作家の小説を声優が“音声化”して届ける「Writone」リリース、NOWらから資金調達も

スマートスピーカーの台頭などもあり、近年“音声”に関する市場やサービスが注目度を増してきている。

本日正式版がリリースとなった「Writone(ライトーン)」もまさに音声に関するプロダクト。少し大雑把な表現をすると、いわゆるオーディオブックに独自の工夫を加え、より民主化したものと言えるかもしれない。

Writoneは作家ユーザーが投稿したオリジナルの小説を、声優ユーザーが音声コンテンツに変えて配信するプラットフォームだ。リスナーは興味のある作品を読むのではなく、音声で聞くことができる。それも声優(声優の卵も含まれる)の声で、だ。

本の内容を音声化して提供するという点では上述した通りオーディオブックの概念にも近い。ただWritoneの場合は元となる作品を誰でも手軽に投稿できることに加え、ひとつの作品に対して複数の声優が参加できることがユニークな特徴となっている。

複数の声優が同じ作品を音声化している場合、リスナーは誰の声で聞くかを選ぶ楽しさも味わえる。もちろん作品から入るのではなく、声優をベースに「この人が配信しているなら買いたい」という理由で作品を発掘するような楽しみ方もできるだろう。

各声優ユーザーは音声化した作品の価格を自由に決めることが可能。現在は作品が売れた場合、価格がいくらであるにせよ売上の80%が声優に、20%が作家に分配される仕組みだ。

Writoneを開発するのは福岡に拠点を構えるLyact。同社は2018年4月の設立で、本日プロダクトの正式リリースとともにNOWとF Venturesを引受先とした第三者割当増資を実施したことも明らかにしている(具体的な調達額は非公開だが、数千万円前半になるという)。

代表取締役社長の古賀聖弥氏は高校生の頃から将来起業することを考えていたそう。卒業後に一度中国電力に就職するもすぐに都内のスタートアップへとキャリアチェンジをし、そこでプログラミングを学んだ。その後福岡でもスタートアップで働いた後、今年の4月にLyactを立ち上げた。

Writoneの着想は「もともと自身が本を読むのが好きだったものの、学生時代に比べて読書に使える時間が減ってしまった」こと。そして「小説家を目指し小説投稿サイトなどに作品を投稿するも、なかなか読んでもらえず課題感を感じている作家が多いと知った」ことからきているそうだ。

「実は当初小説の音声化にはグーグルのCloud Text-to-Speech(テキストを読み上げてくれるサービス)を使うことを検討していた。その段階で家入さんに相談する機会があり、声優や声優の卵がたくさんいて、専門学校を卒業したもののなかなか活躍の場がなくて困っている状況を知ったため、今のモデルにした」(古賀氏)

正式版のリリースに先立ち、作家と声優向けにベータ版を公開。すでに作家ユーザーが約300名、声優ユーザーが約200名登録していて、投稿された小説の数も800冊に及ぶという。

現時点のWritoneの機能はとてもシンプルで、「作家が小説を投稿できる」「声優が小説を音声化して配信できる」「リスナーが気になった音声小説を聞くことができる」といったことに限られる。

古賀氏の話では今回調達した資金も活用して開発体制を強化し、機能を拡充させる計画。たとえばテーマごとにコンテストのようなものを取り入れたり、ひとつの作品を複数の声優が分担して音声化したりできる機能(例えば複数のキャラクターが登場する小説において、キャラクターごとに別々の声優が担当するといたように)を追加したりといったことを検討していく。

「Writoneを通して小説を書くことが好きな作家や、声の仕事をしていきたい声優がより活躍できるような場所を提供していきたい」(古賀氏)

今年に入ってTechCrunchでもオトバンクのオーディオブック聴き放題サービス「audiobook.jp」や声のブログ「Voicy」、音声フィットネスガイドアプリ「BeatFit」といった音声に関するサービスを紹介してきた。

冒頭でも触れた通り、今後も音声に着目したプロダクトはまだまだ増えていきそうだ。

写真1番右がLyact代表取締役社長の古賀聖弥氏

投稿者:

TechCrunch Japan

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