信用できない大手ハイテク企業の自主規制、今、米国議会の行動が必要とされている

本稿の著者Arisha Hatch(アリシャハッチ)氏はColor Of Changeのキャンペーン担当副社長兼チーフ。

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2021年1月に起きた米連邦議事堂での暴動事件を受け、Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏がソーシャルメディア界から追放されてから2カ月以上が経った。前大統領の憎悪に満ちたコメントや偽情報は収束しつつあるものの、これからも引き続き警戒が必要である。

今こそ、トランプ氏や同氏の支持者、その他のトラブルメーカーが将来的に過激主義を助長しないようにするためにはどうしたらいいかを見直すべきである。誤報、陰謀論、嘘は情報インフラを破壊し民主主義を脅かす。こうした問題に社会としてどう対処すべきかを考える時なのではないだろうか。

Color Of Changeのバイスプレジデントとして、私と私のチームはこれまでにFacebookやTwitter、Googleといった数十億ドル(数千億円)規模のハイテク企業のリーダーたちと数え切れないほどの会合を持ち、彼らのプラットフォーム上の憎悪に満ちた人種差別的なコンテンツや偽情報に対して常に声を上げてきた。私たちはさらに、これらの問題に適切に対処するため、何百万人ものメンバーが求めている要求を提起してきたが、こういったソーシャルメディア企業にはユーザーや黒人コミュニティの安全を守るための緊急性や責任感が欠如していることがあまりにも多いのが実情である。

白人国粋主義者や極右過激派による連邦議事堂の襲撃は、ソーシャルメディアのプラットフォーム上で拡散されてきたヘイトスピーチや偽情報を何年もの間放置し適切に対処してこなかったハイテク企業にも責任の一端がある。多くのソーシャルメディア企業は、極右過激派や白人至上主義者、国内テロリストに対してプラットフォームを開放し、民主主義の破壊に加担してきたわけだが、この責任を追及し、二度と起こらないようにするためには相当な努力が必要である。

知識の共有システムを回復させ、オンライン上での白人国家主義者の組織化を排除するために、ビッグテックはこれまでのような受け身で表面的なアプローチを捨て、私たちのコミュニティや民主主義に害を及ぼしているこの問題に本気で対処しなければならない。同時に、ハイテク企業の動き監視するために、連邦政府による介入が不可欠なのは明らかである。

私は6年間にわたって企業が説明責任を果たすためのキャンペーンを展開し、ビッグテック企業のリーダーたちと関わってきたため、ソーシャルメディア企業には、民主主義とコミュニティを守るためのポリシーを実施するだけの力やリソース、ツールがあると断言することができる。しかし、これまで巨大企業のリーダーたちは、利益と成長を犠牲にしてまで、プラットフォーム上での危険な誤報、特定の個人や組織を標的にした憎悪表現、白人主義者の組織化を食い止めようとすることはなかった。

その上、巨大なPRチームを駆使し、こういった問題にあたかも対処しているかのように振る舞うのだ。例えばFacebookなどのソーシャルメディア企業は、その時々の問題に対処するため毎度一貫性のないポリシー変更を発表するという受け身な対応を続けている。今回の暴動が起こる前、白人至上主義者や極右陰謀論者、人種差別主義者たちが、こういったプラットフォームを利用して暴力を組織化、勧誘し、扇動することの危険性について、我々Color Of Changeのような提唱者の警告にFacebookのリーダーたちが耳を貸すことはなかった。私たちが長年推奨してきたにも関わらず、トランプ氏を追放することも、より強力なコンテンツ・モデレーション・ポリシーを導入することも、アルゴリズムを変更して誤った情報を広めるFacebookグループの拡散を止めることも彼らは行わなかったのである。

このような脅威は、国会議事堂への襲撃のずっと前から明らかなものだった。Color Of Changeと支持者たちが2020年夏に「#StopHateForProfitキャンペーン」を推進し、1000社以上の広告主がプラットフォームから数百万ドル(数億円)相当の広告を引き上げたときにも、また、Facebookが当組織とメンバーからの圧力を受けて2018年にようやく公民権監査を実施することに同意したときにも、そして2017年、死者を出したバージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者のデモが行われた前からも、ずっと明らかだったのである。

