再利用化を進めるRocket Labは次のElectron打ち上げでも第1段回収を実施

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は次の打ち上げ準備を行っている。今のところ、ニュージーランドの施設から2021年5月に打ち上げられる予定だ。このフライトのペイロードは、BlackSky(ブラックスカイ)の地上観測コンステレーションに追加される2基の衛星だが、Rocket Labにはもう1つ、Electron(エレクトロン)ロケットの再利用化に向けた重要な目標もある。つまり、宇宙から帰還したブースター(第1段)の回収だ。

Rocket Labにとって、第1段の回収はこれが初めてではない。2020年11月、Return to Sender(送り主に戻す)とそのものズバリの名が付けられたミッションの際、同社は第1段を海から回収している。Run Out of Toes(つま先が足りなくなる)と名づけられた今回のフライトの目標は前回とほぼ同じながら、Electronには部分的な改良と、同社が多くのデータを収集しやすくする改造が施されている。さらに、回収後の完全な再利用に向けて進歩もしている。

「私たちは、回収した第1段の状態に大変に満足しています。どの耐熱システムにも、基本的に変更を加える必要はありませんでした」とRocket LabのCEOにして創設者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏はインタビューに応えて話した。「私たちの第1段の再突入方法は、エンジンを下にして、大きな衝撃波を前方に逃がすというやり方です。次のフライトは次なる改良版であり、負荷の大きさが判明したことから、熱シールドを強化して負荷に耐えられるようにしています」。

最初のフライトでは、大気圏再突入の際にElectronの第1段にかかる実際の負荷に関する貴重なデータを大量に収集できた。そうした情報は、地上の技術者たちが専門知識から推測はできても、現実にやってみなければ本当に知ることはできないものだ。11月のフライトでロケットに装着したセンサーからのデータによって、Electronは、熱シールドの「性能と強度の大幅な向上」のためののデザイン変更が可能になったとベック氏はいう。

2回目のフライトでは、この改良策の効果を見極め、さらに多くのデータを回収して、3回目にして最後の回収テストに活すことにしている。これは、Electronの第1段が大気圏に突入する際の速度をさらに落とせるよう、再突入手順の調整に重点が置かれる。Rocket Labが回収計画の最終目標としている、パラシュートで降下速度を下げてヘリコプターで空中捕捉する方式の実現性を高めるためのものだ。

「その後に、空中での速度をさらに下げて、第1段の熱を取ることを目指して、もう一回、設計の見直しを行います。それにより、回収ヘリコプターのような要素を導入してまで、第1段をわざわざ取りに行ってもう一度飛ばすことに本当に価値があると感じられるレベルに、私たちは到達できます」とベック氏はいう。

その3回目にして最後の着水テストは、物事が順調に進めば、2021年後半に実施される。この3回の開発テストで回収した第1段を実際に再び打ち上げる予定はないが、最初に回収した第1段の部品の一部が、今回のテストで飛ばされる第1段に再利用されているとベック氏は教えてくれた。3回目のテストでは、さらに多くの部品を回収して再利用するという。

ベック氏によれば、再突入の際に何が起きたか、どの部分がいちばん損傷を受けているかを技術者たちが学ぶには、Rocket Labの工場に持ち帰った第1段を細かく切り刻むのが一番だと話す。

「第1段を工場に持ち帰ること以上に、本当にそれを理解する方法はありません」と彼はいう。「必要な道具はすべて揃っています。しかし、第1段をここへ運び込んで真っ先にするのは、切り刻むことでした。熱の影響を受けた部分、空気の流れから隠れていた部分をすべて切り取り、材料の特性を調べる張力試験を行いました」。

これらすべての作業が、回収したElectronの第1段を再び飛ばすという最終目標への推進力になっている。これが実現すれば大変な偉業となる。なぜなら、Rocket Labは打ち上げ回数を増やせるからだが、それだけではない。そもそも再利用を考慮せずに設計されたロケットだったという点が大きい。私は、Electronの回収した第1段の最初の再飛行は商用ミッションになるのか、または顧客のペイロードを積まないテスト飛行になるのかをベック氏に尋ねてみた。

「商用ミッションになることは考えられます。そのわけは、単に私たちは、心底自信を持てないものを打ち上げ台に載せたりはしないからです」と彼は答えた。「最初の再利用ロケットは、かなりの量の修繕が加えられると思います。他に再飛行を実際に行っている唯一の企業(SpaceX)を見てください。そこには長い長い年月におよぶ研究と知識があります。ロケットを回収して、大丈夫そうだから発射台に載せようなんて簡単にはいかないのです。自信と確実性を積み上げるには、何度も何度もやり直すプロセスを経る必要があります」。

Electronの再利用化は、このロケットにとって、それ自体に価値のあることだが、この機能を開発する過程は、Rocket Labの大積載量を誇る新型ロケットNeutron(ニュートロン)の建造に、かけがえのないものを与えているとベック氏は話す。Neutronは、推進力を使って離陸と着陸が行えるよう設計されている。また、最初から高い利便性がデザインに織り込まれている。

「Electronは、世界で最も建造しやすいロケットとして設計されました。Neutronは、もっとも再利用しやすいロケットとして設計されています」とベック氏。「これらはパラダイムが大きく異なるものですが、尋常でないことに、私たちはその両方の体験を有しています。Neutronでは、革新的技術は再利用性に集中しています。間もなく、おもしろい情報を少しだけお伝えしますが、このロケットの構造をほんの少しだけ見れば、私たちが作っているロケットが、どの程度まで再利用可能なのかが明白になるでしょう」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabロケットElectron

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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