元テスラのCIOが率いる自動車小売プラットフォームTekionの価値が3倍に

1年前、TechCrunchは、元TeslaのCIOであるJay Vijayan(ジェイ・ヴィジャヤン)氏が追い求めている計画についてお伝えした。それは、彼がTeslaで開発に携わったような、エンド・ツー・エンドで自動化されたSaaSプラットフォームを使って、自動車ディーラーを21世紀に連れて行こうというものだ。顧客は、このプラットフォームを使って、自分の好みに合った車を注文することができる。ディーラーは、このプラットフォームを使って、リアルタイムで在庫を把握し、サービス予約のために顧客をシームレスにチェックインすることができる。OEMはこのプラットフォームを使って自社の部品がディーラーのどこにあるかを正確に把握することができる。

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ヴィジャヤン氏の説明によれば、このソフトウェアを導入することで、ディーラーとOEM企業の双方がコスト削減と効率化を図ることができるという。カリフォルニア州サンカルロスにある彼の会社Tekion(テキオン)も、この流れの重要な引率役を果たしているようだ。

ヴィジャヤン氏によると、同社の収益は2020年の3倍に成長し、Tekionのソフトウェアを使用しているディーラーの州数は28から39に増え、国際的な企業になるための計画の一環として、カナダで最初のディーラーとの仕事を始めたばかりだという。

これにより、シードステージにおける資金調達サイクルの第4ステージシリーズDで同社は2億5000万ドル(約278億円)の資金調達を発表し、評価額は1年前の10億ドル(約1114億円)から35億ドル(約3899億円)に、その資金総額は1億8500万ドル(約206億円)から4億3500万ドル(約484億円)に拡大した。このラウンドはAlkeon CapitalとDurable Capitalが共同でリードしており、その他の投資家には、現代自動車、米国内のいくつかのディーラーグループ、そして以前からの支援者であるAdvent InternationalとIndex Venturesが含まれている。

興味深いことに、2021年9月の新車販売台数を26%も減少させた世界的なチップ不足やその他の部品供給の混乱は、Tekionにとってはプラスの影響しか与えておらず、Morning Brewの最近の記事はその理由を以下のように述べている。

オハイオ州コロンバスにある自動車グループの社長に話を聞いたところ、在庫が不足しているため、チップ不足の前には4時間かかっていた販売が、今では52分で終了しているという。またこの品薄状態は利益を押し上げており、買い手は新品・中古品を問わずより高い価格で購入し、自動車小売業者は在庫が少ないことで営業コストを削減できるというメリットがある。

また、Tekionや競合他社の技術により、販売店は、品薄状態に耐えながら、車を長持ちさせたいと願っている消費者へのサービスをより迅速に行うことができるようになったと思われる。

実際、フロリダ州のフォートローダーデールにあるディーラーは、2020年の第1四半期と比較して2021年の第1四半期に利益が197%も急増したとMorning Brewに語っている。

「供給は少ないですが、需要は多いので、誰もがたくさんの利益を出しています」とヴィジャヤン氏はTechCrunchに語った。「ディーラーもOEMも、かなりのマージンを稼いでいます」。

また、Tekionは「そのような成長の中で非常に強い存在」であり、ヴィジャヤン氏は、在庫が需要に追いつき始める来年はさらに良い年になると予想している。

「来年のある時期には、市場にある程度の調整が入ると思います。そして、当社の技術プラットフォームは、ディーラーとOEMの両方が、どこにビジネスの焦点を当てるべきかという洞察を提供するために学習し、進化し続けるので、この修正をよりスムーズにナビゲートすることができると信じています」。

カリフォルニアとインドのベンガルールに拠点を置くTekionの成長は、大部分は自然なものであるようだ。自動車業界はマーケティングに莫大な費用をかけ、積極的な営業活動を行うことで知られているが、現在1350名の従業員のうち、営業を担当しているのはわずか17名である。「マーケティングには一切お金をかけていませんし、それはほとんど無視できる程度のものです。私たちは口コミで成長しています」。

BMWや日産・ルノー・三菱アライアンスと同様に、Tekionに早くから出資しているゼネラルモーターズと3月に契約を結んだことも、確実に同社に貢献している。

それぞれのフランチャイズが参加するかしないかを選ぶことができるものの、現在、GMのディーラーは、Tekionのホワイトレーベルのディーラー管理ソフトウェアを使用して、顧客がChevy、Cadillac、Buick、GMCブランドの電気自動車を簡単に購入できるようにし始めている。このプラットフォームは、ユーザーが近くのディーラーで特定のGM車を検索し、インターネット上で取引の一部を完了することができるGMの既存のShop. Click. Drive.プログラムに似ているものの、それ以上に優れた操作性を持っていると言われている。

少なくとも、シボレーの副社長は、2021年初めにAutomotive Newsとの会話の中で、このソフトウェアをGMの社内プログラムを「強化」したようなものであり「ゲームチェンジャー」であると表現していた。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Yuta Kaminishi)

投稿者:

TechCrunch Japan

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