元グノシー松本氏がDMMの新CTO就任、『モチベーション×能力』で測る組織づくりへ

「最初に会ったとき、この人は宇宙人だと思った」ーーこれは、DMM最高経営責任者の片桐孝憲氏が同社の新しいCTOのことを表した言葉だ。

DMMは9月14日、グノシー元CTOの松本勇気氏を新たに迎え、同社の新しいCTOとして起用する人事を発表した。TechCrunch Japanでは片桐氏と松本氏の両名にインタビューを行い、その背景を聞いた。

新CTOに就任する松本氏は、大学在学中に学生ベンチャーのLabitなど複数のスタートアップにてiOS/サーバーサイドの開発を担当し、2013年1月にグノシーに入社した。2014年6月には開発本部執行役員に就任。そして2015年からはグノシーのCTOとして、KDDIと共同開発した「ニュースパス」の立ち上げや、ブロックチェーン事業子会社のLayerXの立ち上げなどを手がけてきた人物だ。

ニュースパスチームの立ち上げの際には、松本氏はCTOの役職を返上してみずから開発の現場に参画。立ち上げから8ヶ月でチームのかたちを作り、再びCTOに就任した。

一方のDMMでは、片桐氏がCEOに就任した直後から、前CTOの城倉和孝氏と新しいCTOの招聘を検討していた。城倉氏から「自分の代わりにCTOになってほしいヤツがいる」と紹介されたのをきっかけに、松本氏と片桐氏が出会ったのは2018年春ごろのことだ。

当初、片桐氏は松本氏が「DMMに来てくれる可能性は低いだろう」と思っていたが、可能性を探るためにまずは3人で食事に行くことにした。

「(松本氏は)宇宙人みたいな人だなと思った。僕がDMMに入ってすぐの頃からCTO探しは続けていたが、DMMにフィットしてかつ未来が見える人はなかなか見つからなかった。みんな大人過ぎるなと。その一方、松本くんは飄々としていて、自分にもよく分からないような新しい未来の話をしてきた。彼のようにエンジニアとして具体的にビジネスの話をできる人もなかなかいない」(片桐氏)

松本氏を新しいCTOとして迎え入れたいと思うDMMだったが、当時の松本氏はグノシーを退職したあと独立して起業することも検討していた。そこで片桐氏と城倉氏は、月に一度のペースで松本氏との“親睦会”を行うことにした。松本氏を連れてDMMのマイニングファームを見せたり、金沢にある開発拠点を訪れ、現地のスーパー銭湯のサウナで語り合い、そのままその銭湯で一泊するなんてこともあったそうだ。

一方の松本氏は片桐氏について、「楽しそうに仕事をする人だと思った。僕自身も仕事においてモチベーションは非常に重要だと思っているので、ここに来れば何か楽しいことができると思いました」と話す。2018年6月にDMM会長の亀山敬司氏と面会する際には、8割方こころは決まっていたという。

創業19年目のカルチャーを作り変える

そもそもDMMが新しいCTOを探し始めたのは、片桐氏がCEOに就任してすぐのことだった。その背景には、以前からビジネス寄りの人材が多かったDMMを“テックカンパニー”にしたいという想いがあった。

「自分が最高経営責任者に就任するとき、亀山さんとも『DMMが今よりももっとテック寄りの企業になれたら成長が加速する』と話していた。僕が呼ばれたのもそのためだ。それを実現するために、技術的な方針を示してくれる人、エンジニアの見本となるような人物が必要だと思っていた」と片桐氏は話す。

片桐氏は現時点のDMMについて、「テックカルチャーが育つ余地はまだある」と評する。社内にはエンジニア出身の事業部長が少ないなど、改善の余地は大きい。

これまでにもテックカルチャーを根付かせるための改革を進めてきたが、片桐氏が松本氏に期待するのは、その改革をさらに加速させ、DMMを技術思考の会社へと作り変えることだという。

「Netflixは目標とするテックカンパニーの1つ。自分の親がNetflixを利用しても、『なんか面白い映画がどんどん出てくるな』くらいにしか思わないだろう。そんな風に、ユーザーが全然気づかないところで、実はデータ分析やテクノロジーが活かされている点が素晴らしいと思う」(片桐氏)

では、そのテックカンパニーを作りあげるためにはどうするか。

これからはじまるDMMの組織改革について、松本氏は「チームの総力を測る方程式は、『モチベーション×能力』だと思っている。チーム全体のモチベーションを高めるには、会社の戦略や文化に共感してくれる人を採用し、そういう人たちがモチベーションを高く維持したまま働けるような仕組みを作らなければいけない。ビジネスとエンジニア、どちらが偉いということではなく、どちらも対等に会話できる環境を作っていきたい」と話した。

総勢450人のDMMエンジニアを率いる29歳の新CTOの前には、創業から19年間で培ったカルチャーを作り変えるという大仕事が待っている。

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。