仮想通貨ブームが続く中、ブロックチェーン分析のChainalysisが109億円調達

ブロックチェーン分析会社Chainalysis(チェイナリシス)は米国時間3月26日、1億ドル(約109億6400万円)のシリーズD資金調達をクローズし、評価額は20億ドル(約2192億9000万円)に倍増したと発表した。

今回のラウンドのわずか4カ月前のシリーズCラウンドで、同社は10億ドル(約1096億4500万円)の評価額で1億ドルを獲得したばかりだ。最新ラウンドはParadigmがリードし、既存投資家のAdditionとRibbitが投資額を倍増させた。Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏の投資ファンドTIME Venturesも参加し、Chainalysisの累計調達額は2億6500万ドル(約290億5500万円)となった。

今回のラウンドは同社にとって2年弱という期間で4回目の資金調達となる。既存投資家にはAccelとBenchmarkも含まれる。

Chainalysisは、当時世界最大の仮想通貨取引所だったMt. Gox(マウントゴックス)がハックされた2014年の創業だ。ニューヨーク拠点のChainalysisは現在、60カ国超の政府機関や取引所、金融機関、保険会社、サイバーセキュリティ会社にデータやソフトウェア、サービス、調査を提供している。中でも顧客の400社はSquareのようなフィンテック、Barclaysのような金融機関、そしてGemini、Bitstamp、BitPayといった仮想通貨の事業会社だ。

共同創業者のMichael Gronager(マイケル・グロナガー)氏とJonathan Levin(ジョナサン・レビン)氏(画像クレジット:Chainalysis)

Chainalysisが自称するミッションは「少ないリスクで金融のさらなる自由を促進するためにブロックチェーンにおける信頼を構築すること」だ。

データプラットフォームは調査、コンプライアンス、リスクマネジメントのツールを動かす、と同社は話す。これらツールは「世界で最も有名なサイバー犯罪を解決したり、消費者が安全に仮想通貨にアクセスできるようにするのに使われてきた」。

共同創業者でCEOのMichael Gronager(マイケル・グロナガー)氏によると、あらゆる企業がゆくゆくは事業を行うのにブロックチェーンを使うようになるという信念のもとにChainalysisは事業を展開している。

「仮想通貨業界の誰よりも当社はブロックチェーンで何が起きているかについてより多くの情報を集めてきました」とグロナガー氏は話した。「そうした情報で、当社の顧客はより良いデータ駆動の判断を下すことができます」。

同社は以下のことを2020年達成したと話している。

  • 年間経常収益(ARR)を前年比100%超増やした
  • 30カ国超の政府機関、60カ国超の民間事業会社を含む顧客ベースを倍増させた
  • 10のネイティブブロックチェーンにまたがる100超のデジタル資産のカバーへとサポートを拡大した。これは仮想通貨経済活動の推定約90%を網羅している
  • 2020年従業員数を現在の233人に倍増させた
  • FireblocksやFlashpointを含む50社超から成る提携プログラムを拡大した
  • 今後の展望として、2021年に数百人を採用する計画で、新たに調達した資金は主に企業データプロダクトを拡大するのに使う

「当社は引き続き、捜査とコンプライアンスのソフトウェアに投資しますが、既存の顧客と新たなオーディエンスのための新データプロダクトも構築します」とグロナガー氏は話した。

Chainalysisはアジア太平洋地域で存在感を高めることに特に注力している。

「仮想通貨はグローバルです。Chainalysisも同様です」と同氏は述べた。

Chainalysisにとって仮想通貨にはこれまでにない透明性がある。

「仮想通貨はいずれの組織も管理しない初のグローバル決済システムですが、ブロックチェーンは違法行為を含め、すべての取引の公で永久の記録を作ります」とグロナガー氏はTechCrunchに語った。

ブロックチェーン分析は人々が公のブロックチェーン台帳を解釈するのをサポートすることで登場した。Chainalysisのツールは、政府機関や仮想通貨事業所、金融機関がどの実在組織が互いに取引しているか理解するのをサポートすることを目的としている。

「例えば異なる2つの仮想通貨取引所間、あるいは仮想通貨取引所と闇ネットマーケットや制裁を受けている機関など違法な組織の間で行われた取引を当社は示すことができます」とグロナガー氏は話した。

Paradigmの共同創業者、Fred Ehrsam(フレッド・アーサム)氏は、Chainalysisが仮想通貨エコシステムのために鍵となるデータインフラやソフトウェアを提供する方法に惹かれた、と述べた。

「誰よりも規制の状況をよく知っているChainalysisのチームは、何年もかけてツールを洗練し、顧客が欲しているものをよく知っています。これはひと晩で起こるサクセスストーリーではありません。チームは複数の暗号サイクルを通じて長期的なビジョンでツールを構築しました。これによりChainalysisはマーケットにおける優位性を確保し、機会は複利式に増えます」と付け加えた。「仮想通貨が浸透するにつれ、Chainalysisのサービスに対する需要も成長します」。

仮想通貨ブームのさらなる証拠として、2021年3月初めにBlockFiは30億ドル(約3289億3500万円)の評価額で3億5000万ドル(約383億7500万円)という巨額のシリーズDラウンドをクローズしたと発表した。暗号マーケット投資家のための金融サービス会社である同社は、小売や機関向けプロダクトを提供している。

特筆すべきことに、BlockFiはChainalysisの顧客でもある。CEOで共同創業者のZac Prince(ザック・プリンス)氏は、ChainalysisがBlockFiに「事業開発活動を通知し、サービスをカスタマイズし、そして新たな売上源を特定するのをサポートできるコンプライアンスを超えた知見を与えるデータを提供している」と声明で述べた。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Chainalysis仮想通貨資金調達

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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