公共料金を分割などで払えるようにするPromiseが約21億円調達

2020年は何十億人という人にとって経済的に試練の年だった。特に試練となったのが公共料金、税金、他の行政関係費用の支払いという基本的なものだ。公的な支払いのためのシステムは簡単に、あるいはフレキシブルに支払えるようにはできていない。Promise(プロミス)はそれらの決済システムを統合し、全額を一度に支払えない人向けに手数料と債務の条件を寛容なものにすることでそうした状況を変えることを目指している。その実現に向け同社は2000万ドル(約21億円)を調達した。

ほぼすべての金が家賃と食費に充てられる場合、水道代や電気代のようなイレギュラーな請求を支払う金をかき集めるのは難しい。そうした公共サービスは携帯電話の契約より短い猶予期間でサービスを止めるということはほぼ考えられないため、それらの支払いを先送りするのは無難だ。しかしそれは請求書が数枚溜まるまでのことで、ある日、未払い料金が何百ドル(数万円)にもなっているのに気づく。そして、未払い料金を分割払いする方法はなく、超過料金を払う。チケット代金やその他の料金、罰金についても同様だ。

PromiseのCEOで共同創業者のPhaedra Ellis-Lamkins(ファエドラ・エリス-ラムキンス)氏はこれが現在のシステムが陥っている状況だ、と説明した。支払い計画がオンライン精算時にワンクリックで提供されるテレビや家具の購入と異なり、地方自治体の支払いサイトあるいは公共料金支払いにはそうしたオプションはほぼない。

「人々が支払う意思のある料金の支払いに苦慮していること、もしそうした人にリマインダーや利用できる支払いオプション、フレキシビリティを提供すれば人々はかなりの率で支払うことがわかりました。システムが問題なのです。システムは銀行口座にいつも余っている金があるわけではない人のためにデザインされていません」と同氏はTechCrunchに語った。

「たとえばもし誰かが15日の午後10時に1回目の支払いをすると、同じ額を翌月15日の午後10時に支払えるだろうとシステムは考えます。こうしたシステムはほとんどの人が最低限必要なものをまかなうのに苦労していることを理解しません。週払いにするか、複数回の支払いに分割される必要があります」。

支払いプランを提供しているものでも多くの欠陥があり、これは少なくとも部分的にはフレキシビリティの欠如のためだ、とエリス-ラムキンス氏は話した。不払いは全プランのキャンセルにつながりかねない。そもそも加入すること自体が難しいことすらあるかもしれない。

「一部の都市は支払いプランを提供していますが、サインアップするのに実際に足を運んで複数ページの書式に記入し、収入の証明を提示して制限基準を満たさなければなりません。税申告や他の書類作成とは対照的にプロセスの簡素化に自己証明を使うために我々はパートナーと協業することができました。現在当社の返済率は90%超です」。

Promiseは一種の仲介人のように機能する。エージェンシーや公共サービスを統合し、滞納している人に異なる支払いシステムの可能性を気づかせる。オンラインショップで購入するときに、分割払いを含むさまざまな支払いオプションを目にするのと似ている。

画像クレジット:Promise

ユーザーは支払いプラン(携帯電話は多くの人が使用するインターネットの形態であることからサービスはモバイルフレンドリーだ)に加入し、Promiseがリマインダーや領収書、処理、エージェンシーへの入金などを行う。同社はコストを前払いで徴収せず、独自のやり方で回収する。要は、Promiseは政府機関や他の公共料金を集める組織を専門とする追加のフレキシブルな支払いメカニズムだ。

Promiseはサブスク料金(たとえばSaaS)と取引手数料で稼いでいて、どちらも顧客にとって理にかなったものだ。想像がつくかもしれないが、公共サービスにとって回収すべき500ドル(約5万2700円)をまったく回収できないリスクをとるより、あるいはもっと手間のかかる手法や高いコストがかかる滞納金回収手法をとるより、500ドルの回収を確実なものにするために数ドル(数百円)の手数料を払う方がよりリーズナブルだ。

あなたがこれは大きな問題ではない(その結果大きなマーケットではない)と考えるといけないので、エリス-ラムキンス氏はカリフォルニア州の160万人が10億ドル(約1056億円)の水道料金を滞納していて、8世帯のうち1世帯が平均500ドル(約5万3000円)を延滞している、という同州水委員会の最近の調査結果を示した。

パンデミックがほぼ全世帯におよぼした大きな経済的影響を考えると、こうした数字は通常より悪いものだろう。しかし他の状況での支払いプランのように、それぞれ収入の異なる世帯がそうしたシステムのメリットを自分の都合に合わせて利用できる。鈍いデザインの公共料金支払いサイトを利用しなければならなかった多くの人が代替手段を歓迎するだろう。

今回のラウンドにより、Promiseの累計調達額は3000万ドル(約32億円)を超えた。うち1000万ドル(約11億円)は2018年にY Combinatorを卒業した直後に調達している。最新の出資は既存投資家のKapor Capital、XYZ、Bronze、First Round、YC、Villageなどによるものだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Promise資金調達

画像クレジット:SEAN GLADWELL / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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