介護施設マッチングサービス「KURASERU」運営が1.3億円を調達

写真前列中央:KURASERU代表取締役 川原大樹氏

病院から退院する要介護者を介護施設とマッチングする「KURASERU(クラセル)」は、医療ソーシャルワーカーの退院調整にかかる業務負担の軽減をサポートするサービスだ。サービスを提供するKURASERUは3月21日、DBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、500 Startups Japan、個人投資家らから総額1億3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

介護施設マッチングサービスKURASERUは、2018年1月にリリースされた。病院から退院できることになっても自宅や家族のもとでの在宅療養が難しい要介護者に対し、症状や状況に合った介護施設を探す医療ソーシャルワーカーの業務をサポートする。

従来は医療ソーシャルワーカー、または患者や家族の知識の中から、電話やFAXを駆使して空きを探す、という世界だった介護施設探しに、ITを取り入れて効率化を進めてきたKURASERU。さらに今回、タブレットやスマートフォンに対応したネイティブアプリ化で、より現場の業務に寄り添ったサービスに進化しようとしている。

KURASERU代表取締役の川原大樹氏は「病院の中にはPCが1台しかないというところもあり、使える場所や使用者のアカウントが制限されていることも多い。実際に退院後の介護施設を決める現場では、患者さんや家族とはミーティングルームなどで打ち合わせをすることになるため、持ち運べるタブレットで使えるアプリの形でシステムを提供することにした」とネイティブアプリ開発の理由について語る。

「これまでは電話で施設の空きを確認し、パンフレットを取り寄せて患者さんの家族に確認してもらい、次のミーティングのスケジュールも押さえて、3日がかりぐらいで調整して退院後の介護施設を決めてきた。ブラウザベースのサービスでも、ITによる効率化という意味では意義があったけれども、業務フローの中では使えない。タブレットなら、空き状況や施設のホームページを患者や家族と確認しながら、その場で決められるようになる」(川原氏)

従来のブラウザベースのシステムも、タブレット上のブラウザ経由で利用できないことはなかったそうだが、「手入力が必要な項目が多かったところを、タップで完結できるようにした」と川原氏は話している。

またアプリをインストールしたタブレットを渡すことで、医療施設の関係者にはシステムの存在を物理的に分かってもらえるようになった、とのこと。介護施設向けには、職員個人のスマートフォンにインストールし、どういう条件の入居希望者がいるか、個人情報は伏せた状態で検索することができるアプリが提供される。

現在は、神戸市北区でベータ版アプリを使った実証実験がスタートしている。病院の協力の下、実際に使いやすいものを開発できる環境が整った、と川原氏。調達資金も使って、病院と介護施設だけでなく、病院間の転院や、在宅から介護施設への入居する際のスムーズなマッチングも検証。よりよいユーザー体験を追求し、医療介護連携ツールとしてブラッシュアップしていくという。

調達資金はほかに、開発・サポート体制の強化にも投資していく、という川原氏。今回の調達では、同社が参加していた神戸市アクセラレーションプログラムでメンターとして支援を行った尾下順治氏、山下哲也氏がエンジェル投資に参加している。「マーケティングや経営戦略などで、深い見識を持つ2人の出資参加は心強い」とコメントしている。

また今回は、既存株主の500 Startups Japanに加え、銀行系ベンチャーキャピタルが出資に参加した。川原氏は「病院と銀行とは融資で強いつながりがある。全国ネットで病院とのつながりを押さえている銀行系VCの参画は、当社への信頼感醸成にもなる。これを今後予定している全国展開にもつなげたい」と話す。

実際に、サービス展開中の神戸や関西エリアだけでなく、関東からもサービスへのオファーが来ているとのことだが、川原氏は「今は神戸でトラクションを積み重ねて、それから関東や全国にも展開していきたい」と述べている。

KURASERUは、現状では病院・介護施設ともに無料で利用できるようになっている。収益化について川原氏は「我々は、プラットフォーマーとして医療介護連携ツールをつくるスタートアップ。患者さんがどういう経緯で入院し、退院、在宅医療、施設利用をしたのか、その流れをデータとして持っている。これは他にはない情報で、データを生かして違う分野のビジネスにできると考えている」と語る。

「目の前の収益を考えれば、みんな手を出しにくいことをやっていると思う。だが、今やっている医療・介護施設の市場だけでも全国で2500億円以上と推定される。プラットフォーマーとして広く捉えれば、もっと市場規模は大きいと考えている」(川原氏)

KURASERUは2017年10月創業。2018年6月には500 Startups Japanなどから5000万円を調達している。

2017年12月には神戸市が主催するスタートアップコンテスト「KOBE Global Startup Gateway」の第5期に採択され、神戸市アクセラレーションプログラムにも参加。2018年11月開催のTechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトルではファイナリストに進出し、富士通賞を受賞した。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。