会議を日常のワークフローに統合する「ミーティングOS」を目指す仮想会議プラットフォームのVowel

仕事を進める上で会議を避けることはできない。だが、Vowel(バウエル)のCEOであるAndy Berman(アンディ・ベルマン)氏は、過去18カ月におよぶ職場の分散化の中で、私たちは「会議による死」に向けて着実に歩んでいるという。

このたび、彼の仮想会議プラットフォームが、会議前、会議中、会議後をより実り多いものにすることを目指して、ベンチャーキャピタル資金1350万ドル(約14億9000万円)を調達した。

Vowelが立ち上げるミーティング運営システムは、リアルタイムの文字起こし、統合された議題、メモ、アクションアイテムを備えており、会議の分析機能、会議の検索可能なオンデマンド記録を提供する。同社はフリーミアムビジネスモデルを用意しており、2021年秋には、1ユーザーあたり月額16ドル(約1764円)のビジネスプランを展開する予定だ。また追加機能として、高度な統合機能、セキュリティ、および管理機能が含まれる。

関連記事:Zoom会議のリアルタイム文字起こし機能をOtter.aiが提供

今回のシリーズAは、Lobby CapitalのDavid Hornik(デビッド・ホーニック)氏が主導し、既存の投資家であるAmity VenturesとBox Group、そしてCalendly CEOのTope Awotona(トープ・アウトナ)氏、Intercomの共同創業者であるDes Traynor(デス・トレイナー)氏、Slack VPのEthan Eismann(イーサン・アイスマン)氏、元Yammer幹部のViviana Faga(ビビアナ・ファガ)氏、元InVision社長のDavid Fraga(デビッド・フラガ)氏、Oktaの共同創業者であるFrederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)といった個人投資家グループが参加した。

Vowelを始める前のベルマン氏は、ベビーモニター会社Nanit(ナニット)の創業者の1人でもあった。同社は世界中にチームを分散させていたため、結果としてコミュニケーションには苦労がともなった。2018年に同社は同期型および非同期型の会議に使えるツールを探していたが、さらに管理するタイムゾーンもたくさんあるという課題があったと彼はいう。

1日17時間ビデオをストリーミングしているNanitのベビーモニター機能からヒントを得て、Vowelのアイデアが生まれた。そして同社はこの先分散作業が普及していくという仮説に焦点を合わせ始めたのだ。

「はじめまわりの人たちは、私たちがクレイジーだと思っていましたが、その後パンデミックが発生して、皆がリモートで作業する方法を学び始めたのです」とベルマン氏はTechCrunchに語った。「ハイブリッド作業に戻りつつある現在、私たちはこれはチャンスだと考えています」。

2017年、ハーバードビジネスレビューは、経営幹部は毎週23時間を会議に費やしていることを報告した。またベルマン氏は、現在平均的な労働者は、毎週就業時間の半分を会議に費やしていると推定している。

Vowelは、いつでも一時停止できるオーディオとビデオ記録とともに、Slack(スラック)、Figma(フィグマ)、GitHub(ギットハブ)のコンポーネントを会議に持ち込む。ユーザーはメモを追加したり、そうしたメモがリアルタイムの文字起こし情報どこに対応するかを確認したりすることができる。これによって、会議に後から参加した人や、会議に参加できなかった人が、内容に簡単に追いつくことができる。会議が終わった後には、それらは共有することが可能だ。Vowelには検索機能があるので、ユーザーは内容に戻って特定の人やトピックが議論された場所を確認することができる。

新しい資金により、同社はプロダクト、デザイン、エンジニアリングのチームを成長させることができる。Vowelは、2022年までに最大30人の新規採用を計画している。同社は最近ベータテストを終了し、順番待ちリストに1万人を集めた。ベルマン氏によれば、一般公開は秋に行われる予定だという。

職場における生産性とオフィスのコミュニケーションツールは、新しいコンセプトではないが、ベルマン氏が説明したように、過去18カ月間に自宅がオフィスになるにつれて、ますます重要なものとなってきた。

競合他社は、これらの問題を解決するためにさまざまなアプローチを取っている。ビデオ会議、音声、またはプラグインを使用した会議管理に重点を置いていることが多い。ベルマン氏によれば、まだ多くの競合相手が成功していない分野は、会議を日常のワークフローに統合する部分だという。そこがVowelの「ミーティングOS」が活躍できる場所なのだ、と彼は付け加えた。

ベルマン氏は「私たちの目標は準備、会議そのもの、フォローアップを含めて、会議をより包括的で価値のあるものにすることです」という。「将来はナレッジマネジメントが重要になると考えています。私たちと他との違いは、そうしたナレッジベースをすばやく検索し、維持できるようにすることです。ガートナーのレポートによれば職場の会議の75%が2025年までに記録されるようになるいわれています。私たちはそのトレンドをゼロから作り直しているのです」。

Lobby Capitalの創業パートナーであるデビッド・ホーニック氏は、既存の投資家であるAmity VenturesからVowelのことを知ったという。GitLab(ギットラブ)の取締役会のメンバーでもあるホーニック氏は、GitLabはパンデミック以前から技術分野では最大の分散型企業の1つであり、分散型チームを機能させるという課題に直接取り組んできたのだと語る。

そのホーニック氏がVowelの話を聞いたときに、そのチャンスに「すぐに飛び乗った」のだという。彼の会社(Lobby Capital)は通常、ビジネススペースを変革する能力を持つプラットフォームビジネスに投資している。その多くはSplunk(スプランク)やGitLabのような純粋なソフトウェア企業だが、その他は中小企業が財務業務を管理する方法を変革したBill.com(ビルドットコム)に似ている、と彼は付け加えた。

特に、何十年も進化することのなかった会議スペースを変革する「ミーティングOS」に対するVowelのビジョンを考えると、同社は変革の要素が凝縮されたような会社なのだとホーニック氏は語る。

「このことのすばらしさは私の目には明白でした。なにしろ私の日常は会議また会議の繰り返しなのですから、1日8回のZoom(ズーム)が普通になって、なんとかすべてを覚えておける方法はないものかと考えていたのです」とホーニック氏は語る。「この製品を使用している初期の顧客のみなさんと話して、もしこれがなくなったらどうするかと尋ねたところ、彼らが最初に言ったのは『泣くよ』でした。代替手段がないので、Zoomや他のツールに戻るだろうけれど、それは大きな後退になるだろうと答えてくれたのです」。

関連記事



画像クレジット:Vowel

原文へ

(文: Christine Hall、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。