会社を辞めずに参加可能、アクセラレータ「Founder Institute」が日本初の支部を関西に設立

海外の企業や組織が日本で拠点を設置するとき、ふつうに考えれば、まず最初は東京となるだろう。しかし、Founder Instituteが選んだのは関西だった。Founder Instituteは今日、日本で初めてとなる支部を関西に設立することをアナウンスした。プログラムに参加したい起業家は、今日から申し込みができる

Founder Instituteはシリコンバレーを拠点とするグローバルなアクセラレータで、起業家のトレーニングやスタートアップの立ち上げ支援を行うプログラムだ。現在6大陸にまたがって33カ国61都市で活動を行っている。2009年の創業以来これまでに1116社の企業を支援し、1万人以上の雇用を生み出してきたという。これまでに8つのエグジットがあり、Founder Instituteによれば、そのポートフォリオの評価額は50億ドル以上と推定しているという。創業タイミングとしてはY CombinatorやTechStarsに遅れるものの、“卒業生”となった社数やグローバルに展開している拠点数では世界最大規模のアクセラレータプログラムといえそうだ。

Founder Instituteは、ほかのアクセラレータにない特徴がある。

1つは、このプログラムは夜間のパートタイムであることだ。Founder Instituteに参加する起業家は4カ月間のプログラムで起業家CEOのメンターたちから訓練やフィードバック、サポートを受けながら、実際に会社を登記してビジネス立ち上げを行うが、このプログラムに参加するために会社を辞める必要はない。多くのアクセラレータは、3カ月や4カ月の期間はフルタイムでの参加を前提しているが、Founder Instituteでは会社に勤めながら参加でき、仕事を辞める前にビジネスアイデアを検証したり、改善したりできるのだという。

Founder Instituteのもう1つの特徴は参加者のインセンティブ設計だ。Founder Instituteでは、同期生となる会社群の株式を起業家同士でシェアするプール方式というものがある。同期の仲間とともに自分の起業した会社の株式の3.5%をワラントとして10年間のボーナスプールに供与する。プールの見返りのうち40%はFounder Instituteと、その地域のディレクターに還元され、30%がメンターに還元される。各メンターのシェアは卒業生の無記名によるレーティングによって決まる。残りの30%が卒業生自身に還元される。誰かが成功すれば皆でその成果を分かち合うというモデルだ。Founder Instituteのゴールは世界75余りの都市で毎年1000の価値ある永続的企業を立ち上げること、という。

関西に日本初の拠点を作ることについてFounder Institute創業者CEOのアデオ・レッシ氏は、「世界をリードするいくつかのテクノロジー企業にとって関西は本拠地となっていることから、優秀な人材が現地に多いことは間違いありません。一方で、彼らのような優秀な人材が起業するためのサポート体制は決して十分であるとは言えません」と、その理由を説明している。

Founder Instituteは年2回開催される学期を通じて、日本国内で年間20社以上のテクノロジー系スタートアップの創出を目指すそうだ。今年3月に実施したトライアル期間に100人もの応募があったそうで、関西での設立を決定した背景には、こうした実績もあったようだ。

Founder Institute関西支部の3人のディレクターとコメントは以下の通り。

・安井一郎:日本国内および海外のアーリーステージ企業への経営戦略・投資コンサルティングを専門に行うHIGアソシエイツ株式会社 代表取締役

「関西ではスタートアップに対する3つの大きな課題があると考えています。まず1つめは、 スタートアップを立ち上げるためのベストプラクティス(成功事例・最優良事例)が共有されていないということ。2つめは、失敗に対する文化的な恐れが存在すること。3つめは、スタートアップを支援するエコシステムが関西には存在しないこと。Founder Instituteは、これら全ての問題を解決できると考えています」

・牧野成将:IT/サービス系スタートアップへの投資を行う株式会社サンブリッジグローバルベンチャーズマネージャー

「熱意ある起業家による適切な教育があれば、関西における状況は改善され、関西のポテンシャルも最大化されると考えています。Founder Instituteによって、それは可能だと思っています」

・藤原健真:京都を拠点とする大学ベンチャーファンドを運営する Miyako Capital ベンチャーパートナー、SaaSスタートアップ Coworkify 創業者、英語による京都のスタートアップコミュニティサイ ト startupkyoto.com の運営者。

「自分自身が関西出身であるため、関西を世界クラスのスタートアップ育成拠点にすることについては誰よりも情熱を持っています。関西が得意とするコンシューマ家電、半導体、ゲーム、 ヘルスケア分野の知識とノウハウをITと掛け合わせることで、Founder Institute関西はグローバルな舞台で活躍するスタートアップの成長に大きく貢献できると考えています」


投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。