今週のUS記事まとめ―Snapchatは10兆円、Google+とFacebookは方向転換、3Dプリンタにうまい話はなかった

Twitter復活、Snapchatが100億ドル!

Snapchat、評価額ついに100億ドル―Alibabaも投資交渉に参加

「読んだらすぐに消えるメッセージ」で大ブームを巻き起こしたSnapchatが新たな投資ラウンドで10兆円の評価を得た。Bloombergの記事はスタートアップの「100億ドルクラブ」としてAirbnb、Dropbox、Uberを挙げているという。これらの3社はすでにビジネスモデルを確立しているがSnapchatの場合はまずその点が未知数だ。強いソーシャルグラフを形成するFacebookはと違って、「その場で消える」メッセージにはユーザーを囲い込む力が弱い。果たしてそれだけの評価額を長期にわたって維持できるだけの売上が得られるのだろうか?

Twitter株急騰。Q2売上3.12億ドル、EPS 0.02ドルで予測を大幅超

一方でビジネスモデルが弱いという印象から上場後株価が低迷ぎみだったTwitterはQ2に月間アクティブ1600万人増で売上もアナリストの予想を大きく超え、四半期で黒字を出した。今期の売上の81%がモバイル広告収入で、Facebookと共にTwitterも急速なモバイル化に成功しているいることをうかがわせた。

ビッグソーシャルメディアは再編へ

Google+の「写真」が単体サービスになるかもしれない

Googleはビデオチャットのハングアウトの利用からGoogle+登録の要件を外すなどGoogle+の利用をユーザーに無理押しすることを徐々に止めている。もともとGoogle+の写真共有機能はPicasa Web版をベースにしたものだったが、Google+のスタート時にいささか強引にこれと統合してしまった(Piacsa Web版もなくなったわけではなく、こちらのリンクから以前どおり利用できる)。

Google+の写真には強力なオンライン編集があるだけでなく、ユーザーの画像を自動的に最適化したり、パノラマ写真を合成したり、GIFを作ったり、一連の写真からたとえば「旅行のストーリー」を自動作成したりできる。またアップロードも高速でGoogleドライブと連携しているため保存容量も巨大だ。もし報道のとおり「Google写真」がスタンドアローン化されれば普及に大きな弾みがつくかもしれない。

一方、Facebookもモバイルアプリに際限なく機能を追加するのを止めて、スタンドアローン・アプリのファミリーを作っていく方針に転換したようだ。これまでメッセージ(チャット)をメインのアプリとスタンドアローンのアプリの双方で行ってきたが、近くチャット機能をMessengerアプリに全面的に切り替えると発表した。これと前後してギフトを終了しBuyボタン等のコマースプラットフォームに集中することも決定された。13億人のユーザーを抱えていればわずかなユーザー体験の変更でも不満を抱くユーザー数は膨大になる。しかしそれを恐れていては全体の改良は進まない。まだ日本版ではMessageアプリへの切り替えは行われていないようだが、方向としては正しいだろう。

3Dと電子出版はハイプ・サイクルの幻滅の谷間か

市場調査会社のGartnerは「ハイプ・サイクル」という理論を唱えた。新しいテクノロジーが安定して受容されるためには当初の過剰な期待が現実によって裏切られる「幻滅の谷間」をとおり抜ける必要があるという。3Dプリンターはその時期にあるのかもしれない。

Motaの99ドル3Dプリンターは「うますぎる話」だったという記事では、Kickstarterで大人気になった3Dプリンター・プロジェクトが数日で中止となった経緯が紹介されている。「大量生産効果を狙ってMotaは製品に99ドルという破格の値付けをした。おそらくは数千万ドルという規模の投資を集める計画だったのだろうが、集まったのは6万5000ドルで、その程度の資金で99ドルで利益が上がるような大量生産は無理だった。Amazonが3Dプリント製品のストアをオープンしたが、目玉はカフェイン分子式を模したイヤリングといった「話しのタネ」のようなアイテムでまだ実用には遠いことをうかがわせた。

eブックでも一時の楽観的な熱狂は過ぎ去ったようだ。「われわれが知っていた本の姿は、変わりつつある。本は、雑誌や新聞と同じ運命をたどりつつある。散文テキストの分厚い塊は価値を失いつつあり、人びとがそれに対して払う価格も下がっていく」とジョン・ビッグズ記者が本が本でなくなる日でいささか憂鬱なスケッチを描いている。既存の版元、書店のビジネスが圧迫され崩壊の危機に瀕しているのに、新しいデジタル・エコシステムは一人勝ちAmazon以外の関係者に十分なメリットをもたらしていない。「かくして出版産業は衰退していく。そして、ベゾスが勝つ」とビッグズ。これも幻滅の谷のようだ。

メガネ不要の夢のディスプレイ開発中

ガジェットではMITとカリフォルニア大学バークレー校の研究チームが開発中の視力に応じて自動的に表示を調節するでメガネがいらなくなるディスプレイという記事が注目を集めた。裸眼3Dディスプレイの技術を応用して水晶体の焦点調節機能を補助した像を網膜に結ばせるという技術のようだ(PDFの元論文)。老眼鏡をかけて長時間ディスプレイを見るのは負担が大きい。また近眼のメガネをかけて自動車を運転するとカーナビの字が読めなかったりする。ユーザーの視度に合わせて表示を調節してくれるディスプレイが実用化すれば一大マーケットが開けることになるだろう。

滑川海彦 Facebook Google+


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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。