倉庫用ドローンがいよいよ本格化

ドローンは、軍用の恐ろしいのを除けばかっこいいし、楽しいし、良いことだらけだ。しかし一般的にクワッドコプターには、その有用性に対して疑問もある。特に消費者製品の場合は、もっぱら趣味と映像撮影用に限られている。

これまでは、農場の監視用や不動産などの分野でのおもしろい使い方はあったが、それらはどれも映像機能の応用だ。しかしカメラと映像処理次第では、いろいろな仕事ができる。最近登場してきたものの中で特におもしろいのは、倉庫用ドローンだ。ドローンというとアウトドアしか想像しない人は「屋内」と「ドローン」の組み合わせに違和感を覚えるかもしれない。

さかのぼるとTechCrunch主催のスタートアップコンペであるDisrupt Battlefieldには、倉庫用ドローンの企業が2社登場した。2016年のIFM(Intelligent Flying Machines)と、それから2年後のVtrusだ。でもそれは、ドローンを倉庫や工場に持ち込もうとするスタートアップの巨大なリストに比べると、氷山の一角にすぎない。

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このリストに最近載ったCorvus Roboticsは、YCが支援するスタートアップで、おそらくその名前はカラスといった驚くほど知恵のある鳥にあやかっている。もちろん、ある種の推理小説のように、殺人を教えてくれるからすではない。少々議論の余地はあるだろうが、同社はその製品を「世界で初めての倉庫用在庫管理ドローン」と呼んでいる。

それでも、おもしろい製品ではある。それは倉庫の中を飛び回ってパレットをスキャンし、在庫を調べる。IEEE Spectrumの記事によると、同社のレベル4の自律ドローンのネットワークは、1時間に200〜400のパレットをスキャンし、飛ぶことは「鳥」にとって重労働であるため合間に充電も行なう。

画像クレジット:Third Wave Automation

倉庫業界には、倉庫の完全自動化という見果てぬ夢がある。この夢に、投資家たちも群がる。Third Wave Automationはこのほど、Norwest Venture Partnersがリードする4000万ドル(約44億円)のシリーズBを発表した。これにはInnovation EndeavorsやEclipse、それにToyota Venturesが加わった。後者は、このベイエリアのスタートアップと組んで自律型フォークリフトを開発している。フォークリフトは、毎年のように人身事故が多いからだ。

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CEOのArshan Poursohi(アーシャン・プルソヒ)氏はこう述べている。

私たちはあらゆる種類のロボットを開発してきましたが、そのロボットはすべて、どこかの物置に放り込まれています。現在の花形産業Google、私たちの時代のSun Microsystemsのようなテクノロジー企業が主役であり、ロボットはお呼びでないからです。

それでも同社は、2022年末までには100台の倉庫ロボットを販売する予定だ。

画像クレジット:InVia Robotics

一方、同じく倉庫の自動化を志向するinVia Roboticsは、2021年7月末に3000万ドル(約33億円)のシリーズCを発表した。テクノロジー超大手のMicrosoft(M12)とQualcomm(Qualcomm Ventures LLC)がラウンドをリードし、同社の総調達額は5900万ドル(約65億円)に達した。このラウンドには、Hitachi Venturesも参加した。同社によると、パンデミックのおかげで2020年には売上が600%成長したという。

 

今週のロボティクス記事は倉庫だけでまとめようと思ったが、そうもいかない。次はGeneral Electric(GE)の自律ロボットATVerだ。この何でも屋のテクノロジー企業は今、米国陸軍と一緒に自律ロボットの現場テストをしている。ロボティクスの進歩のためには、良かれ悪しかれ、軍による投資の役割が大きい。

GEのロボティクス担当Shiraj Sen(シラジュ・セン)氏がプレスリリースで「私たちのプロジェクトと米国陸軍とのパートナーシップにより、自律システムの重要な進歩を実現しました。このプロジェクトで実現した進歩は、未来の完全自動運転車の実用化を加速するだけでなく、エネルギーや航空やヘルスケアなど、人びとが毎日依存しているその他の産業の自律化をさらに促進するでしょう」と述べている。

Sarcos

といった矢先、今度はSarcosが米国時間8月5日、T-Mobileと提携して後者の5Gの遠隔操作を同社のGuardian XTロボットに行わせると発表した。5Gの低レイテンシーの接続の利点が話題になるときはもちろんロボティクスも引っ張り出されるが、むしろそれは率直に言って、プレスイベントのステージの方がふさわしい話題だ。違いますか、Verizonさん。なぜならロボットは、確実に人びとを楽しませるテーマだからだ。実在するシステムに使われるのも、良い見世物だ。

そのリリースは次のように述べている。

T-MobileとSarcosのコラボレーションは5Gの統合に始まり、T-Mobileの広帯域で低レイテンシーな5Gネットワークが駆動するリモート視聴システムの開発へ向かいます。これにより労働者や管理者、外部の専門家などがリモートのどこにいても、人間のオペレーターが現場で行っている仕事を確認することができる。開発の第2期において、T-Mobileの5Gワイヤレスネットワークの統合により、Guardian XTのテレオペレーションが5Gで可能になり、通信事業者の柔軟性が増して、遠距離からのタスクの実行が可能になります。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:ドローン倉庫Third Wave AutomationinVia Robotics資金調達General Electric5G遠隔操作SarcosT-Mobile

画像クレジット:Corvus Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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TechCrunch Japan

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