今週のまとめ―iPadは種類が増えすぎ? iMacの5Kディスプレイは驚異的、パスワード使い回しはやめよう

今週はAppleがクパチーノの本社でプレスイベントを開催し、iPadの次世代モデルを発表した。また同時に5Kディスプレイの新しいiMacも紹介された。TechCrunch Japanでも詳しく取り上げたので、振り返ってみよう。

iPadは18%薄く、40%速く、指紋認証が付いた

10月17日(米国時間10/16)のイベントでは予想どおり、iPadとiPad miniがバージョンアップされた。フラグシップモデルのフルサイズiPadはiPad Air 2となり、18%薄く、40%速く、指紋認証が付いた。Appleは新しいモバイル支払システム、Apple Payの普及を目指しているので指紋認証機能は必須といえる。Appleもプレゼンも強調していたが、初代iPadに比べてパフォーマンスが数倍になったにもかかわらず厚みが半分になったというのは大きな進歩だ。

新しいiPad Air2の重量は437gでiPad Airからの軽減は32gにとどまっが、もともとが十分軽い。初代iPadの重量と厚みではeブックの「ごろ寝読み」は少々辛かったが、iPad Airになって劇的に軽量化され、長時間片手で支えるのも苦にならない重さになった。iPad 2ではさらに快適になっただろう。WiFi接続とWiFi+セルラー接続のモデルにそれぞれゴールド、シルバー、スペース・グレー(黒)の3色が用意される。メモリー容量は16GB、64GB、128GB。つまりバリエーションは2x3x3=18種類となる。その他スペックは以下のとおり。

・画面は単一のラミネートされた部品から成り、空気を排除し反射が少ない
・アンチグレアコーティングで56%反射を防止
・新世代Appleチップセット、A8Xを使用。CPUは40%速く、GPUは2.5倍速い
・最新iPhoneのCPUと同じく、A8Xにはいくつか新しいチップが加わった。モーションセンサーがチップに内蔵され、内蔵気圧計で周囲の空気データを追跡する
・バッテリー寿命は10時間
・802.11ac WiFiをサポートし、理論的ダウンロード速度は最大866 Mb/s
・リアカメラは8メガピクセル(明るさf 2.4)

一方、iPad miniではmini 3が発表された。基本的はハードウェアは既存のmini with Retinaとほとんど同じだが、指紋センサーが付加され、メモリーが64GBと128Gモデルが加わり、カラーバリエーションにゴールドが加わった。

これまでminiはオリジナルのminiと高精細度ディスプレイ搭載のmini with Retinaモデルの2本立てだったが、今回の新モデル登場で、mini with Retinaはmini 2となった。旧モデル2機種も少々値下げして販売が続けられる。つまりminiは非RetinaでA5プロセッサ搭載のmini、RetinaでA7搭載のmini 2、mini 2に、TouchID等を付加したmini 3の3シリーズ構成となった。

iPadは種類増えすぎ?

さて、ここまで見てきてわかるとおり、iPadの製品構成は一気にバリエーションが増えた。増やし過ぎではないかという声もあちこちから上がった。TechCrunchでもSarah Perez記者がiPadは種類が多すぎる―迷ったらこうして選ぼうという記事でこの点に触れている。

この中でPerez記者はiPadのベーシックモデルがなぜいまだに16GBなのかという点に触れ、「いまどき16GBがどんな役に立つというのだろう? HDでビデオを撮影したり、ちょっとしたゲームをダウンロードしたらファイルがどのくらいのサイズになるのかAppleは知らないのだろうか?」と皮肉を言っている。

Perez記者は「Appleは市場に出回っている低価格タブレットに対抗するためにカタログに載せる最低価格モデルとして16GBを捨てられないのだろう」と推測している。これまでAppleは製品の圧倒的なユニークさで独自の世界を構築し、ライバルをよせつけなかったが、Androidによって低価格市場を席巻され、さらにスマートフォンでもタブレットでもコストパフォーマンスの高いハイエンドAndrodi製品が現れている。Appleも価格と製品バリエーションという伝統的な競争に巻き込まれつつあるようだ。

iOS 8.1の目玉はカメラロール復活

新iPadお披露目の週明けにiOS 8初のメジャー・アップデート8.1が公開された。長期的にみてAppleにとってもっとも重要な新機能はApple Pay支払いサービスのサポートだ。

