個人が寄付金管理口座を簡単に低コストで開設できるアプリ「Daffy」

シリコンバレーで活動する有名人Adam Nash(アダム・ナッシュ)氏は、あなたがもっと寄付をしたいと思っていると考えており、さらに「寄付」という行為をとてもシンプルなものにしようとしている。

そのようなメッセージを筆者はナッシュ氏と先週末に話をしたときに受け取った。同氏の直近のフルタイムの職務にはDropbox(ドロップボックス)の副社長と、財務顧問会社Wealthfront(ウェルスフロント)の社長兼CEOがあり、自動車eコマースプラットフォームShiftとAcornsの取締役も務めている。

実は、ナッシュ氏が現在構築しているDaffyという寄付のための新しい金融プラットフォームは、マイクロ投資アプリAcornsでの最後の役割がきっかけで生まれたものだ。DaffyはRibbit Capitalがリードし、XYZ Capital、Coinbase Ventures、50人以上の著名なエンジェル投資家(Reid Hoffman[リード・ホフマン]氏、Aaron Levie[アーロン・レヴィ]氏、Amy Chang[エイミー・チャン]氏など、リストは続く)が参加したシリーズAラウンドで1710万ドル(約20億円)を調達したばかりで、目的は人々がより頻繁に、もっと寛大になれるよう支援することだ。

具体的には、どう機能するのか。Daffyは、慈善寄付のための401(k)のようなものであるドナー・アドバイズド・ファンド(DAF)を開設して利用する、最も低コストで摩擦の少ない方法を提供している。DAFは、お金あるいは株式や暗号資産を寄付することで寄付時に税優遇を受け、その寄付金は管理された投資口座に移動し、時間の経過とともに増えることが期待されるものだ。後日、寄付者はその資金を自分の選んだ慈善団体に寄付する。

DAFは、超富裕層や、億万長者ではないが生活に困っていない人々の間で、含み益に対する課税を回避する手段として非常に人気がある。National Philanthropic Trust(NPT)によると、2021年時点で平均的なドナー・アドバイズド・ファンド口座は16万3000ドル(約1880万円)で、現在DAFには十分な資金(約16兆円超)が眠っており、2021年のDAFから適格慈善団体への助成金は推定346億7000万ドル(約4兆20億円)に達し、2019年に比べて27%増加した。NPTはこれを「ハイウォーターマーク (最高水準)」としている。

DaffyはDAFを開放することで、経済的なスペクトルを超えてより多くの人々が参加できるようにするつもりだとナッシュ氏は述べた。そのための第一歩は、より手頃な価格でアクセスできるようにすることだ。SchwabFidelityVanguardの顧客は現在、ドナー・アドバイズド・ファンドを設立することができるが、これらの金融大手はそれぞれ資産の0.60%の管理手数料を徴収しており、これは長期的に積み重なる可能性がある(Vanguardは最低寄付額2万5000ドル[約290万円]を口座開設要件としている)。

一方、Daffyは最低100ドル(約1万1550円)の寄付を一度だけ行う必要があり(あるいは、100ドルに達するまで毎週10ドル[約1155円])、寄付の金額にかかわらず、月3ドル(約350円)、年間36ドル(約4200円)の手数料を徴収する。この手数料は「より多くの費用がかかる」評価済みの株式や暗号資産も寄付する場合は月20ドル(約2300円)になるとナッシュ氏は説明する。しかし、その資産が相当なものであるなら、これはおそらくリーズナブルな設定だろう。

DAFがより広く採用されるための第2ステップは、アクセスを容易にすることだ。この点では、カリフォルニア州ロスアルトスを拠点とするDaffyは前進している。実際、Daffyのアプリは現在Apple App Storeからダウンロードでき、Daffyはこのプラットフォームで利用できる初の「フル機能」DAFだと主張している。

Daffyは現在、9つのファンドにアクセスできるようにしているが、今後さらに多くのファンドが登場する見込みだとナッシュ氏は話す。

この大きく成長する経済の一部に取り組んでいるのは、Daffyだけではない。Fidelityのような大手に加え、Y Combinatorのアクセラレータープログラムを最近終了したCharityVestのようなスタートアップも同じ顧客を追い求め始めている。

また、低コストであるため、どのように生き残り、成功するかという問題もある。それはそうとして、従来はもっと手数料の高いDAFを利用していたが、数千ドル(数十万円)とは言わないまでも数百ドル(数万円)の管理コストを節約するためにDaffyに乗り換えるような顧客を、Daffyがますます自社プラットフォームに引きつける可能性はありそうだ。

ケチな大富豪について質問されたナッシュ氏は、Daffyにはすでに「7桁」のポートフォリオを持つ顧客がいると述べ、Daffyがこれ以上高額の扱いをする計画はないと主張した。また、Daffyが提携するファンドから紹介料を受け取っていないこと、資産額に関係なくすべての顧客を歓迎することも明確にした。

おそらく、一部の顧客はロスリーダーと同氏は見ているのだろう。実際、多くの金融サービスのスタートアップと同様、DAFはDaffyが他の多くの商品を提供するための最初のステップであるように見える。しかし、同氏は、まだすべてを発表する準備ができていない。

「これは間違いなく、より大きなもののためのくさびですが、金融サービスを目的とはしていません」とナッシュ氏は語った。「これはメガバンクが手がけるものではありません。当社の使命は、人々がもっと頻繁に、そしてより寛大になり、自分より恵まれない人々のために積極的にお金を準備するのを助けることです。人々が寄付をする方法、組織が資金を調達する方法はたくさんあり、これらはすべて我々が非常に楽しみにしている分野です」と同氏は続けた。

しかし、今のところナッシュ氏は、Daffyをユーザーの毎日の習慣にすることに全力を注いでいる。それは野心的なことだと同氏は認めるが、人はテクノロジーの助けを借りてあらゆる種類のルーチンを確立するものだ。

「CalmやHeadspace、あるいは宗教関係のアプリなど、人々が自分の望む生活を送れるようにするためのアプリやサービスはますます増えています」とナッシュ氏は指摘する。多くの人が「なりたい自分になるために、サービスを利用しています」ともいう。それが寛大さ、慈善活動、チャリティーに適用されない理由はない。

画像クレジット:Dropbox

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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