/ぎりぎり苦労している者

月間のアプリの売上が100ドル以上1000ドル未満の22%(オレンジ色)を、”貧困にあえぐ者(poverty stricken)”と分類している。これが企業の売上なら、デベロッパに給与を払えないだろう。彼らを小分類すると、 100-500ドルが15%、500-1000ドルが7%だ。

持たざる者の47%に100-500ドルの15%を足した62%が、“アプリの貧困ライン”以下の層となり、さらに500-1000ドルの7%を足した計69%が、デベロッパを本業として持続できない層である。

“ぎりぎり苦労している者(strugglers)”は、上図円グラフで草色の部分、すなわち19%の層だ。彼らの月間売上は、1000ドル以上10000ドル未満である。副収入としてまあまあ、もしくは、完全に本業として成り立つ、という人たちだ。ただしこのレベルのアプリは、開発コストと、サーバなどの運用コストが高いものが多いと思われる。

勝者が総取り: 持てる者

アプリの月間売上が10000ドル以上を、“持てる者(haves)”と分類している。iOSデベロッパでは17%、Androidでは9%がこの層である。アプリストアにおける10000ドルの意味を理解していただくために、次の挿話を述べておこう: 合衆国のiOSアプリストアで上位100位までの有料ゲーム(アプリ内購入を含む)は、どれも一日の売上が10000ドル以上である。

ただしこの報告書によると、月間の売上が50万ドル以上のデベロッパは、全体の1.6%にすぎない。しかもその中には、月商数千万ドルという水準のデベロッパもいる。その次の、10万-50万ドルの層は全体の2%だが、彼らの月商の合計は、残る96.4%のデベロッパの全月商を合わせた額よりも大きい。

報告書は、こう述べている: “アプリビジネスの50%以上は、現在の売上では持続不可能である。この50%以上の中に、持続を志向しないパートタイムデベロッパは含まれていない。長期的には60-70%のデベロッパが持続不可能と思われ、需要の多いスキルを持つデベロッパは、モバイルアプリ以外の、より将来性のある分野へ移動していくだろう”。

モバイルアプリは消耗品か?

これらの数字に見られるのは、モバイルアプリが大きく売れることの難しさだけではなく、モバイルアプリが消費者だけでなくデベロッパにとっても消耗品であることだ。つまりそれは、長期的に取り組む本格的なビジネスとは、みなされていない。

今日では、モバイルアプリのスタートアップの多くがデベロッパの履歴書のようなもので、買収やM&Aのあとには忘れ去られてしまう。次々とイグジット(出口)があり、毎日のように新しいローンチがあり、中になローンチする前に拾われてイグジットするスタートアップもある。したがってモバイルアプリが作り出す消費者ユーザベースは、アプリをすぐに消え去るものと見なすようになる(Facebookは違うかもしれないが)。

今日のユーザの多くが、アプリを、まるで自分の家のような永住性のある、親しい、そして重要な、コミュニケーションの場とはみなさなくなっている。企業向けのメッセージングクライアントも、さまざまな写真保存アプリも、そしてゲームも、寿命がとても短い。次々と新作が登場し、次々と消えていく。

でも、今の若い消費者には、その前のジェネレーションXやYの世代にない特徴がある。彼らは、恒久性永続性のない、つかの間のメッセージに満足している。自分のソーシャルメディアのアカウントを削除しても平気だ。データの喪失も、それほど気にしない。このグループの消費者たちは、モバイルアプリがますます帯びつつある消耗品的な性格と、しっくりフィットしている。少なくとも現在の消費者アプリのゴールドラッシュが、続いているかぎりは。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))