元Uber社員がブルーカラー向け物流職マーケットプレイスで5.5億円調達

ネバダ州のUber(ウーバー)でゼネラルマネージャーを務めていたJason Radisson(ジェイソン・ラディソン)氏は、いわゆるブルーカラー労働者を、彼らを求めている雇用主と結びつける手段が必要だと気づいた。

そこで2018年にShift One(シフトワン)のアイデアが生まれた。労働者と雇用主を繋ぐマーケットプレイスだ。対象とする職種は、物流・配達のラストマイル、eコマースの発送業務、大規模イベント管理などとなる。

2019年に正式スタートして以来、Shift Oneのプラットフォームに登録された労働者の数は2万5000人に増えた。その多くが雇用される時点で失業していたという。そして現在、米国とコロンビアにAmazon(アマゾン)、NASCAR、Weee!、Mensajeros Urbanos、Consumer Electronics Show(CES)など約50社のクライアント企業がいる。

このサービスは雇用主と労働者を結ぶだけでなく、勤務時間、税金、出退勤、生産性、作業命令の管理なども支援する。

事業の成長とリーチ拡大を目指して、Shift Oneは最近シードラウンドで520万ドル(約5億5000万円)の資金を調達した。ラウンドをリードしたのはCity Light Capitalおよび、Tinder(ティンダー)共同ファウンダーのJustin Mateen(ジャスティン・マティーン)氏率いるJAM Fundで、ほかにK50 Ventures、Ventura Investments、Human Ventures、エンジェル投資家のFelipe Villamarin(フェリペ・ビジャマリン)氏が参加した。

人員を見ると、Shift Oneの創業チームは全員がUberまたはLyftで働いた経験を持つとCEOのラディソン氏は言う。初期の技術チームはすべて元Uber社員だった。

会社を始めた主な動機は「Gig 1.0に内在する問題のいくつかを解決」するためだった、とラディソン氏は語った。

「もっと労働者にとって公正な環境にして、人々がと多くの物流職を転々として賃金が低いという負の連鎖を断ち切りたかったのです」と同氏はTechCrunchに語った。「彼らに安定を与えたいのです」。

それと同時に、物流業社が良い労働者の確保に苦労していることも彼は知っていた。Shift Oneは、入社間もない社員から管理者、倉庫マネジャーまでさまざまなスキルレベルの人たちの協力を得て作業した。

物流労働者の多くが、かつて福祉手当のない契約社員として働いていたことを知っているShift Oneは、同プラットフォーム上の全労働者に対して雇用された初日から「低い積立金」で福祉手当を完全支給する。さらに当座預金口座とデビットカードも支給する。

「登録されている労働者の多くは銀行口座を持たず、給与小切手を受け取ることさえできませんでした」とラディソン氏は言った。

同社はさらに、労働者ができる限り「密なスケジュール」でチームの一員として働けることを目標にしている。

「私たちのチームに団結力があり、高い機能を発揮することは私たちの価値提案の一部です」と彼はつけ加えた。

これまでサンフランシスコ拠点のShift Oneは自己資金のみで賄われていた。収益は「わずか」に黒字で、その利益を事業拡大のために再投資してきた。2020年の売上は「元が少ない」と言いながらも10倍に伸びた。同社のオフィスは、ネバダ州ラスベガス市、ミネソタ州ミネアポリス市、コロンビアのボゴタ市およびルーマニアのブカレスト市にある。

将来に向けて、新たな資金は新市場への拡大(現在米国の12州で運営している)、20名の従業員の増員、テクノロジーロードマップの加速に使用する計画だ。

新型コロナウイルス感染症が続く「過去4~5カ月、当社はラストマイルに大きく注力しました」とラディソン氏は言った。「大学に行かず、長年低い給与に甘んじている何百万という人たちにチャンスを与えたい。彼らに成功のチャンスをもたらしたいのです」。

JAM Fundの責任者でTinderの共同ファウンダーでもあるマティーン氏は、Shift Oneが労働の「逆淘汰」問題を一新すると信じている。

「ギグワークは季節性と供給力で決められている。どちらも労働者にとってあまり良いことではありません」と彼は言った。

フロリダ州マイアミ市長のFrancis Suarez(フランシス・スアレズ)氏も、ブルーカラー労働者は新型コロナの影響を最も強く受けていると指摘する。

Shift Oneによって「労働者は公正な報酬を受けられる職と、成長し進歩する機会を与えられます」と同市長が書面の声明で語った。「企業は、質の高い労働者の安定した予測可能な供給源を利用できるようになります。そしてマイアミ市は、高い雇用率と強い地元企業による好循環の恩恵を受けます」。

カテゴリー:HRテック
タグ:Shift One資金調達物流ギグワーカー

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nob Takahashi / facebook

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TechCrunch Japan

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