免許電子化プラットフォームのSigmaが435万ドルを調達

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モバイルアプリ検索エンジンQuixeyの元社員が新たに設立したSigmaは、今でもアナログな手段に頼っている資格の認証や登録業務をオンライン化することを目指している。このゴールを実現するため、この度同社はAndereessen Horowitsが中心となったシードラウンドで435万ドルを調達した。

彼らのビジネスのアイディアは、2014年末にSigmaの共同ファウンダー兼社長のTomer Kaganが友だちと一緒に、ベリーズへスキューバ旅行に行ったときに生まれた。彼らはそれぞれ、Professional Association of Diving Instructors(PADI)から発行された免許を持って旅行先へ向かった。

当時、PADIが発行する免許はダイビングをする上で欠かせないもので、携帯していなければダイビングができないようになっていた。しかしプラスチックの免許に頼った確認というのは、ダイバーだけでなく、インストラクターやダイビングショップにも問題を生じさせていた。

ダイバーはダイビングの記録を自分たちで台帳に残さなければならず、ダイビングショップやインストラクターがその証拠をPADIに渡したあとに免許が発行されていた。つまりダイビングに関わる人全員が、他の人から受け取った情報を信じながらそれぞれの役割を果たしており、しかもその情報を検証するのも簡単ではなかった。

Kaganや彼の友人は、今の時代になぜ免許がオンライン化していないのだろうと考えずにはいられなかった。なぜ紙の台帳やプラスチックの免許というアナログな仕組みに縛られなければいかないのだろう?全ての記録をオンライン化するにはどうすればいいのだろう?

その頃KaganはQuixeyのCEOを務めていたが、そのアイディアを捨て去ることができなかった。そこで2015年の秋に、彼は自らのアイディアを100人ほどの小さなフォーカスグループで発表した。そして翌年1月、Quixeyでパートナーシップ担当ヴァイスプレジデントを務めていたJacob Orrinが、Kaganにアイディアを実行したいと持ちかけた。

OrrinはほとんどがQuixeyの社員から構成されたチームをまとめ、Sigmaの最初のバージョンとなるシステムの開発に取り掛かった。そして友人や家族から集めた少額の資金を使いつつ、彼らは2016年8月にリミテッドアルファ版をローンチした。それからすぐに、スカイダイビングのインストラクターやドロップゾーンの運営者がSigmaに興味を示しはじめた。

スカイダイバーやスキューバダイバー、そしてそれらのスポーツを管理している団体は、ダイビングの記録や免許確認に関して同じような問題を抱えていた。どちらのスポーツにおいても、間違いは生死に関わる。例えばカリフォルニア州ローダイ(Lodi)では、昨年スカイダイビング中の事故で死亡者が出た。そして調査の結果、インストラクターがUnited States Parachute Association(USPA)から認証を受けていなかったということがわかったのだ。

このような背景を考えると、免許のデジタル化を求める声が挙がっているのにも納得がいく。そしてUSPAは、Sigmaを使ったメリット(オンライン上のバッジのようなもの)と免許の発行を初めて採用した大手アウトドアスポーツ団体になった。スカイダイバーは、これまで紙のライセンスを提示していたドロップゾーンで、今後はデジタルのメリットと免許を見せるだけでよくなる。

参加者の活動記録や免許が未だに紙のシステムで管理されているアウトドアスポーツの団体というのは、Sigmaの最初のターゲットとしてはうってつけだ。なお、どんな団体でもSigmaのシステムに参加できるが、Sigmaが公式であると確認した団体しかメリットの発行はできない。

あるアウトドアスポーツをやっている人は、ほかのスポーツにも興味を持っていることが多いということが、Sigmaが最初にアウトドアスポーツに目をつけた理由だ。現在Sigmaは他の分野へ進出する前に、アウドドアスポーツでネットワーク効果を築きあげようとしている。

他にSigmaのサービスが役立つ業界として、例えば全体を統括する団体のいない免許が必要な仕事を考えてみてほしい。むしろ履歴書に載っているほとんどの役位や職位が自己申告で、粉飾されているものも多い。

今年から正式に共同ファウンダー兼社長としてSigmaに参加したKaganによれば、同社のゴールは現在自己申告制のものも含め、現在オンライン化できていない全ての実績や資格のメリットをつくることだ。

短期的に見たときの勝算のある確かな市場戦略と長期的に見たときの大胆な目標もあって、Andreessen HorowitsのJeff Jordanは、Sigmaの435万ドルのシードラウンドでリードインベスターを務めることを決めた。

Jordanはそれ以前にもQuixeyに在籍していたKaganと何度か顔を合わせたことがあり彼を評価していたが、結局Quixeyへ投資することはなかった。そんなJordanも、Sigmaのアイディアにはすぐに共感した。

実はJordan自身もダイバーで、PADIのアナログな免許制度の非効率さをよく知っていたのだ。そして彼はSigmaのサービスが、ダイビングやスカイダイビング以外の分野にも応用できると感じた。

「競合企業はあまり見当たらず、特にアウトドアスポーツのような分野であればなおさらです」とJordanは話す。「しかし(Sigmaが)他の分野にも対応できるのを願っています」

Andreessen Horowitz以外にも、SigmaのシードラウンドにはWI HarperやSusa Ventures、Azure Capital、Greylock Partners、Sherpa Capitalのほか、Adam D’Angelo、Adam Foroughi、Auren Hoffman、Paul Ferris、Holly Liu、Jay Eumなどのエンジェル投資家が参加していた。

現在Sigmaは11人強で構成されているが、サービスのスケールにあたって今後人員を増やしていく予定だ。さらにアーリーアダプターのUSPA以外にも、アウトドアスポーツの団体へのアプローチを考えている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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TechCrunch Japan

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