停滞ステージをいかに乗り越えるかが、スタートアップの命運を分ける

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編集部記Eric Paleyは、Founder Collectiveのマネージングパートナーである。

シード資本が口座に入金されると、どのスタートアップも楽観的な思考に支配される。ファウンダー、チームメンバー、投資家、全てが、一つのビジョンに心を踊らせ、そのスタートアップが世界を変えるような大企業に成長すると信じている。

全てが順調に行って、プロダクトの結果が素晴らしければ、その楽観的な思考は、真の幸せに変わる。大勢から集めた賭けに皆で成功することほど喜ばしい体験はないだろう。どのスタートアップの理想であり、起業した者全員が熱望していることだ。

しかし、壮大なビジョンの実現を約束して資金調達を行ってからユニコーン企業の評価を得るまでの過程で、どのスタートアップも必ずと言って良いほど、忍耐を必要とする試練に立ち向かうことが求められる。この「停滞ステージ」が長いほど、スタートアップの重要な人間関係に負荷がかかり、誰もが思い描いた理想像が遠のいていくように感じる。

ストレスは破綻する大きなリスクを招く。投資家にもファウンダーにもストレスがかかるが、共同ファウンダー間、あるいはマネジメントチームのメンバー内で、その停滞ステージから抜け出すために考えるソリューションが違う場合は注意が必要だ。このステージでの行いが、そのスタートアップが生き延びるか、息絶えるかの道を決定するだろう。

「停滞ステージ」にいることを自覚する

根気強さが求められる停滞ステージは一般的にはこのような様子だ。スタートアップが資金調達に達成した後、遅れはあったものの、やっと市場にプロダクトを出すことができた。全員がそのプロダクトがヒットすることを期待しているが、結果は落ち込むほどではなかったが、成功とも呼べないものだった。

しかし心配することはない。チームは、何を直すべきかを知っていると今のところは思っている。そもそもローンチしたのは使用できる最小限のプロダクトであり、ここでの目的はそこから学びを得ることだ。遅れはしたものの、優秀な人材からたくさんの学びを得ることができた。プロダクトの修正するのにいくらかの時間が必要だ。

またいくらか遅れが発生したものの、新しいバージョンをリリースした。結果は前回より良かったが、誰もが期待していた目標にはまだ遠い。このプロセスが繰り返され、その間にチームメンバーの幾人かは去っていった。何を直せば良いか分かりそうな人を採用して救世主の認定Tシャツを渡すが、ピースが増えても複雑なパズルを解くことができないように感じている状態だ。

この例は、プロダクトに焦点を当てているが、的確なセールスのアプローチ方法、マーケティングチャネルの開拓、オペレーション計画、ビジネスモデル、サプライチェーンを探しあてるのにも、同じように停滞を余儀なくされることがある。会社の試練が何にせよ、明確な進捗が感じられない場合、ファウンダーとそのスタートアップは更なる忍耐を強いられることになるだろう。

停滞ステージから抜け出す

残念ながら、どんなに順調に見えるスタートアップでもこのような試練を通らなければならない。ファウンダーと役員には、この避けられない停滞スタージを共に抜け出すにはどうしたら良いかを考える必要がある。

周りのリーダーシップへの信頼度がこのステージを攻略する鍵となる。もし投資家やチームメンバーが芳しくない結果や、繰り返されるプロセスの中で、リーダーへの信頼を失うことになったら会社はとても不安定な状態になるだろう。

停滞ステージでできる最大の間違いは、問題の存在を否定することと誤ったソリューションで全てが上手くいくと装うことだ。

投資家は助けや必要な支えを提供することもできるが、問題に対する意見が対立したり、問題解決の失敗が繰り返されたりすることで、ファウンダーへの信頼が失われていく。ファウンダーが本当にソリューションを持っているのか、そしてそのスタートアップを導くことができるのか、疑念が生まれてくる。疑り深いチームメンバーは、他の仕事を探し始めるだろう。不信感がスタートアップをゆっくりと追い詰めるのだ。

停滞ステージを切り抜けるためのポイントをまとめた。

短い方が良い。最も重要で最も分かりやすいことは、停滞している期間は短い方が良いということだ。前に進んでいる明確な指標があれば、物事を進めるのが簡単になる。小さな成功でも、それを認識することがとても重要だ。大きな課題に対して常に前に進んでいるという感覚は、社内に問題解決に近づいているという自信を与え、忍耐を受け入れられるようになる。停滞ステージを切り抜け、一段階進んだという成功体験は、次の停滞ステージを耐え抜く力を会社に与えることにもなる。

共通認識を持つこと。2つ目は、役員とチーム内で会社が取り組むべき課題を正確に認識することだ。誰かが進捗があったと感じていても、投資家やファウンダーやその他のチームメンバーが、解決すべき課題を異なる視点から見ていて、会社の進捗につながっていないと否定されることほど、ストレスの貯まることはない。

プロダクトに対して近眼にならないこと。 3つ目は、プロダクトの進捗について共有する時、投資家のプロダクトに対する反応を過大評価しないこと。投資家はプロダクトの専門家ではない。彼らは、会社を前に進めるのならどんなプロダクトの仮説に対しても大抵、前向きな反応を示すだろう。そして、カスタマーの反応が芳しくないプロダクトの変更バージョンを何回も見せないことだ。

プロダクトにおける変更点は、仮説であって進歩ではない。投資家は、実質的な結果を見るまで喜びはしないだろう。何度も思わしくない結果しか残せないプロダクトのバージョンを見続けたら、どこかの時点から、投資家はファウンダーへ不信感を募らせることになる。ファウンダーのプロダクト戦略の考え方が、そのスタートアップを次のステージに進めるのに最適ではないと思うようになるだろう。

停滞ステージでは、資金調達は行わないこと。停滞ステージにいる間は、資金調達は絶対に避けるべきだ。既に投資している投資家は新たなチェックにサインするのを躊躇うだろうし、他の投資家に対しても自信を持って投資を薦めることができないからだ。資金調達中、どこかの時点で何かが順調に進まず、停滞ステージに突入することが必ずあるということを覚えておくべきだろう。

そのことを念頭に入れ、成功を確信している時期に試練に耐え抜くのに必要な資金を調達することだ。停滞ステージで資金が尽きることはスタートアップにとって致命傷となる。

生き抜くこと。私は、停滞ステージを何年も耐えられる企業も数ヶ月で耐えられなくなってしまう企業も見てきた。停滞ステージは不可避なもので、投資家、ファウンダー、チームメンバーとの信頼関係という面で、破綻する高いリスクに晒される期間であり、この期間がビジネスの成功と失敗に大きな影響を与える。

この期間に投資家やチームメンバーからの信頼を失うと、重圧に耐え切れずに白旗を上げることになる。共に助け合い、課題とソリューションの計画を明確にし、一定の進捗を見せ続けることができれば、成功のために必要な停滞ステージの期間を無事乗り切ることができるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

投稿者:

TechCrunch Japan

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