全米で100万人の教師が使うマイアミのデジタル学習プラットフォームNearpodをRenaissanceが買収

マイアミに本拠地を置くEdTechスタートアップのNearpodが、教育技術を開発するグループ、Renaissance Holding Corp.に買収されることになった。取引はまだ成立していないが、Renaissance社の最高製品責任者であるTodd Brekhus(トッド・ブレクサス)氏は、米国時間2月19日午後のインタビューで、「両当事者によって署名された最終的な契約に合意しました」と述べている。買収のニュースは2月18日にYahoo!ファイナンス(米国)に最初にリークされ、TechCrunchに対して同社内部の情報源が2月19日朝に確認した。ブレクサス氏によると、Renaissanceは取引が終了した後も買収価格を公表する予定はないという。

Nearpodは、幼稚園から高校3年生まで(K-12)の教師が教室でビデオ、クイズ、質問、その他の活動で満たされたインタラクティブなスライドを作成するために使用するEdTechプラットフォームを提供している。生徒たちはどのようなデバイスを使ってもリアルタイムで授業に参加することができ、生徒が自分のペースで進める学習モードもある。パンデミックに対応して、Nearpodは現在、リモート学習も提供している。

この1年は、Nearpodにとって忙しいものだった。2012年に3人のアルゼンチン人起業家によって設立された同社は現在、パンデミックが本格化してきた2020年初頭にCEOとして就任したPep Carrera(ペップ・カレラ)氏が率いる。Crunchbaseによると、同社はこれまで3000万ドル(約31億6000万円)以上のベンチャーキャピタルを調達しており、直近では2017年に同社がシリーズBを調達した際にTechCrunchが報じた

Renaissanceはしばらくの間Nearpodに注目していたと、以前EdTech企業の創業者でもあったブレクサス氏は語った。「我々(Renaissance)は、教育現場における教師エンゲージメントやレッスン配信とつながりを深めたいと考えていました。Nearpodは非常に優れた方法でそれを実現しています」。

カレラ氏がRenaissanceのCEOであるChris Bauleke(クリス・バウレケ)氏に直属することになる点を除いては、カレラ氏とチーム全体はこれまで通り業務を続けるという。「我々のミッションを継続するとともに、Renaissanceのミッションとの融合を目指していきます」と同氏は語った。

マイアミで育ち、2020年にミシガン州からNearpodを率いるために戻ってきたカレラ氏は、激動の1年を過ごした。以前のインタビューで同氏は、「仕事に就いた最初の日に、(ダニアビーチ近くの)オフィスに車で向かう途中、運転しながら電話で経営陣と話して、パンデミックのためにオフィスを閉鎖する必要があると判断しました。それが3月のことでした」と語っていた。Nearpodは現在、約290人の従業員を雇用しており、そのほとんどがダニアビーチの本社で勤務している。

カレラ氏は、同社をイグジットに導くために彼が起用されたのかどうかについてははっきりと確認しなかったが、創業者たちは、教師・生徒たちのようなユーザー層に向けてより良いサービスを提供するために、いくつかの成長オプションを検討していると述べた。

パンデミックはリモートワークをめぐり同社に多くの疑問を投げかけてきたが、カレラ氏のリーダーシップのも下、Nearpodは2020年に爆発的な成長を遂げた。当初Nearpodは主に教室での使用を想定して設計されていたが、同社のチームはそれをリモート学習プラットフォームに変換することができ、K-12遠隔教育の先駆けとなった。

Nearpodは50州すべてで使用されており、1800以上の学区で使用されている。2020年だけでも100万人以上の教師が利用し、1日に200万~300万人の生徒がオンラインで学習するなど、同社は約50%の成長を遂げている。2020年12月のインタビューで、カレラ氏は、現在発生している資金はすべて会社の成長を促進するために投入されており、それはこれまで有機的だったと語った。Nearpodはマーケティングに広告費をほとんど使っていない。本当のマーケティングは口コミによるものだと同氏はいう。

教師はNearpodを使って、授業中に生徒の携帯端末にデジタルカリキュラムを配信する(画像クレジット:Nearpod)

カレラ氏はNearpodに参加する前は、ProQuest Booksの社長として、大学院生、研究者、図書館員のために書籍の取得、管理、配信を効率的かつインパクトあるものにする革新的なソフトウェアを提供するチームを率いていた。また、ProQuest以前にも、社長兼COOとしてIngram Conte Groupのデジタル学習部門であるVitalSource Technologiesを6年間で10倍に成長させ、世界で年間2000万人以上の学習者にサービスを提供した。

VCがこの分野に多額の資金を投じたことで、EdTechのM&A活動は加速している。筆者の同僚であるNatasha Mascarenhasが最近言及したように、EdTechのM&Aはこの分野の大量統合につながっている。今回の買収でNearpodは、ここ数カ月で撤退したSymbolabやWoot Mathのような他の多くのEdTech企業の仲間入りをすることになる。

【更新(米国時間2月19日)】Renaissanceの最高製品責任者であるトッド・ブレクサス氏へのインタビューと、同社についての追加情報を更新した。

カテゴリー:EdTech
タグ:Nearpod買収マイアミ

画像クレジット:Danny Lehman / Getty Images

原文へ

(文:Marcella McCarthy、翻訳:TechCrunch Japan)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。