ユーザーがデバイスにクレジットカード情報を登録しておくと、店舗やレストランで支払いができる「おサイフケータイ」の一種だが、読み取り機にデバイスを触れる代わりに、TouchIDボタンに指を載せ指紋認証で支払いを実行する。普及のためには金融機関と多数の実店舗をプラットフォームに参加させねばならない。Google、Square、PayPalなどの先行サービスはいずれも当初の話題になったほどにはその後の普及が進んでいない。Apple Payがジンクスを破って急速に離陸できるか大いに注目される。ただし日本での展開については情報がない。

日本のユーザーにとって8.1のアップデートでいちばん便利になったのはカメラロールが復活したことかもしれない。iOS 8.1の詳細についてはこちら

iMacの5Kディスプレイは文句なしにすごい

Appleのイベントでは新しいiPadよりむしろ同時に発表されたiMacのスーパー高精細度ディスプレイ、いわゆるRetina 5Kモデルが話題を集めた。

Etherington記者も5180×2880、1470万ピクセのディスプレイには驚いたたようだ。「新しいスクリーンは一目見ただけで美しさに圧倒される。しかも長く見ていれば見ているほど賛嘆が深まる。私のように日頃Retina MacBook Proをメインマシンとしているユーザーにそう思わせるのだからただごとでない」と絶賛。日本では25万8000円から

Android Lはロリポップと命名、Nexus 5が登場

話題としてはiPadイベントにかき消された形だが、ライバルのGoogleにも動きがあった。まずこれまで単にLと呼ばれてきた次世代Anroid OSがLollipopと命名された。ユーザー側からはUIがMatarial Designに全面的に変更されたことが目立つ。新しいAPIの追加、ART仮想マシンのデフォールト化などむしろデベロッパーにとって意味が大きいかもしれない。

同時にGoogleは、5.9インチ、5.0 Lollipop搭載の強力AndroidファブレットNexus 6を発表した。出荷は11月中になるらしい。ディスプレイも1440×2560、496 ppiとスペックとしてはRetina iPad2をしのぐ解像度だ。

Amazonは実店舗、Googleは宅配

eコマース戦線でも動きがあった。Googleが実験していた即日宅配サービスはGoogle Expressという有料サービスとして本格的に展開されることになった。サポート都市は既存のカリフォルニア北部に加えて、新たにシカゴ、ボストン、ワシントンD.Cの3都市が追加された。会費は年額95ドルだという。これはAmazonのプライム会員のアメリカでの会費99ドルよりは少し安い。しかし、プライム会員には映画、テレビ番組、音楽のストリーミングなど充実したサービスが付加されているのでGoogleの料金はやや割高感jがある。

一方、Amazohもニューヨークのブルックリンで生鮮食品の配達を開始した。 Amazonは長年実店舗を設けることを避けてきたが、ついにマンハッタンのエンパイアステート・ビルの向かいという超一等地にミニ店舗を開設するという情報も流れている。これがクリスマス商戦向けの一時的なものか、恒久的な施設なのかも含めて今後の取材待ちだ。

Dropboxのパスワード流出―パスワードの使い回しでサードパーティーから

毎週のようにセキュリティーが破られた事件が起きているが、今回はDropboxのパスワードを盗み出すことに成功したと匿名サイトで主張するハッカーが現れた。事実数百件のDropboxのログイン情報が公開されたようだ。しかしDropboxでは「われわれはハックされていない。漏洩パスワードは他サービスからの使い回しだ」と発表した。またDropboxは「不審なログインを検知してリークしたパスワードを無効化した」としている。改めて言うまでもないが、パスワードの使い回しは危険だ。またDropboxやGoogleのような乗っ取られると致命的な被害が出るようなアカウントでは2段階認証を有効にしておくのが必須だ。

滑川海彦@Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。