ソーシャルメディア企業が行動を起こし、差し迫った要求に目を向けるようになったのは、すでに大きな問題が起きてしまった後からのことだ。トランプ氏のアカウントを停止したのも、投票集計に不正があったと主張したグループを削除したのも、また2020年の選挙で投票所での暴力を扇動する投稿や新型コロナウイルスの誤報を積極的に削除したのも、すべて事が起きてからの対応である。しかし現在でさえ、これらの企業はFacebook監督委員会というとって付けたような組織を適切なポリシー実施の代替として立ち上げ、問題に取り組んでいる姿勢をアピールしつつ、トランプ氏のアカウント停止といった問題の最終決定を曖昧にし、責任を回避しているのである。

Facebook、Twitter、YouTubeをはじめとする多くのビッグテック企業は、自社の利益や評判が脅かされると行動を起こすものの、彼らのビジネスモデルはサービス利用の最大化のみを目的として構築されているため、行動が実際に起こされるのは常に問題が起きた後となる。コンテンツが偏向的であればあるほど、エンゲージメントが高まり、コメントやシェアが多ければ多いほど我々の注目を集め、広告主にアピールすることができる。ビッグテックのリーダーたちは、積極的に自主規制を行う意志も能力もないことを証明し、だからこそ議会が直ちに介入しなければならないのである。

議会はビッグテックの巨大な力を抑制するための連邦規制を制定すべきであり、議員は私たちの日常生活に現実的な変化をもたらすような政策、つまり、黒人をはじめとする社会的に弱い立場にいるコミュニティをオンラインとオフラインの両方で保護するような政策を策定しなければならない。

企業の説明責任をないがしろにし、黒人のビジネスや労働者に影響を与える大手ハイテク企業の独占状態を打破するため、より強力な独占禁止法が制定されるべきである。私たちのデータから得られる利益が搾取を助長するために使用されないようにするために、包括的なプライバシーおよびアルゴリズムによる差別禁止法を制定する必要があり、また黒人や低所得者のコミュニティにおける情報格差を解消するために、ブロードバンドアクセスを拡大する他、インターネットサービスプロバイダーがコンテンツや機器によって異なる料金を請求できないようにしてネットの中立性を回復させるべきである。そして、第230条が公民権法の遵守からプラットフォームを免除するものではないことを明確にすることで、情報操作やコンテンツの適正化を図る必要があるのだ。

Color Of Changeをはじめとする活動家やアドボカシーグループからの圧力により、すでに多くの進展が見られている。2020年だけでも、Zoomなどの大手ハイテク企業は多様性の専門家を雇い、Googleは右翼団体プラウドボーイズのウェブサイトとオンラインストアをブロックする措置を取り、TikTokのような主要なソーシャルメディアプラットフォームは、憎悪に満ちたコンテンツを禁止するためのより強力なポリシーを採用し始めた。

しかし、巨大テック企業がソーシャルメディアのプラットフォーム上で煽られた誤報、憎悪、暴力に対処するため、これまでしておくべきだった対策を今更始めたところで、さほど褒められたことではない。我々は次のPR活動や白々しい声明、あるいはFacebookがトランプ氏のアカウントを復帰させるかどうかを決めるのを単に待つつもりもなく、またさらに多くの人の命が犠牲になるまで傍観するつもりもない。

連邦政府と規制当局は、ただちに政策変更を実施してビッグテックに説明責任を負わせるべきである。我が国のリーダーには、ビッグテックが民主主義や地域社会に及ぼしている害悪から人々を守る責任があり、ソーシャルメディアのプラットフォームを規制し、デジタル経済における危険な誘因を変革すべきなのである。連邦政府の介入なしには、ハイテク企業は歴史をひたすら繰り返すことになるだろう。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ソーシャルメディアアメリカColor Of ChangeSNS

画像クレジット:Martin Barraud / Getty Images

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(文:Arisha Hatch、翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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